2002.7.28JT杯名古屋市民会館
相矢倉35歩早掛け
羽生善治VS森下卓
彼岸の調教師
2002.7.31マシュダ談話



「これが三日前の7月28日に行なわれたJT杯羽生森下戦の棋譜です。解説の永世棋聖が興行師に撤していますのでビシバシ言ってやってください」
「ワシは米長の肩もちたい。暑いことだし」
「エアコン直しますから」
「気が進まんな。そんでこれに勝つと?」
「準決勝進出で9月29日に熊本で対戦です」
「こりゃどっちも勝ちたくない一戦じゃね」
「二人とも熊本に行きたくないと?」
「時期が悪い。特に森下はもっと大きいの狙っておるし」
「この二人で竜王戦やっているかも?」
「熊本は遠い。火山も怖い。家を空けるともっと怖い」
「では棋譜です。矢倉になりました」
「なんでハブは23手目いきなり35歩やるかねー」
「いけませんか?」
「森下に熊本行ってヨと頼んでるのがミエミエ」
「現代矢倉の総本山に異端者の殴り込みでしょうか」
「こりゃ木村のヘボ矢倉見て、教えたくなったんのとちゃう? 先手で35歩突きたきゃこうやるんだゾっと」
「おかげで森下さんにボコボコにされちゃいましたけど」
「そしてこうなるんだゾっと二人で講習会やっとるようなモン」
「羽生さんは飛車先不突き矢倉ですから、家元に追われた角は26に行けましたが」
「よーやるよ」
「森下さんの容赦ない24歩になんと37桂で羽生さんも突っ張り返しました」
「たまらんな」
「おかげで先手の桂銀角がすべて標的となって結局44手目で羽生さんの桂損です」
「森下はお手本」
「やはり地獄の番人でしたか。ここまで徹底的にやられると羽生さんも反省を? 」
「反省しとるのは森下の方じゃろ。ここまでノシては負けようがない」
「そこで52手目問題の局面です。ここで森下さんは85歩と飛車先を突きましたが?」
「ここで38歩と羽生の飛車先叩いとれば熊本行きじゃからね」
「38歩には流石に同飛とはとれませんか」
「角の下に49銀打たれて飛車金取りでは公開対局場が冷凍室になる」
「38歩変化以下-69飛-47桂成-同金-同銀成でまた角あたりです」
「それでも冷凍室か」
「この変化では羽生さんの桂損が銀損となり、しかも手番まで森下さん」
「わらしべ長者」
「なんでしたっけ?」
「深浦の講座ちゃんとみとかんとね」
「そうなっては困るので森下さんは85歩だったんですね。うまく緩手を出したと?」
「飛車先の歩なら誰も怪しまん」
「そこで羽生さんはすかさず66角と飛び出しました。森下さんなんと33歩と受けて香取りの角成を防御。羽生さんたまりかねてここで88玉の時には指さなかった36銀をようやく打ってくれましたが」
「その変化はえーわ。33歩は二度めの緩手」
「あの33歩はどうしても熊本行きたくないという強い意思の表れと?」
「ここまで拒否されたんでは羽生も桂先に36銀打つっきゃない」
「森下さん徹底的に22歩も受けます。そこで羽生さんも匙なげて96歩?」
「森下に94歩付き合わせて93桂からの玉頭攻めと44角出の玉筋狙いで攻めろと催促。その代わりにこっちもやるからという合図」
「次に米長永世棋聖が羽生マジックと絶賛した52歩がでましたが」
「森下そりゃ喜んで取る」
「どーぞ羽生竜王は熊本行ってくださいと?」
「銀得の変化まで見せつけたんで、あとはえーの。その前に何度も森下チャンス見送っとるからね。こーゆーマジックっぽい変化がでると観衆が盛り上がる」
「さすが地獄の番人でしたか」
「そーね。一糸乱れぬ序盤戦術にこの大ボケ。誰も憎めんはず」
「その後98手目でなんと34角で要の金を死守しましたが。42銀ではいけないんですか?」
「それやると羽生も怒って相入玉になる。公開対局でそこまでやらん」
「143手までやりましたが?」
「棋譜は早く寄せて下さいで終始。漫談の方は知らんが」
「第一人者はつらいですね」
「なんせ谷川が三浦に負けたんで羽生が残ってくれんと」
「JTまでやーめたって言うかも? タイトルどうしましょう」
「森下の序盤戦術に敬意を表して適当に。終盤に関しては森下は前局で新名人の森内相手に玉の顔面受けで際どい攻めあい制しとるからね。今回の終盤は誰が見ても本気とは思わん」
「では彼岸の調教師で」