2005.01.14分析 マシュダ一家
1958.06.16第17期名人戦第五局大山VS升田 矢倉

日時:1958.06.16
棋戦:第17期名人戦第五局
戦形:矢倉
先手:大山康晴王将
後手:升田幸三名人
▲7六歩 ▽8四歩 ▲7八銀 ▽3四歩 ▲7七銀 ▽4二銀
▲2六歩 ▽6二銀 ▲4八銀 ▽6四歩 ▲2五歩 ▽3三銀
▲4六歩 ▽6三銀 ▲4七銀 ▽3二金 ▲7八金 ▽7四歩
▲3六歩 ▽4一玉 ▲6九玉 ▽5二金 ▲5八金 ▽6五歩
▲7九角 ▽5四歩 ▲6八角 ▽7二飛 ▲5九角 ▽7五歩
▲同 歩 ▽同 飛 ▲7六歩 ▽7二飛 ▲3七角 ▽3一角
▲6六歩 ▽同 歩 ▲5六銀 ▽6二飛 ▲6六銀 ▽7四銀
▲6七歩 ▽7二飛 ▲4五歩 ▽6四歩 ▲7七銀 ▽5三角
▲6六歩 ▽3一玉 ▲6七金右 ▽2二玉 ▲7九玉 ▽9四歩
▲9六歩 ▽9三香 ▲4六角 ▽6二飛 ▲8八玉 ▽4二金右
▲3七桂 ▽8五歩 ▲2九飛 ▽6三飛 ▲6五歩 ▽7三桂
▲6四歩 ▽同 角 ▲同 角 ▽同 飛 ▲8二角 ▽8四角
▲7五歩 ▽同 銀 ▲7六歩 ▽6六歩 ▲6八金引 ▽5五歩
▲同 銀 ▽6五飛 ▲2四歩 ▽同 歩 ▲5六歩 ▽5四歩
▲同 銀 ▽6四飛 ▲5五歩 ▽5三歩 ▲7五歩 ▽5四歩
▲6七歩 ▽同歩成 ▲同金直 ▽8六歩 ▲6六歩 ▽6五歩
▲8六歩 ▽6六歩 ▲同 銀 ▽6五歩 ▲7七銀 ▽6六銀
▲7六金 ▽7四歩 ▲6八銀 ▽7五銀 ▲7七金引 ▽5五歩
▲2五歩 ▽同 歩 ▲2三歩 ▽同 金 ▲7一角成 ▽8七歩
▲同金上 ▽8五歩 ▲2五桂 ▽2四銀 ▲5三銀 ▽2八歩
▲6四銀不成▽2九歩成 ▲8二飛 ▽3二金 ▲5三馬 ▽2五銀
▲7五銀 ▽同 角 ▲3一銀 ▽3三玉 ▲7五馬 ▽同 歩
▲5一角 ▽4二桂 ▲同飛成 ▽2四玉 ▲3二龍 ▽3三角
▲2二銀成 ▽同 金 ▲同 龍 ▽2三歩 ▲2七桂
まで143手で先手の勝ち

3=78銀。68銀でも77銀とするなら同じと思っている大山。これは棋理を求める指し方ではない。縁台将棋の合理主義と同じ。
4=34歩。4手めにして完全駒アタリ奇数番1。
5=77銀。66歩の歩間4は取らない。
6=42銀。逆行歩間3。本シリーズの顔にするにしてはマンネリ。
7=26歩。ところが現在の棋士が全く指さなくなった42銀にしてもこの26歩にしても歩間理論のみで抽出すると26歩に優位性が残っている。本局初の歩間4と見る。
8=62銀。逆行歩間4。好手。これで74歩からの先攻が可能。先手の優位性がすぐに入れ換る。中盤以後に連盟棋士は「1手指すごとに指した方がよく見える」と言う。木村時代から何度も同じことを繰り返し述べて1行のスペースを半世紀に渡って無為に使ってきた。観戦記はますますヒドクなっている。狭い場所に自我を垂れ流してそれが知と思っている学者までいる。観戦記は公衆便所並に臭くなった。
9=48銀。なぜここでまた先手に優位性が戻るのか誰も説明してこなかった。歩間理論では先手が逆行歩間4に戻すためと説明。
10=64歩。すでに当家では二番煎じとしか見ない。従って歩間5で後手不利となるナンバーと今日は躊躇なく断定できる。これは7番勝負の性格から来る。戦略が番勝負で同一ではテーマパークと同じ。ディズニーランドに毎週行く者は有閑マダムか首都圏型田舎者。浦安市民には成人式に一度しか行かない者もいる。東京に居ると東京タワーに行かない。
ここでの最善は歩間4維持。32金が該当。攻めるなら4-1の逆行歩間3。最強は85歩だが硬すぎる。74歩は55角からの2手角を見せることになるが次に先手に56歩とされると54歩で対抗するしかない。すると先手に先攻権利が発生。最短は66銀。85歩が突かれていない為に77角が間に合い55の争点を先手有利に操作できる。後手にとって悩ましいのは25歩に32金とするか33銀とするかの決断を早い段階で強いられること。
11=25歩。大山2回目の逆行歩間4。歩間理論の範疇では中庸維持。他の逆行歩間4は66歩と36歩しかない。66歩は63銀から後手に65の争点を制圧されて負け。36歩はいきなり55角の完全駒アタリ奇数番1や44角から35の争点を後手に与えてしまう。ところがここで先手が歩間理論の能動性を有効利用しようとして歩間6を取りに行くと56歩か端歩しかない。端歩は余りに茫洋として現在のレベルでも意味不明と同義語に見えるかもしれない。ここで16歩は有り得る。14歩なら棒銀。受けなければ突き越す権利を見せて後手の先攻を誘って受け潰し。ところがひとめ緩手なので誰も指したことはない。藤井システムの16歩も最初はそうであった。あれはアナシス対策という明解な意図が最初にあったが、矢倉で11手目に16歩は連盟将棋にはない。それが先入観。すでに矢倉戦と決めつけているからそう見える。ところが10手目の局面はまだ矢倉戦とは言えない。明かなことは大山は58金の逆行歩間5だけは取らなかったということ。不利なナンバーと体得している。従ってこの25歩は歩間理論においては消去法。そこで25歩を駒アタリ奇数番原理で見る。5-1からの1stアタックを見せているため。
12=33銀。大山が早めに25歩を決めた為に後手は32金とできない。逆に言えば後手の葛藤が先手の硬直手で緩和している。駒アタリ奇数番1を阻止するこの33銀は歩間理論の範疇では逆行歩間4の為に後手有利だが、64歩という急戦指向の主要戦略から見れば角筋が遮断されたために相停滞手となる。
13=46歩。歩間理論では悪手。従って当時の大山は歩間原理を知らなかったと当家は断言できる。逆行歩間4を取り続けたのは単なる経験則であった。
巷ではこの46歩が本名人戦の顔と喧伝するだけ。大山はそれに迎合したとしか当家は見ない。
14=63銀。明解な升田演出。これは胸を貸す態度。歩間理論における最善は逆行歩間4。85歩と74歩が該当。85歩は牽制。74歩は72飛から75歩の駒アタリ奇数番1示唆。
15=47銀。ブランコ後進による逆行歩間5。現在の段階で逆行という表現は誤解を招くかもしれない。5から4になるなら逆行で良いが、同じ5でなぜ逆行なのかと。これは将棋の時間軸が先後で交互に入れ換るため。ところが時間認識と空間認識が逆行という用語で重複している為に混乱しやすい。そこで混乱しそうな時には維持という用語を暫定的に使用する時があったがどうもしっくりこない。歩間5維持という表現では歩間奇数番の優位性を認めているかのような印象を与えてしまう。逆行歩間3ならば最近の久保や羽生が試みているように後手に可能性が発生する。升田の歩間5には前局までに驚嘆したがそれは明解な攻め筋が見えたため。今回は当家にも不明。
16=32金。思わず唸る。升田にもこう言う時があるのかと。
悪友に染まった友は悪友をさらに悪友とする。するとどちらが先にワルだったか見分けがつかなくなる。
17=78金。このブランコ後進によってアクの先祖となる46歩を指した大山は批判を避けることができる。ブランコ後進で悪の花園歩間5に水を撒いたのは自分だがタネは後手が撒いたはずとアピールできるため。46銀も78金も明解なブランコ後進運動だからこそカモフラージュが通用。
18=74歩!!! ついに升田の逆行歩間4。
19=36歩。この36歩によって悪の花園からの3回目のブランコ後進が逆行歩間3による3rd作成手。3-3の構造発生。
20=41玉。平行3-3その1。
21=69玉。悪の花園ブランコ後進4による平行3-3その2。
22=52金。ブランコ前進による平行3-3その3。
23=58金。ブランコ後進による平行3-3その4。
24=65歩!!! グランサタン。ついに悪の花園で悪魔が乗り移った。
平穏無事だった空中楼閣の構造を破壊したのはやはり升田。平行3-3から怒涛の2-4の偶数番地獄へ一挙に叩き込む。平行3-3その5ならば73桂。
25=79角。鏡が破壊されて飛び出た悪魔のシッポ。今度は2-4偶数番地獄を写そうとしている。
26=54歩!!! 眩暈がする。構造が続けざまに進化するまばゆいばかりの変奏。3-4の構造でお得意のブランコ後進で56歩を突けと猛り狂う空間開放手。
27=68角!!! 大爆笑。今度は大山が大好きなブランコ後進はない。56歩と突けば64銀から55歩の駒アタリ奇数番1を後手のみに奪われるため。升田の5thアタックは勝ちと同義語。従ってこの手を森下シス並の68角に与える評価値と混同するのは似非大山賛美者。大山の狙いは59角からの4手角による繰り換え。54歩を咎めるには角が26地点に来れば良いとひとめ丸見えなので笑うしかない。大がつくのは升田の「ブランコ後進でいつまで猿マネしてんだか」という哄笑が聞こえたため。
28=72飛。25歩へのお返し。3-4で4thアタックを誇示。
29=59角。86銀では64銀で先手陣崩壊。65歩のグランサタンにはその申し子54歩を咎めに行くしかない。
30=75歩。本局初の駒アタリ奇数番1を後手が簡単に取ってしまった。升田の序盤は天衣無縫どころか神がかり。
32=同飛。ここで64銀ならば早く終わりそうだが後手玉が悪形の為に自重。
34=72飛。74飛はアタリがキツイと見たと言うより温情と当家は読む。
35=37角。すでに72飛から展開された為に26角から71角成は見込めない。35歩阻止に44銀とされては37角-33銀の千日手にするかと笑われる。72飛を直接咎めに行く手。
36=31角。角落ちなら55歩でも升田は勝てる。ところが22地点までの玉移動ルートをなまじ角が邪魔している為に今頃指している。
「角落ちと思っとった」と笑ってもおかしくない。途中で角を落とせば74飛から64銀+73形の攻撃形を造った。
37=66歩。勝負手となる仮想4thアタック。65歩の位を維持されては手足どころかシッポも出なくなる。65歩と突かれた時点でもっと早めにやれば4thアタック。角の活用を最優先させた為にここまでズレこんだ。
38=66同歩。やけに素直。別人のよう。恐らく周囲に後手楽勝を臭わせて困った顔をされた。決めに行くなら連動手を取る所。
39=56銀。すぐに66銀は76飛で歩損確定で負け。
40=62飛。遊んでいる。
41=66銀。大山命拾い。
42=74銀。やり放題。
43=67歩。75歩では73桂のオカワリ。
44=72飛。変幻自在。大山が「サウナで厚着」なので45歩に備える。
45=45歩。それでも先手にはコレしかない。
46=64歩。91角成阻止。
47=77銀。我慢大会。
48=53角。35歩を見せつけつつ玉移動ルート確保の双頭手。
49=66歩。4thでようやく升田のグランサタン帳消しに。その代償に後手に1歩持たれているのが先手の負い目。
50=31玉。升田は温泉に浸かりに行った。
51=67金。忍耐の末にようやくここまでコギつけた。序盤で苦労をしないともっと苦労する。
52=22玉。恐らく記録係が指し継いでいる。
53=79玉。いつしか升田65歩が45手目の大山45歩に相転化。
54=94歩。玉が来たので端攻め。
55=96歩。先手からの仕掛けはないので仕方なく5th作成。
56=93香。35歩では26飛36歩35飛で34歩を打たされる。そこで35歩26飛には34銀と上がる。大山が気がつくまで待つ。
57=46角。ようやく気がついた。これで35歩阻止。
58=62飛。93香としたからには92飛だろうと立会人が怒ったかも知れない。
59=88玉。兄弟子が相変らず記録係に指させているので92飛にしろと催促。
60=42金。お前が攻めろと逆に催促。
61=37桂。ない勇気を振り絞って。本局初の先手の勝負師らしい手。
62=85歩。桂が跳ねだしたい85地点だが73桂では65歩の5thアタックで逆転される。93桂は93香とした為にない。14歩ではまた持将棋狙いかと疑われる。
63=29飛。65歩では同歩91角成64角同馬同飛46角以下千日手。そこでこの変化の時に64角で81馬の選択示唆。37角成が飛車アタリにならない為の29飛。
64=63飛。示唆が単なるカッコづけと喝破して65歩突けと催促。
65=65歩。大山も呆れて。今度は上記変化で81馬が63飛アタリ。兄弟子のプレゼントを有り難く頂く。
66=73桂。本局初の連動手に見えるが同歩や同銀は負けなので仕方ない。
67=64歩。有り難うございますと礼を述べながら。
68=同角。「このタコ頭」
69=同角。「済みません」
70=同飛。「打つ場所わかっとんね?」
71=82角。46角は63飛75歩65銀64歩以下銀交換しては47角で先手負けなので。84角は兄弟子に譲渡。
72=84角。譲られても嬉しくないが。
73=75歩。71角成は73桂が使われて即負け。
74=同銀。65銀では同銀同飛の瞬間74銀で逆転。
75=76歩。以下見たままの銀の追いかけっこ。遊びの極致。
91=67歩。67銀のブチコミ阻止。どうせ打つなら65歩としたいが同飛74銀61飛以下最後の73角成が緩手の為やはり67銀打で69歩と受けても78銀成でと金を作られて負け。
92=同歩成。他の手がないので仕方なく逆行奇数番1。
94=86歩。67飛車切りはヤリスギ。
95=66歩。86同銀は66歩、86同歩は87歩。
以下中断 初稿2005.01.14のまま