2004.08.30竜王戦挑決第1局　渡辺VS森下　相矢倉7-5-3アタック
日時：2004.08.30
棋戦：竜王戦挑戦者決定戦第1局
戦形：相矢倉
先手：渡辺明五段
後手：森下卓九段
▲７六歩 ▽８四歩 ▲６八銀 ▽３四歩 ▲６六歩 ▽６二銀
▲５六歩 ▽５四歩 ▲４八銀 ▽４二銀 ▲５八金右 ▽３二金
▲７八金 ▽４一玉 ▲６九玉 ▽７四歩 ▲６七金右 ▽５二金
▲７七銀 ▽３三銀 ▲７九角 ▽３一角 ▲３六歩 ▽４四歩
▲３七銀 ▽６四角 ▲６八角 ▽４三金右 ▲７九玉 ▽３一玉
▲８八玉 ▽２二玉 ▲４六銀 ▽５三銀 ▲３七桂 ▽９四歩
▲１六歩 ▽１四歩 ▲２六歩 ▽２四銀 ▲３八飛 ▽９五歩
▲６五歩 ▽７三角 ▲１八香 ▽８五歩 ▲２五桂 ▽４二銀
▲５五歩 ▽４五歩 ▲同　銀 ▽５五角 ▲４六歩 ▽８六歩
▲同　歩 ▽同　飛 ▲８七歩 ▽８二飛 ▲５七角 ▽３三桂
▲５六銀 ▽４四角 ▲４八角 ▽６二角 ▲４五歩 ▽４六歩
▲６六角 ▽７三桂 ▲１五歩 ▽同　歩 ▲３五歩 ▽同　銀
▲１三歩 ▽２四銀 ▲７五歩 ▽２六角 ▲４四歩 ▽同　金
▲３六飛 ▽３五角 ▲３三桂成 ▽同銀上 ▲２七桂 ▽５五桂
▲３五桂 ▽同　金 ▲同　飛 ▽同　歩 ▲５五銀 ▽同　歩
▲１五香 ▽９六歩 ▲同　歩 ▽９八歩 ▲同　香 ▽９七歩
▲同　香 ▽９五歩 ▲３四桂 ▽同　銀 ▲５五角 ▽３三銀
▲７三角成 ▽９二飛 ▲２六桂 ▽１八飛 ▲３四桂 ▽同　銀
▲５五角 ▽３三桂 ▲９一馬 ▽同　飛 ▲１二金 ▽同　香
▲同歩成 ▽３一玉 ▲９一角成 ▽９九銀 ▲同　玉 ▽７八飛成
▲６一飛 ▽４一桂 ▲２一と ▽４二玉 ▲４四香 ▽５三玉
▲６四馬
まで127手で先手の勝ち

65=45歩。この位確保で3ポイントリード。
68=73桂。疑問。62角の方針と不一致。
69=15歩。第二試合。5thアタック。先手優勢。
75=75歩。3rdアタック。7-5-3の流れる試合運び。
76=26角。暴れるしかない。
83=27桂。名人戦で羽生に似たような桂で大駒を殺された記憶。
87=35同飛。気持ちよい。
98=95歩。ひどい緩手。
99=34桂。狙い筋。
105=26桂。一番速い。
106=最後のチャンスというより先手の悪手期待。
109=55角打ち。当家変化も同じ。117手めまで従って同じ。
118=99銀。明解な形作り。当家は98金。79玉なら一旦42玉。いずれも後手玉は助からないが桂馬と31角の受けで先手が間違う可能性は少しある。

12金打ちからの寄せは王座戦でも有った見え透いた筋。羽生は見事に脱出できた。森下は角を取られてから淡白。終盤も生彩ない。
恐らく50手め45歩の98分で全精力を使い果たした。あれでポイント先取したが体力切れ。序盤はさすが森下。1ポイント先取してからの62角は一番気が緩むところ。73桂で疑問が強化された。

64手め25銀変化は後手負け。

▲７六歩 ▽８四歩 ▲６八銀 ▽３四歩 ▲６六歩 ▽６二銀
▲５六歩 ▽５四歩 ▲４八銀 ▽４二銀 ▲５八金右 ▽３二金
▲７八金 ▽４一玉 ▲６九玉 ▽７四歩 ▲６七金右 ▽５二金
▲７七銀 ▽３三銀 ▲７九角 ▽３一角 ▲３六歩 ▽４四歩
▲３七銀 ▽６四角 ▲６八角 ▽４三金右 ▲７九玉 ▽３一玉
▲８八玉 ▽２二玉 ▲４六銀 ▽５三銀 ▲３七桂 ▽９四歩
▲１六歩 ▽１四歩 ▲２六歩 ▽２四銀 ▲３八飛 ▽９五歩
▲６五歩 ▽７三角 ▲１八香 ▽８五歩 ▲２五桂 ▽４二銀
▲５五歩 ▽４五歩 ▲同　銀 ▽５五角 ▲４六歩 ▽８六歩
▲同　歩 ▽同　飛 ▲８七歩 ▽８二飛 ▲５七角 ▽３三桂
▲５六銀 ▽４四角 ▲４八角 ▽２五銀 ▲同　歩 ▽２六桂
▲２八飛 ▽１八桂成 ▲同　飛 ▽２五桂 ▲２六銀 ▽２四歩
▲４五歩 ▽３三角 ▲４四桂 ▽３一金 ▲６六角 ▽５三金
▲２五銀 ▽同　歩 ▲２四桂 ▽２三銀 ▲３二桂右成▽同　銀
▲同桂成 ▽同　玉 ▲３三角成 ▽同　銀 ▲７一角 ▽５二飛
▲６一銀 ▽投了
91手で先手の勝ち

手順中88手め33同玉でも45地点の位が残って後手負け。よって森下は体勢維持で先手からの45歩を先にカワス62角。康光もここに下がる。53角と下がるのは中原かもしれない。桂交換から45桂Ｙ字固めを先手に打たせて桂馬二枚欲しがるのは中原しかいない為。この変化はヒマが有ったら後で付記。

家元は強い。森下は最強の矢倉総本山。
対して渡辺明は1ポンイト先取されても容易に崩れない腰の深さ。
桂交換は先手不利。このような地点は相手に連動手だけを与えないとのみ思考するだけで十分。
86歩+94桂からの攻撃が後手にあるためにすぐに桂馬を渡しては緩手42銀が好手に逆行相転化。

次に56銀から66角の王手を防ぐには三種類。
1=60手め44歩変化は後手負け
2=60手め44歩33桂は形勢不明
3=玉の先逃げ

1=60手め44歩変化
▲７六歩 ▽８四歩 ▲６八銀 ▽３四歩 ▲６六歩 ▽６二銀
▲５六歩 ▽５四歩 ▲４八銀 ▽４二銀 ▲５八金右 ▽３二金
▲７八金 ▽４一玉 ▲６九玉 ▽７四歩 ▲６七金右 ▽５二金
▲７七銀 ▽３三銀 ▲７九角 ▽３一角 ▲３六歩 ▽４四歩
▲３七銀 ▽６四角 ▲６八角 ▽４三金右 ▲７九玉 ▽３一玉
▲８八玉 ▽２二玉 ▲４六銀 ▽５三銀 ▲３七桂 ▽９四歩
▲１六歩 ▽１四歩 ▲２六歩 ▽２四銀 ▲３八飛 ▽９五歩
▲６五歩 ▽７三角 ▲１八香 ▽８五歩 ▲２五桂 ▽４二銀
▲５五歩 ▽４五歩 ▲同　銀 ▽５五角 ▲４六歩 ▽８六歩
▲同　歩 ▽同　飛 ▲８七歩 ▽８二飛 ▲５七角 ▽４四歩
▲５六銀 ▽７三角 ▲６六角 ▽４六角 ▲４五歩 ▽５三銀
▲４四歩 ▽同　銀 ▲４五歩 ▽５五銀 ▲同　銀 ▽同　歩
▲４七銀 ▽２九銀 ▲４六銀 ▽３八銀成 ▲５五角 ▽投了
77手で先手の勝ち

2=60手め33桂は形勢不明
▲７六歩 ▽８四歩 ▲６八銀 ▽３四歩 ▲６六歩 ▽６二銀
▲５六歩 ▽５四歩 ▲４八銀 ▽４二銀 ▲５八金右 ▽３二金
▲７八金 ▽４一玉 ▲６九玉 ▽７四歩 ▲６七金右 ▽５二金
▲７七銀 ▽３三銀 ▲７九角 ▽３一角 ▲３六歩 ▽４四歩
▲３七銀 ▽６四角 ▲６八角 ▽４三金右 ▲７九玉 ▽３一玉
▲８八玉 ▽２二玉 ▲４六銀 ▽５三銀 ▲３七桂 ▽９四歩
▲１六歩 ▽１四歩 ▲２六歩 ▽２四銀 ▲３八飛 ▽９五歩
▲６五歩 ▽７三角 ▲１八香 ▽８五歩 ▲２五桂 ▽４二銀
▲５五歩 ▽４五歩 ▲同　銀 ▽５五角 ▲４六歩 ▽８六歩
▲同　歩 ▽同　飛 ▲８七歩 ▽８二飛 ▲５七角 ▽３三桂
▲同桂成 ▽同銀上 ▲５六銀 ▽４四角

よって3以外は60手めは33桂以外ない。

3=玉の先逃げは2004.03.08&09王将戦第5局矢倉反地獄門本定跡 38/Xの変奏を参照。森下はこのような手を嫌う。しかしマシュー伝説57桂終盤の構図1-4はここから生まれた。

渡辺明の自己抑制機能発動。これは攻防手。しかし角交換を即時狙う手ではない。もし角交換を狙うなら先手壊滅。

61手め66角変化
▲７六歩 ▽８四歩 ▲６八銀 ▽３四歩 ▲６六歩 ▽６二銀
▲５六歩 ▽５四歩 ▲４八銀 ▽４二銀 ▲５八金右 ▽３二金
▲７八金 ▽４一玉 ▲６九玉 ▽７四歩 ▲６七金右 ▽５二金
▲７七銀 ▽３三銀 ▲７九角 ▽３一角 ▲３六歩 ▽４四歩
▲３七銀 ▽６四角 ▲６八角 ▽４三金右 ▲７九玉 ▽３一玉
▲８八玉 ▽２二玉 ▲４六銀 ▽５三銀 ▲３七桂 ▽９四歩
▲１六歩 ▽１四歩 ▲２六歩 ▽２四銀 ▲３八飛 ▽９五歩
▲６五歩 ▽７三角 ▲１八香 ▽８五歩 ▲２五桂 ▽４二銀
▲５五歩 ▽４五歩 ▲同　銀 ▽５五角 ▲４六歩 ▽８六歩
▲同　歩 ▽同　飛 ▲８七歩 ▽８二飛 ▲５七角 ▽７三桂
▲６六角 ▽同　角 ▲同　金 ▽７五歩 ▲４四銀 ▽７六歩
▲同　金 ▽８五桂 ▲投了
68手で後手の勝ち

ところが後手の攻撃手73桂に一旦銀を下がると先手必勝となる。

61手め56銀マシュダ一家泡踊り変化
▲７六歩 ▽８四歩 ▲６八銀 ▽３四歩 ▲６六歩 ▽６二銀
▲５六歩 ▽５四歩 ▲４八銀 ▽４二銀 ▲５八金右 ▽３二金
▲７八金 ▽４一玉 ▲６九玉 ▽７四歩 ▲６七金右 ▽５二金
▲７七銀 ▽３三銀 ▲７九角 ▽３一角 ▲３六歩 ▽４四歩
▲３七銀 ▽６四角 ▲６八角 ▽４三金右 ▲７九玉 ▽３一玉
▲８八玉 ▽２二玉 ▲４六銀 ▽５三銀 ▲３七桂 ▽９四歩
▲１六歩 ▽１四歩 ▲２六歩 ▽２四銀 ▲３八飛 ▽９五歩
▲６五歩 ▽７三角 ▲１八香 ▽８五歩 ▲２五桂 ▽４二銀
▲５五歩 ▽４五歩 ▲同　銀 ▽５五角 ▲４六歩 ▽８六歩
▲同　歩 ▽同　飛 ▲８七歩 ▽８二飛 ▲５七角 ▽７三桂
▲５六銀 ▽４四角 ▲４五歩 ▽５三角 ▲６六角 ▽投了
65手で先手の勝ち

従って次に後手は73桂が指せない。後手の反撃を封じ込める手の為に抑制手として機能。

50手め45歩には98分考えた森下。渡辺明は角交換から86銀か86歩か迷うことを嫌って53手め46歩。森下1ポンイト先取。この変化では54手め86歩を同歩と取るしかない。後手が強要。ただし先手は迷わずに済む。
以下58手め82飛まで飛車先歩を交換し歩損も回避。これで後手の負い目はなくなった。59手めで先手に手番が戻る為に後手のパーテルポジションと考える。先手は依然初期値の上位体勢維持によりスリーポイントで優勢を導けるはず。

森下は大長考で最強偶数番原理手順を選択。強い。
これは同銀と取るしかないが続く52手め55角を畏れない強者。
53手めには先手から46角で即最終盤を目指す手順がある。

53手めマシュダ一家46角-86銀変化
▲７六歩 ▽８四歩 ▲６八銀 ▽３四歩 ▲６六歩 ▽６二銀
▲５六歩 ▽５四歩 ▲４八銀 ▽４二銀 ▲５八金右 ▽３二金
▲７八金 ▽４一玉 ▲６九玉 ▽７四歩 ▲６七金右 ▽５二金
▲７七銀 ▽３三銀 ▲７九角 ▽３一角 ▲３六歩 ▽４四歩
▲３七銀 ▽６四角 ▲６八角 ▽４三金右 ▲７九玉 ▽３一玉
▲８八玉 ▽２二玉 ▲４六銀 ▽５三銀 ▲３七桂 ▽９四歩
▲１六歩 ▽１四歩 ▲２六歩 ▽２四銀 ▲３八飛 ▽９五歩
▲６五歩 ▽７三角 ▲１八香 ▽８五歩 ▲２五桂 ▽４二銀
▲５五歩 ▽４五歩 ▲同　銀 ▽５五角 ▲４六角 ▽８六歩
▲５五角 ▽同　歩 ▲８六銀 ▽４九角 ▲３七飛 ▽７三桂
▲４四銀 ▽７五歩 ▲３五歩 ▽７六歩 ▲４三銀成 ▽同　金
▲３四歩 ▽６五桂 ▲３三歩成 ▽同　桂 ▲３四歩 ▽４五桂
▲３三金 ▽１二玉 ▲４三金 ▽同　銀 ▲３三歩成 ▽３七桂成
▲３一角 ▽７七銀 ▲９八玉 ▽８八金 ▲同　金 ▽同銀成
▲同　玉 ▽７七金 ▲同　桂 ▽同歩成 ▲同　金 ▽同桂成
▲同　銀 ▽８九飛 ▲７八玉 ▽８七飛行成▲６八玉 ▽６七金
▲投了
96手で後手の勝ち

解題
1=55手め86同歩は先手不利。よって55角で王手。
2=57手め86銀か86歩かが迷う地点。上記は86銀選択変化。
3=59手め37飛。27角成を阻止。
4=44銀。同金なら71角。
5=35歩。駒アタリ奇数番3と解釈。偶数番原理ではこれが4。
80手めで後手が見切れば先手玉は即詰みで偶数番原理の勝利。後手がひるんで受けると奇数番原理で先手勝利。

ここは形勢を左右する地点。42銀の方針を貫くなら1歩損で相手のミスを期待するカワシ手順は以下。
▲７六歩 ▽８四歩 ▲６八銀 ▽３四歩 ▲６六歩 ▽６二銀
▲５六歩 ▽５四歩 ▲４八銀 ▽４二銀 ▲５八金右 ▽３二金
▲７八金 ▽４一玉 ▲６九玉 ▽７四歩 ▲６七金右 ▽５二金
▲７七銀 ▽３三銀 ▲７九角 ▽３一角 ▲３六歩 ▽４四歩
▲３七銀 ▽６四角 ▲６八角 ▽４三金右 ▲７九玉 ▽３一玉
▲８八玉 ▽２二玉 ▲４六銀 ▽５三銀 ▲３七桂 ▽９四歩
▲１六歩 ▽１四歩 ▲２六歩 ▽２四銀 ▲３八飛 ▽９五歩
▲６五歩 ▽７三角 ▲１八香 ▽８五歩 ▲２五桂 ▽４二銀
▲５五歩 ▽同　歩 ▲３五歩 ▽４五歩 ▲同　銀 ▽４四歩
▲３四銀 ▽５三金
57手め先手に手を渡して悪手を誘発し1歩手順に入手すれば33歩。
後手から33桂や13桂の成算だけは自滅。この形は46角から66桂打ちという左右挟撃があるため。

森下たちが作ってきた将棋を子供の頃からマネして、今日ついに最大のヤマを迎えた渡辺明。家元は16手め74歩。古い看板には味がある。
これを見ると先手勝ちに見える。
27手め68角が本家参り。
42手め95歩は有無を言わせぬ5th作成。
43手め65歩。若武者の5thアタックで連動6th作成。
45手め18香。85歩突けと恫喝。
46手め85歩。誘いに堂々と乗る家元森下。
47手め25桂。シャドー7thアタック。危険。
48手め42銀。家元一瞬ひるんで構える。
49手め55歩。相矢倉7thアタック。 先手優勢。当家では先手勝ち。