王位戦第1局回想2 ユダの接吻
2004.07.19分析マシュダ一家


王位戦第1局 封じ手をめぐり 「ユダの接吻」 No: 5952 [返信][削除]
 投稿者:マシュダ一家  04/07/19 Mon 06:43:40

羽生の封じ手77角は敗因。ここは94歩で谷川が5th作成をした地点なので二通りしかない。即ちマシュダ一家最強変化65歩と感想戦変化77桂のみ。それ以外のエクセントリックな5thアタックは95歩と86歩以外にない。羽生なら当然65歩でないと面白くない。これが最も過激な5thアタック。問題は65歩で主題の75歩に両者がスポットをあてることができるのかと言うこと。
まず基本図。

MF20 谷川5thを逆用する封じ手65歩変化

▲7六歩 ▽3四歩 ▲7五歩 ▽4二玉 ▲6六歩 ▽6二銀
▲7八飛 ▽3二玉 ▲4八玉 ▽8四歩 ▲3八玉 ▽8五歩
▲7六飛 ▽6四歩 ▲5八金左 ▽6三銀 ▲2八玉 ▽1四歩
▲1六歩 ▽5二金右 ▲3八銀 ▽7二飛 ▲9六歩 ▽9四歩
▲6五歩

解題1=5thアタック敢行が王者の条件
25手めが王者を決める手とは矢倉24手組を想起。勝敗を決めるのではなく王者を決める。どのように勝つか或いは負けるかという手がこの65歩。谷川72飛が三間24手組中の悪手と断定するわけにはいかない。それは24手めに94歩があるため。
羽生がこの地点で5thアタックが敢行できなければ王者失格。
3rdアタックができれば神。連盟棋士では丸山しかいないが大抵羽生にドンキホーテ扱いされる。ところが羽生には神の手3rdアタックが敢行できなかった。谷川羽生将棋では今までもそうであったように5thアタックで先攻した方が勝つ。

MF20-1 ▲6五歩 ▽同 歩 ▲2二角成
▲7六歩 ▽3四歩 ▲7五歩 ▽4二玉 ▲6六歩 ▽6二銀
▲7八飛 ▽3二玉 ▲4八玉 ▽8四歩 ▲3八玉 ▽8五歩
▲7六飛 ▽6四歩 ▲5八金左 ▽6三銀 ▲2八玉 ▽1四歩
▲1六歩 ▽5二金右 ▲3八銀 ▽7二飛 ▲9六歩 ▽9四歩
▲6五歩 ▽同 歩 ▲2二角成 ▽同 銀 ▲8三角 ▽6二飛
▲6五角成 ▽5四銀 ▲8三馬 ▽6九飛成 ▲7四歩 ▽6五銀
▲7八飛 ▽7四歩 ▲6六歩 ▽4五角 ▲6五歩 ▽7八角成
▲同 銀 ▽同 龍 ▲4五角 ▽8八飛 ▲7八角 ▽同飛成
▲投了
48手で後手の勝ち
解題2 先に角交換したら不利というのがマシュダ一家実況&分析4-1
同銀の1手が連動手になるため手損を強いられる。ましてや先に歩損して角交換を自ら行なっては負けという典型が上記手順。先手が83地点の傷狙い1点で上記の変化だと負けてしまう。
そこで歩を捨ててから桂を跳ねてみる。

MF20-2 後手勝ち変化 ▲6五歩 ▽同 歩 ▲7七桂 ▽6六歩 ▲8五桂
▲7六歩 ▽3四歩 ▲7五歩 ▽4二玉 ▲6六歩 ▽6二銀
▲7八飛 ▽3二玉 ▲4八玉 ▽8四歩 ▲3八玉 ▽8五歩
▲7六飛 ▽6四歩 ▲5八金左 ▽6三銀 ▲2八玉 ▽1四歩
▲1六歩 ▽5二金右 ▲3八銀 ▽7二飛 ▲9六歩 ▽9四歩
▲6五歩 ▽同 歩 ▲7七桂 ▽6六歩 ▲8五桂 ▽8四歩
▲7三桂成 ▽同 飛 ▲6六角 ▽同 角 ▲同 飛 ▽5五角
▲8二角 ▽6六角 ▲7三角成 ▽同 桂 ▲7四歩 ▽6五桂
▲7三歩成 ▽5四銀 ▲6八銀 ▽9九角成 ▲6一飛 ▽5五馬
▲投了
48手で後手の勝ち

MF20-3 先手勝ち変化 ▲6五歩 ▽同 歩 ▲7七桂 ▽6六歩 ▲8六歩
▲7六歩 ▽3四歩 ▲7五歩 ▽4二玉 ▲6六歩 ▽6二銀
▲7八飛 ▽3二玉 ▲4八玉 ▽8四歩 ▲3八玉 ▽8五歩
▲7六飛 ▽6四歩 ▲5八金左 ▽6三銀 ▲2八玉 ▽1四歩
▲1六歩 ▽5二金右 ▲3八銀 ▽7二飛 ▲9六歩 ▽9四歩
▲6五歩 ▽同 歩 ▲7七桂 ▽6六歩 ▲8六歩 ▽7四歩
▲同 歩 ▽同 銀 ▲7三歩 ▽同 飛 ▲8五桂 ▽投了
35手で先手の勝ち

MF20-4 先手勝ち変化 ▲6五歩 ▽同 歩 ▲3六飛 ▽8八角成
▲7六歩 ▽3四歩 ▲7五歩 ▽4二玉 ▲6六歩 ▽6二銀
▲7八飛 ▽3二玉 ▲4八玉 ▽8四歩 ▲3八玉 ▽8五歩
▲7六飛 ▽6四歩 ▲5八金左 ▽6三銀 ▲2八玉 ▽1四歩
▲1六歩 ▽5二金右 ▲3八銀 ▽7二飛 ▲9六歩 ▽9四歩
▲6五歩 ▽同 歩 ▲3六飛 ▽8八角成 ▲同 銀 ▽4五角
▲5六角 ▽3六角 ▲同 歩 ▽6四銀 ▲3四角 ▽2二銀
▲4五角 ▽8二飛 ▲7一角 ▽8四飛 ▲7二角成 ▽7八飛
▲9七銀 ▽7九飛成 ▲8二角成 ▽8九龍 ▲8一馬左 ▽9九龍
▲9一馬 ▽9七龍 ▲7六桂 ▽投了
51手で先手の勝ち

解題3 このように小学生のように素直に駒を進めると角交換を強いられた方が大抵負ける。これは横歩取りでも同じ。しかし上記変化は本題とは無縁。このような将棋では面白くない。本題の目的はいかに3手め75歩にスポットをあてるかに尽きる。だから上記短絡変化はシナリもウネリもないまま75歩が使い捨てカメラとひとめ。
本来の主題を追及するために65歩に後手は角交換をするのが王道。 手損をして角交換をする戦略は最近の後手番の有力戦法。3手め75歩に局地戦の意味を与えずに最終盤で初めて意味が明らかになるというドラマを以下の手順で追及してみる。

初日実況MF20-0で登場した基本変化
▲7六歩 ▽3四歩 ▲7五歩 ▽4二玉 ▲6六歩 ▽6二銀
▲7八飛 ▽3二玉 ▲4八玉 ▽8四歩 ▲3八玉 ▽8五歩
▲7六飛 ▽6四歩 ▲5八金左 ▽6三銀 ▲2八玉 ▽1四歩
▲1六歩 ▽5二金右 ▲3八銀 ▽7二飛 ▲9六歩 ▽9四歩
▲6五歩 ▽8八角成 ▲同 銀 ▽8二飛 ▲6四歩 ▽同 銀
▲5六角 ▽5五角 ▲7七銀 ▽3五歩 ▲6六銀 ▽同 角
▲同 飛 ▽5五銀打 ▲6八飛 ▽5六銀 ▲6四飛 ▽4五銀
▲6一飛成 ▽3六歩 ▲同 歩 ▽5五角 ▲3七桂
47手まで

初日実況では対局者と同じ時間帯で上記の変化以後先手勝ちとしたが、それでは当たり前過ぎて面白くない。後手に勝ち変化を求めたい。

解題4  コンセプト1-4
1=先手75歩の連動手の位に対抗するためには35歩。
2=34地点の欠陥は攻防45銀への繰り換え手順で補強。
3=先手飛車を成らせて居飛車側の飛車をサバク。換骨奪胎。
4=75歩に意味を付与。劇的な幕切れ。

以下は3以後を具体化した手順

MF20-X 後手勝ち手順「75歩はユダの接吻へ」基本デッサン
▲7六歩 ▽3四歩 ▲7五歩 ▽4二玉 ▲6六歩 ▽6二銀
▲7八飛 ▽3二玉 ▲4八玉 ▽8四歩 ▲3八玉 ▽8五歩
▲7六飛 ▽6四歩 ▲5八金左 ▽6三銀 ▲2八玉 ▽1四歩
▲1六歩 ▽5二金右 ▲3八銀 ▽7二飛 ▲9六歩 ▽9四歩
▲6五歩 ▽8八角成 ▲同 銀 ▽8二飛 ▲6四歩 ▽同 銀
▲5六角 ▽5五角 ▲7七銀 ▽3五歩 ▲6六銀 ▽同 角
▲同 飛 ▽5五銀打 ▲6八飛 ▽5六銀 ▲6四飛 ▽4五銀
▲6一飛成 ▽3六歩 ▲同 歩 ▽5五角 ▲3七桂 ▽6二飛
▲8一龍 ▽6九飛成 ▲2四桂 ▽同 歩 ▲2三銀 ▽同 玉
▲4一龍 ▽3七角成 ▲同 銀 ▽4九龍 ▲3一龍 ▽1七金
▲同 玉 ▽1九龍 ▲1八金 ▽2五桂 ▲2六玉 ▽3四桂
▲同 龍 ▽同 銀 ▲4一角 ▽3二香 ▲3五桂 ▽同 銀
▲同 歩 ▽1七銀 ▲3六玉 ▽3七桂成 ▲同 玉 ▽3九龍
▲3八銀 ▽4五桂 ▲4六玉 ▽3六飛 ▲5五玉 ▽5四銀
▲6四玉 ▽6九龍 ▲6七歩 ▽6三金 ▲同角成 ▽6六飛
▲同 歩 ▽同 龍 ▲7三玉 ▽6三龍 ▲投了
94手で後手の勝ち

解題X「ユダの接吻」

これは先手の3手め75歩が最後にイエスを裏切るユダの接吻となるドラマの粗筋。下書きなので4に穴がある。60手めは38金ならもっと簡単に先手玉は詰む。このような所は4の相転換らしく秒読みの嵐で神の怒りが手をすべらせたことにする。そもそも「ユダの接吻」とはスベった歴史。
上記先手の敗着は4の範疇31龍で首を差し出したこと。この31龍は盆に乗った聖ヨハネの首。そこで先手が勝つためには59手め以前から手を換えないといけない。59手め38角と打つのか55手め59金とするのか、それはファリサイ派の自由。いずれにしても75歩に意味を与えないと物語は完結しない。
そこでいろいろな外典ができる。どれもルーツは3手め75歩。基本はこれを最後まで残して勝因か敗因の旗印とすること。
実戦のブーハは75歩を自ら消して負けた。ならばこれを残して勝つのが先手の戦略かもしれない。しかし当家は断言する。3手め75歩は「ユダの接吻」であると。即ち3手め75歩を指す者は永遠に呪われる。75歩を指した手で74歩とは悪魔のくちづけ。