マシューとモリーの幻想対談
第1回
力学と錯覚

2004.07.15

マシュー「大三冠となった気分は?」
モーリー「今までで一番長い一年でした」
マシュー「年取りゃアっと言う間」
モーリー「でもお元気そうで」
マシュー「痔が悪化しとる。見た目わからんじゃろ」
モーリー「よくひとめって仰いますが」
マシュー「経験者なら座り方見てひとめ」
モーリー「正座より椅子がラクですか?」
マシュー「痔にはスケベ椅子が一番ラク。アタリがない」
モーリー「(笑)売ってますか?」
マシュー「ラブホからガメてきた。百円ショップには売っとらんね」
モーリー「チップ置いたとか」
マシュー「釣りはいらんと吹き出しに書いて大駒1枚。樋口一葉ならルームメイドに大受けだった」
モーリー「11月以後の新手筋になりますか」
マシュー「売っとらんが欲しいモノってない?」
モーリー「タイトルが正にソレかと」
マシュー「名人竜王がスケベ椅子扱いでは困る」
モーリー「(笑)近所の家電のお店に非売品で欲しいナって思ったモノが」
マシュー「電気屋の奥さんはいかんね。手をつけると感電する」
モーリー「(爆笑)ディスプレイされているサザエさんの人形なんですが」
マシュー「人形愛か。四谷シモンでもサザエさんには手を染めんナ。さすが大三冠」
モーリー「愛ですかねえ。前を通ると首と手が動いて喋るんです」
マシュー「で、ガメてきた?」
モーリー「一応譲って頂けますかと店主に聞いたら店の顔なのでと丁寧に断られました」
マシュー「東芝の顔立てたね。名人より禅譲がむずかしいのがサザエさん」
モーリー「そういえばサザエさんグッズってなんで少ないんですか?」
マシュー「東芝と長谷川町子の意向じゃろ。死後にキャラを勝手にデフォルメされんように著作権管理が厳しい。一種の独占かもしれん」
モーリー「いまだに東芝のCMでサザエさん放映しているって凄いですね」
マシュー「サザエのつぼ焼きは海の家でもっと前から売っとるゾ」
モーリー「キャラと本物はやっぱ違いますか」
マシュー「作品って何かね?」
モーリー「私にとっては棋譜がそうあってほしいと思うんですが」
マシュー「サザエさんなら著作権がある。サザエのつぼ焼きに著作権あったら困る」
モーリー「棋譜に著作権主張はむずかしいですか」
マシュー「連盟が管理すりゃ無理。著作権とは果てはバス会社まで脅かす」
モーリー「バス会社とどんな関係が?」
マシュー「サザエさんの顔を描いたバスを勝手に走らせると訴訟される。ところが連盟が社団法人になった第一命題は将棋の普及なんで、勝手に棋譜をジャンジャン広めてくれと言わにゃならん」
モーリー「バスにサザエのつぼ焼きを描いたらダメだったんですかね」
マシュー「風呂屋のペンキ絵でもみかけんな」
モーリー「将棋連盟は弱小団体ですので」
マシュー「日本で最強の社団法人と思わんかね?」
モーリー「どのようなところが?」
マシュー「支出が人件費しかない」
モーリー「ところがモノを買うにもお金がないと言われるんです」
マシュー「NSNで大失敗した後遺症じゃろ。モノを信用して夢見た生身のサザエがバカを見た。棋士が片手間に商売に手を染めるのは無理」
モーリー「関西将棋会館ではモニターテレビの新規購入予算さえ出ししぶったとか」
マシュー「人件費の分捕り合戦が基本じゃからね。モノには冷たい」
モーリー「最近は人件費にもかなりシビアなところがありまして」
マシュー「棋譜の誤記には記録係の奨励会員に罰金千円?」
モーリー「読売新聞にも書かれました。恥ずかしいことなんですが」
マシュー「千円は手ぬるい。チンポ出して廊下に立たせろ」
モーリー「それでは青少年虐待で告訴されます」
マシュー「チンポ出すのは棋士の方」
モーリー「なるほど。棋士の責任と」
マシュー「子供など罰金千円で済むなら喜んでわざと間違える。今時千円ではスケベ椅子一個も買えん」
モーリー「罰金はダメですか」
マシュー「棋士が金で罰を与えちゃいかん」
モーリー「ではどうすれば?」
マシュー「対局後に棋譜を確認して両対局者が署名をする。それで棋譜が初めて本人の作品として実行力をもつ」
モーリー「疲労した頭で棋譜を見るのが嫌な棋士もいるかと」
マシュー「そりゃかまわん。署名なけりゃ勝手に書き換えられても文句言えんだけ」
モーリー「時間だけは確認できませんが」
マシュー「そこが甘い。時間も全部頭に入っとらんのがオカシー」
モーリー「確かに時間の感覚は身に染みついているはずなんですが」
マシュー「中原丸山の69分なんかピッタンコ。羽生など30分以内の考慮時間は分刻みでその特性を体得しとる。60分、90分の大長考なら常時時間を確認しながら集中とリラックスを繰り返す。ソレ覚えておらん棋士がおかしー」
モーリー「棋譜確認は単に面倒臭いだけかもしれません」
マシュー「だから嫌われた棋士は勝手に時間を間引かれてしまう」
モーリー「自業自得ですね」
マシュー「振り駒まで奨励会員にやらせておるんではタイトルホルダーは実は奨励会員が作っていたとそのうち言われる」
モーリー「振り駒は確かに番勝負で大きな要素です」
マシュー「奨励会員は羽生を永遠のアイドルにせんと自分の未来がないと勘違いしてゼーンブ羽生を先手番にしとったね」
モーリー「永遠のアイドルですか。確かにハブさんは特別な存在ですが」
マシュー「子供が憧れるのは銭と美人妻だけ。自分達の情けないトーチャンと鬼ババ見て、名声と色だけ見るのが子供」
モーリー「それがおかしいと?」
マシュー「ハッキリおかしー。小学2年生ならもっと難しい日本語で算数計算覚える。あの算数の教科書はマシュダ一家より難解な日本語。将棋の計算などソロバン並に簡単でなきゃオカシー」
モーリー「それに関わる時間が必修科目並にあるかが勝負でしょうか」
マシュー「国語算数理科社会はぜーんぶひとつにまとめてショーギにすりゃ簡単」
モーリー「うーん、それではマシュダ一家そのものになります(爆笑)」
マシュー「性教育もある」
モーリー「放送コードにひっかかりませんか?」
マシュー「子供たちはひそかに自分達の性器を親の知らんトコで見せあっておる。最初に見せときゃ誰もコソコソやらん」
モーリー「日本人のおおらかさが好きです」
マシュー「セロ見た?」
モーリー「マジシャンですね。凄いなと思います」
マシュー「D・カパーフィールドより愛着湧かんかね?」
モーリー「妙に親近感ありますけどハーフでしたっけ」
マシュー「パパが日本人でママはフランス人じゃね。リカちゃんチと逆」
モーリー「日常品であれだけのマジックを見せられると人間って何使っても芸にできるんだなって感動します」
マシュー「最近は物理の実験講座でもマジック並の芸を見せとる」
モーリー「え?例えばどんな」
マシュー「大気圧は目に見えんね?」
モーリー「見えたら怖いです」
マシュー「それを新聞紙一枚で目に見えるようにする。見たい?」
モーリー「ここでできます?」
マシュー「そこの割バシ取って」
モーリー「どーぞ」
マシュー「この割バシを端だけ出して新聞紙載せて」
モーリー「産経新聞でいーですか?」
マシュー「赤旗でも重さはかわらん」
モーリー「こんなカンジですね」
マシュー「ではテーブルからはみ出たこの割バシをバシっと空手チョップで割る」
モーリー「新聞紙が飛び跳ねそうですが」
マシュー「大気圧が紙面全体を被って重石になっとる。新聞紙は微動だにせん」
モーリー「どう見てもムリそうですが」
マシュー「ワシもそう思う。ではどうすれば可能?」
モーリー「そこで質問ですか。うーんパっと見、指で横に押し開けば箸が割れるかと」
マシュー「そりゃサラリーマンも毎日やっとる。ワシでもできる。ホレ。このワレメちゃん力学は夜にとっておく。昼の力は横にではなく縦」
モーリー「上から叩き割るには相当な集中が」
マシュー「頭ではまずこう考える。この割バシが2倍の長さだったらどうかと」
モーリー「なるほど。2倍の長さならひとめ割れそうですね」
マシュー「どうやったら2倍の長さになるか?」
モーリー「ヒント下さい」
マシュー「西洋にダマシ絵と言うものがある。ナショナルギャラリーのハンス・ホルバインの絵が有名。正面から見ると長いパンに見えるがナナメ下から見るとドクロに見える」
モーリー「ナナメ方向からみると割バシは2倍短く見えますが大気圧は変わりません」
マシュー「そこで次の段階。割バシが2倍短く見えるならどうやったら2倍長く見えるのか」
モーリー「特殊メガネでもかけるしかないですか」
マシュー「そんなモン店に売っとらん。ラブホにもなかった。将棋で考えてごらん」
モーリー「時間と関係あります?」
マシュー「大アリ」
モーリー「1時間の2倍は2時間。でも指す手はひとつ」
マシュー「大気圧も変わらんね」
モーリー「それでも何かの力学が変わると?」
マシュー「力学は変わらん。変わっとるのは人間の方」
モーリー「そこにトリックがあると」
マシュー「仕掛けの種は今の会話の中にある」
モーリー「種明しをお願いします」
マシュー「その前に結果を見せよう。集中!集中!合いの手」
モーリー「集中!集中!」
バシッ!
モーリー「ア!割れた!」
マシュー「これが大気圧の力」
モーリー「新聞紙がまったく動きませんでした。凄い力ですね」
マシュー「アメリカでコレやるときゃNYタイムズで割バシ押さえてイチローにバットで割って貰う。大気汚染警告のCMにはもってこい」
モーリー「うーん、絶対に割れないと思ったんですが」
マシュー「人間の錯覚。実際は絶対に割れないと思った時の判定が先入観となって割バシが2倍の長さになっとったこと見落としてる」
モーリー「そっか。一度横に割って見せた時に箸が2倍の長さになっていたんですね」
マシュー「名人竜王もダマすのチョロい」
モーリー「まいりました」