内藤國雄のベン・ハー「あるホームレスの死」
投稿者 前田半兵衛
投稿日 2002.4.7




2002.3.24放映のNHK将棋講座を見て。
内藤が示す原型図は一週間で完成した。
9-9の対角線上を直線的に動く玉。内藤によればそれはイエズスがゴルゴダの丘に登って行く様を表現したものらしい。内藤はこの嘆きの丘を将棋で表現するために情熱を燃やす。それから数十年の歳月を費やして、「ベン・ハー」と内藤自身が名付けた詰め将棋が完成。
テレビで初公開の完成図。ここから111手で王は詰む。将棋雑誌「近代将棋」が昨年最初に発表したが、米長永世棋聖のHPが昨年の12月に無料で公開し、それをマシュダ老は竜王戦公式掲示板で以下のように酷評した。

[964] 阿呆船 投稿者:マシュダ 投稿日:2001/12/16(Sun)
海賊船で貴重な棋譜を世界中に垂れ流されてあったり前田のハンベー。各国で今ごろ喜劇扱いされておるがな。「悲劇の丘で爆笑しよー!」こりゃ大受け。ワルキューレの騎行の鳴り物付でDVD商品化やっとるかもネー。そんなんロハでトップに張りつけてアホか?

「悲劇の丘で爆笑」まさしくその通りであった。青年内藤の脳裏から離れなかったであろうイエズスを刺した槍。それはそのまま香車のイメージであった。
槍をイエズス自ら食べながら行進する葛藤。45手目からの「ベン・ハー」の戦車競争の場面は、角のヒモがついた龍でひたすら王様を追うというもの。やはり笑いがこみあげる。「ワルキューレの騎行」より古賀メロデイーの「丘を越えて」がふさわしい。(内藤はこの場面は解説するのも自分で恥ずかしいのか、そそくさと進める)
「ベン・ハー」これは表題が悪すぎた。悲劇の丘も手にあせ握る戦車競争もそこにはない。せっかくの54桂馬というクライマックスに活躍する仕掛けも、この喜劇の渦に巻き込まれている。
詰め将棋としては総ての駒を使用し王様が一段違う対角線上を戻る構図。もし悲劇を想定したのなら、表題は私なら「あるホームレスの死」と名付ける。正直に社会に立ち向かい敵陣に達するが、嘲笑されながら疎外されて路頭に放り出される老人の冬の旅。54桂馬は友情を口にする裏切者。この54桂馬のおかげで裸の王様は惨めな死に様を曝すことになる。最後の新聞紙一枚まで身から剥がされ撲殺されたホームレス。
技術的な問題では先手の王を一1の地点に配置すれば全駒使用となり、パソコン上での盤面配置が完成する。
もし内藤が歴史好きなら、次回の大作は「忠臣蔵」を是非見たい。