2004.02.22NHK杯準々決勝
丸山忠久棋王VS中原誠永世十段
ゴキゲン変奏 中空飛車

第二相停滞手の後遺症

2004.02.23分析 マシュダ一家


2004.02.22NHK杯準々決勝 丸山VS中原 中空飛車 第二相停滞手の後遺症  No: 4277 [返信][削除]
 投稿者:マシュダ一家  04/02/23 Mon 16:23:49

放映:2004/02/22
棋戦:第53回NHK杯準々決勝
先手:丸山忠久棋王
後手:中原誠永世十段

▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽5四歩 ▲2五歩 ▽5二飛
▲5八金右 ▽6二玉 ▲4八銀 ▽7二玉 ▲6八玉 ▽8二玉
▲7八玉 ▽7二銀 ▲4六歩 ▽9四歩 ▲9六歩 ▽1四歩
▲1六歩 ▽5五歩 ▲2四歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽3二金
▲4七銀 ▽2三歩 ▲2八飛 ▽5四飛 ▲6八銀 ▽3五歩
▲7七銀 ▽4二銀 ▲4五歩 ▽4四歩 ▲3六歩 ▽4五歩
▲3五歩 ▽4三銀 ▲6八金直 ▽4四銀 ▲3八飛 ▽6四歩
▲6六銀 ▽7四歩 ▲3四歩 ▽6三銀 ▲5六歩 ▽同 歩
▲5五歩 ▽5一飛 ▲5六銀 ▽7二金 ▲3六飛 ▽1三角
▲4七歩 ▽7三桂 ▲1七桂 ▽2四角 ▲2五桂 ▽6五桂
▲9五歩 ▽同 歩 ▲9三歩 ▽同 香 ▲6五銀直 ▽同 歩
▲5四歩 ▽5七歩 ▲同金左 ▽5四飛 ▲8五桂 ▽5五歩
▲6五銀 ▽5一飛 ▲3三歩成 ▽6四歩 ▲3二と ▽6五歩
▲4二と ▽9一飛 ▲3二飛成 ▽8四歩 ▲9二歩 ▽同 飛
▲4三と ▽8五歩 ▲4四と ▽8三玉 ▲8一銀 ▽8二飛
▲2一龍 ▽6六桂 ▲同 歩 ▽5六銀 ▲7九角 ▽6六歩
▲同 金 ▽7九角成 ▲同 玉 ▽5七角 ▲同 金 ▽同銀不成
▲9二角 ▽9四玉 ▲9五香 ▽同 玉 ▲9六歩 ▽同 玉
▲9七金 ▽9五玉 ▲9六歩 ▽投了

111手で先手の勝ち

33手め45歩=丸山の悪手。本人は反省。
34手め44歩=中原の野性。駒アタリ奇数番1。
35手め36歩=丸山の駒アタリ偶数番2で劣勢。
40手め44銀=後手二回目の駒アタリ奇数番1。
41手め38飛=双頭手として受けた為に逆転は34歩しかない。
42手め64歩=66銀に対抗する位。
43手め66銀=行くしかない。55歩狙いは元もとダミー。
44手め74歩=玉側の桂を使う中原得意のパッセージ。
45手め34歩=受けただけの38飛が双頭手に逆行相転化。
46手め63銀=逆転の気配を感じた中原の自己修復機能。ここで73桂-56歩-65歩は感想戦で中原自ら「自信なかった」と言うが実際ここで65歩の駒アタリ偶数番2を後手が引いては負け確定。3手読めば必然なので63銀と故意に丸山にチャンスを与える。MF理論で説明すれば勝負勘でもなんでもない。

46手め局面構造
1相転移=駒アタリ予備5=95-75-56-15-33
2相転化=駒アタリ奇数番1=56
3相停滞=仮想駒アタリ予備2=46-65
駒アタリ予備奇数番からの駒アタリ奇数番作成は有利。
47手め56歩=駒アタリ奇数番1を丸山が獲得。この56歩はもともと中原好みのダミー攻め。従って中原はこの構図を5-1=4と把握しているはず。第二相転化での試算は先手が偶数番を握らされるはずという読み。ところが丸山の逆行相転化手を甘く見た。
49手め55歩=丸山二回目の駒アタリ奇数番1。ここまで双方二回づつ駒アタリ奇数番1を獲得。
50=51飛。これが丸山の41手め38飛逆行相転化手に唯一対抗できる中原の逆行相転化手2。
53手め36飛!=丸山第一相停滞手。連盟棋士にはこの手の意味を理解できない。これは四相の構造上にある相停滞であるためマシュダ一家理論で説明する以外解説不能。この手は37桂を誘導する為の手ではなく盤面の均衡を保つ唯一の手。丸山は「指す手がわからなかった」と言う。ここが丸山攻略のミソ。指し手が明解でない時に盤面の均衡を保つ相停滞手を丸山は必ず放つ。
谷川、読んでいるか?
昨日の丸山36歩がこの手と同じ第一相停滞手。
54手め13角=中原は角切りをみせつける。丸山の相停滞手など絶対に認めないという強手。
55手め47歩打=驚愕の丸山第二相停滞手。この手の意味を構造上正確に把握しているのは当家のみ。解説の石田など最初からバカにしきっている。バカは石田。いいカモフラージュとなった。ところで丸山は感想戦ではっきりこの手を「つらい辛抱」と公言している。しかし「この局面では」と述べている。中原の13角が方針ハズレの無理攻めと言っている。中原が無理攻めしたので「仕方ない」と言うこと。
56手め73桂=中原は優勢を意識して攻めた。マシュダ一家理論では第二相停滞手から相転換領域に突入した方が負け。ところが第二相停滞から第三相停滞は千日手しかない。それが後手の特権。しかし中原は無理を承知で行く。
57手め17桂=中原のオハコを完全に奪われた。丸山演出。
59手めの局面構造
1相転移=駒アタリ予備5=95-75-56-46-15(33から46に相転化)
2相転化=駒アタリ奇数番1=65-33(73桂で65換算+25桂で33追加)
この構造は46手めの相停滞領域にある仮想駒アタリ予備2の46&65が1と2にそれぞれ組み込まれたことを示す。
60手め65桂=中原「アブナイと思いつつやってしまった」
感想戦では65歩-57銀-43金-22歩-54歩-同歩-同金を示唆。
もうひとつは46歩-同歩-45銀-39飛-36歩。原理は簡単。いずれも駒アタリ予備5から選択した駒アタリ奇数番1の執行の為に有効。こんな簡単な原理を中原の鋭敏な直感が逃すはずない。棋聖戦で山田に故意に負けた65桂と同じ。ただし36歩の相停滞手は中原好みではない。いづれにしてもこのタコ桂は故意に負けたとしか当家では見ない。組み合わせが悪い。これに勝つと次に準決勝で羽生とあたってしまう。 羽生と指してNHK杯で敗けることを潜在的に嫌ったので淡泊となったと読んであげたい。意地悪く見れば前回の対中井戦でイケイケの悪いクセがついた。
61手め95歩=駒アタリ予備5からの駒アタリ奇数番1を丸山に奪われる。
63手め93同香=ここで中原は57歩を先に打つべきと感想戦で即座に断言。換算された駒アタリ偶数番予備からの駒アタリ奇数番1執行は未練。「逃げたら効かし」と中原は恫喝するが丸山は逃げる。丸山が何も言わないので「取りますカネ?」と珍しく自信なさそうにうわずった中原の声が色っぽい。取ってもかまわない。しかし丸山は取らない。
70手め54飛=感想戦ではここで丸山が54歩を示唆。以下同銀-同銀-同角-64銀打-11角成-33桂ならば中原の華麗な技が決まる。51飛という逆行相転化手がここで生きる仕組み。丸山の優しい心遣いであった。実際中原がそう指したら丸山は11角成とはしない。取れる香など目もくれずに角を悠然と引き上げ9筋連動手を狙う。
72手め55歩打=石田はここで84銀打を勧める。永世名人がそんな手を指すはずない。「全然考えなかった」と言いつつ「これで優勢か?」と子供のように喜ぶ中原。そんな手を指せば丸山は93桂成と清算しない。喜んで55歩。偶数番でも大駒当たりは手抜き不可。飛車は逃げる一手。しかも93桂成の王手は駒アタリ奇数番に数えない。64飛と逃げれば77桂の双頭手で後手の自働駒アタリ奇数番1を解消しつつ65銀の飛車殺し。51飛の里帰りなら65地点が自働駒アタリ奇数番となる仕組み。丸山に自陣桂まで使われては中原の面目丸潰れ。このようなことをしたいのはむしろ中原。だから「先手をもって指したい」と何度も述べている。中原が指したい筋は全て丸山に指されてしまった。95歩、17桂、幻の77桂。どれも中原のオハコ。丸山演出が光った一局。石田は形づくりもさせないとボヤクが丸山は肉体的にその余裕がない。序中盤の集中でここまで構築すれば最終盤の形など作る力は尽きている。
昨日の谷川同様相停滞手を中原にはギリギリの局面でないと指せない。
これが永世名人の宿命。丸山は名人の時にはそのように果敢に戦って散った。