2002.3.17NHK杯決勝 角換り棒銀

佐藤康光VS森内俊之

前編 二上達也へのオマージュ

マシュダ談2002.3.17 2002.3.18up


「対局前のインタビューです」

「ほっほ、やっぱ康光、あの対森下戦が一番印象深いと言っておるね」

「凄まじい戦いでした」

「あれが今期最も迫力あったかもしれんね。次が森内羽生戦。ブービー賞で藤井木村戦か」

「解説は二上会長です」

「毎年最後に二上解説。安食も藤倉もええ感じじゃねー」

「解説も楽しみですね」

「ちゅーか二上のおかげで毎年決勝戦は白ける。そろそろ中原解説にしてもらわんと」

「振り駒で佐藤王将先手です。まだ九段と呼んでいますが」

「王将奪取前の収録か。こりゃ康光先にNHK杯優勝かね」

「和服ですね。森内八段は洋服です」

「ほっほ、後手番となって苦笑いしとる。負け覚悟したような照れ笑いじゃね」

「勝負は最初から決まっていると?」

「これ公開録画じゃないから康光次第。NHKはつまらん将棋指すと後悔録画」

「角換りとなりました」

「矢倉はもうやらんのかね」

「中倉さんによると矢倉は1局だけで、四間飛車が20局あったそうです」

「ん?15/16歩?」

「普通は78金ですか」

「おお、36歩から37銀か!」

「棒銀やりますね」

「康光千両役者!」

「現代角換り腰掛け銀にはしないと」

「二上が解説しやすい将棋にしたとこが憎い」

「会長乗ってきましたね。ズバズバ指し手が当たっています」

「えーゾ。こりゃみんなで楽しくなってきた」

「中倉さんも乗ってます!」

「中倉姉は今までで最高の聴き手役。ずばぬけた努力しておるからね。よういろいろ調べとかんと、こういう間合いは絶対にでて来んね。相手の反応をこれほどうまく引き出せる聴き手はおらんかった」

「20手目で森内八段長考です」

「二上解説通り75歩やる。康光が来いと言っとるからね」

「75歩来ました! 会長の予言通り65角打ちがあるのでは取れませんね」

「激しい将棋。せっかく先手取ってよーここまでやる」

「もっと確実に勝つべきですか?」

「これ見ると康光は決勝にでたことで満足しとるね。勝負は二の次という感じ」

「最後は好きに指しますよ?」

「気持ち良い指し方」

「78金と受けましたね。76歩同銀となりました」

「ん?二上なにアホ言っとるんじゃい?」

「ここで飛車先交換したらどうかとの変化説明ですが」

「86歩なら同歩に決まっておるがな」

「それで同飛だと」

「95角でケツから血が出る王手飛車」

「あっ、会長も気がついてくれました」

「これ気がつかんかったらボケ老人じゃがな」

「42玉でしたね」

「それが形か」

「41玉では?」

「とりあえずの53地点狙われる。次の飛車先交換どうやって受けんのかね」

「角は打てませんか」

「もったいない。銀あがるか交換させるかしかない」

「25/75銀でした」

「森内73銀で対抗か」

「ここで先手74歩は?」

「64銀-同銀-同歩-73銀なら95角で迎撃。64銀-46角なら55角のハマグリ合わせ」

「27/46銀ですね」

「これで57地点を守りつつ35歩が狙える攻防の銀」

「森内八段74歩です」

「無難じゃね。歩を打つのは癪でも次に飛車先交換できる」

「でも87歩で追い返されて後手ひきますけど」

「そりゃ最初から後手じゃからね。森内らしー」

「34/82飛と引いた局面ですが」

「康光陣は居玉で無双銀。凄まじい陣形。森内は無難に42玉、74歩打ったおかげでキリリとしとる」

「どちらが良いのでしょう?」

「康光の将棋の方が面白いのは明らか。今度は先手が飛車先を交換して銀も交換となる」

「そこで手番が後手になりますが」

「玉側の銀を交換されたら森内はカウンター狙う以外に勝機はない。先手の最大の弱点は87地点。直接手だけなら、ここでいきなり54角と原始三角帽子に打てばとりあえず8筋が突破できそうな構図。その前に康光行くっきゃない」

「手番がポイントですね」

「そっ。角換り棒銀だと飛車先交換後、歩を打って飛車を追い払った時に手番が自分に戻る。そこまではいつも頭に入れておかんとね。ここまでのポイントは先手は7筋の歩が切れているという所。森内の74歩打ちがマイナスになるように局面を誘導すればいい」

「35/35歩と行きました!」

「42玉が怖いとこ。飛車の横効きないからね。まあ康光先に37銀と態度決めたから森内もなんか対策あるんじゃろ」

「飛車先の歩と銀交換後、45/28飛と戻った所です」

「ここで後手に手番が回る」

「46/76銀打ちとガッツン行きましたー!」

「それっきゃないね。54角だと65銀で角は追われるだけ」

「27銀と打って同飛に54角は指しすぎですか?」

「アホ。そりゃゴッツン銀と言う。87角成なら79金。金取らせるまで三手稼げる。康光居玉で右辺が広いから攻めあい勝ちコース」

「先手受け方むずかしいですか?」

「流れは攻めあいじゃろ。用意の手のお披露目パーティー」


後編は47手目以後