注意欠陥多動障害 2002.3.16up
「先生、うちの子本当に落ち着きがないんですよ」
「これが質問表の答えのようですが」
1.自己顕示欲は強いですか?(はい。将来は学校の先生を見返してやると言っています)
2.友人はいますか?(親友がいましたがヘンなあだ名をつけて嫌われてしまいました)
3.悪口雑言はありますか?(いいえ。でも時々おかしな事を口走ります)
4.部屋に引きこもることはありますか?(人前に出る方が本当は好きのようです)
5.本は読みますか?(人から聞いた話しの方が面白いようです)
6.バターとマーガリンはどちらが好きですか?(バターはぬるのに時間がかかるからと嫌がります)
「友人にはどんなあだ名をつけたんですか?」
「自分よりモテルことを羨んでモテ助君と名付けたんです。そうしたらクラス中に広まって、担任の先生までもがその名前で佐藤君を呼んだものですから、ウチの子嫌われまして」
「世間はもっと残酷ですよ。そういうあだ名は新聞やテレビでも面白がりますから」
「最近はウチの子学校の勉強にも集中できなくて。それでここに来たんですが」
「今、学習塾に通わせていましたね。まずやめさせなさい」
「それは困りますわ。将来の条件を整えるのは親の義務です」
「では薬で治療することになります」
「どんなお薬です?副作用はありませんか?」
「副作用のない薬はありません」
「危険ではないのですか?」
「お子さんは、注意欠陥多動障害という病名です。我々はADHDと呼んでいます」
「やはり病気なんですね」
「これは遺伝子の欠陥による生まれつきの障害です。じっとしていることができず、注意力が散漫で、衝動的な行動をするといった症状があります」
「生まれつきの異常なんですか?」
「ドーパミン・トランスポーターやドーパミン・レセプターの異常によるものです」
「ドーパミンといいますと?」
「神経伝達物質の一種です。これが脳で正常に受け渡しが行なわれていないと、人は切れたりするのです。それをうまく薬で調節しないといけません」
「なんというお薬ですか?」
「種類は沢山ありますから、まず症状を分析しなければなりません」
「でも体にあったお薬は、どのくらい飲み続けるのですか」
「一生飲み続けることになるかもしれません。大人でも常用者は多いのです。職業柄飲み続けている人もいます」
「それは困りますわ」
「ならば遺伝子治療を行うしかありません」
「遺伝子治療といいますと?」
「注意欠陥多動障害となる原因の遺伝子を正常なものに組み替えるのです。これには正常な遺伝子をもつウィルスを大量に注入する必要があります。成功すれば二度と薬を飲む必要はありません」
「失敗もあるのですか?」
「予防接種でも死亡事故はあります」
2002.3.16up