2002.3.10NHK杯準決勝

佐藤康光VS藤井猛

対桂離宮-62飛型急戦藤井システム

三つ目の歩は勝利への道

マシュダ談 2002.3.10


中倉姉が紹介する両者コメント

佐藤「一昼夜漬けの藤井システム対策、だすか不明」

藤井「ベスト4は初めて。気合い入っている」

「44歩で後手20秒損です。5手目56歩で40秒考え94歩。1分考え、端を受けました」

「7手目までで藤井、やや心が乱されたね。NHK杯は短時間のトーナメントじゃから研究オンリーでは勝ち進められん。藤井は94で藤井システムの意思表示。56歩を相手にせんという態度。やや気合いは受け身」

「56歩はどういう意味ですか?」

「56歩は即興手」

「一昼夜漬けの藤井システム対策?」

「まさか。これはただの恫喝。48銀の前に指すということは飛車に紐つけたまま、いきなり77角-48角から二筋を攻めるゾっという脅し。そこで飛車が二筋に回るなら後手の攻めは遅れるから二手分囲えるということ。そんな甘い変化は藤井システム対策にはならん」

「そこで佐藤九段96歩と?」

「急戦示唆と穴熊放棄。藤井次第で桂離宮。ところが56歩をついておるんで依然77角-68角から24歩を狙われる手はある。居玉する気かという恫喝はまだ続く」

「それで8/32銀-14/43銀が必然手になると?」

「22飛で悠長に構えるならね。それでも居玉なら最後は62飛という手しか藤井にはない。二筋を放棄して攻めあいという構図が見える分、短時間トーナメントでは康光指しやすい」

「20/74歩。相変わらず過激です」

「64歩突いてあると迷うね。康光の48銀-58金が緩急自在なら52金と指す方が手堅い。藤井にシステムへの気負いがあれば迷うことはないが」

「21/66歩」

「桂離宮目指す手。藤井システムまともに食らうかもしれんな」

「73桂跳ねです!」

「何度見ても胸がすくような桂跳ねじゃね。だから藤井将棋は楽しい」

「27手目77桂で桂離宮のようですが?」

「藤井居玉のままで桂離宮攻略という構図。ええぞ!」

「56歩の煽りの反動?」

「いや、康光明解な自信はないはず。一手違いの激しい攻めあいに序盤から誘導する心理作戦のみ。この勝負師魂が康光連勝連破の秘密。未だに緻密とか言っておるのではわからんはずじゃけど」

「29/57銀?」

「端歩が突きあっておるからね」

「ここで89玉なら?」

「65歩-95歩から97歩と打って香車を吊りあげ桂打ちで危険」

「しかしここで57銀では角止まって防戦一方では?」

「藤井の居玉をカウンター狙いできるからそうとも言えん。一見受け身の強気」

「30/62飛です!」

桂離宮攻略第一弾。飛車角銀桂で殺到する。康光が強気に誘っとる」

「ここで62玉と囲うのは?」

「それは桂離宮パズルへの道。ワシはそっちみたいんじゃけど、康光のラブコールなら藤井は流石に受けて立つ」

「31/89玉ですが?」

「藤井に先攻を許して刺し違える将棋。これですでに終盤に突入。すでに後手有利のはず。59角-48角と受ければ穏やか」

「詰みまで読める局面と?」

「藤井は居玉のまま攻めるしかないが一手違いで攻め倒せるはず」

「32/65歩と行きました!」

対桂離宮62飛型急戦で当然の一手。ただしここで突くのは最短手順。46歩か95歩なら曲線的」

「33/24歩です!」

「開戦されたからにはこのタイミングで突くしかない」

「それ以前に突くと?」

「だめ。飛車先の歩は、歩が当たったときに突けと覚えとけ。もしここで歩がみっつ当たる変化が後手にあれば必勝」

「?」

みっつめの歩を当てた方が有利と覚えとけ」

「飛車と金銀の二枚換えから今23歩成の局面です」

「ん?藤井65桂? 27歩じゃないんかい?」

「一気に攻めつぶせますか?」

「やはり格言は覚えとかんとね」

「解説では攻めるは守りなりという格言を紹介してますが」

「わからん格言じゃね」

みっつめの歩を当てた方が有利ということでしたね」

「そっ。27歩がみっつめ。当てるならこのタイミング。考えることない。三つ目の歩は勝利への道と覚えりゃいいだけ」

「最後の一歩が惜しかったんですかね?」

「75歩ならもっと手堅い。考える時間あるならこの二通り。いずれも三つ目の歩。先に75歩が入るなら後手必勝」

「32とです!」

「お、康光左の人指し指と親指動いとるゾ。指への脳細胞拡張じゃね」

「44/97桂打から攻めあい!」

「65桂としたからには必然」

「41とには52玉と逃げましたが」

「62だと64飛車の王手角取りで負け」

「先手玉は詰めろですが!」

「慌てるな。58金で簡単に受かる」

「52/27歩打」

「遅いね。後手玉にはすでに詰めろが続く」

「飛車取り放置で53/64飛の攻めあい!」

「当然。藤井はこれ見落としたね。負け確定。これで42金打の一手詰めなんで飛車取れん」

「63歩と受けると?」

「喜んで66の角を飛車で取る」

「それで28歩成と飛車取り返せますが」

「ならば24角と出る」

「89飛-59金下-48金で詰めよですけど」

「その瞬間51金とぶち込んで後手は即詰み」


63手にて佐藤勝ち