2003年銀河戦決勝戦
相掛り25飛 中川大輔七段VS佐藤康光棋聖

なぜ勝者に歩が三枚残るか?
2003.09.28 解題 マシュダ一家


銀河戦 康光優勝 なぜ勝者に歩が三枚残るか?   No: 2705 [返信][削除]
 投稿者:マシュダ一家  03/09/28 Sun 09:33:23

昨日放映のスカパー銀河戦では康光優勝。
お口直しには最高の棋譜。中川が随分奇抜なことをやっているように見えるが康光が自然に応じているだけで最後は自滅の道を選ぶしかなかった。レディメイドの手筋だけで中川は負けている。これは慶太得意の相掛り25飛戦法。慶太には申し訳ないが今のところB級戦法でしかない。先手番としての必然性がない。ブランコの原理で説明すると簡単。中川の美学はNHK杯決勝から変わっていない。根っからのスタイリストなのである。康光の銀の泡踊りなど当然の手。これで後手が駒アタリ奇数番1を獲得できる仕組み。対5筋位取りの常套手段。ロハの桂馬など康光には見向きもされない。駒アタリ奇数番1以後最初に攻めた方には三箇所で歩が切れているのであとは相手が首を差し出してカナ駒を渡してくれることを待つだけ。康光は自然に指して中川は切り合いを強いられたということである。中川がカナ駒を渡して首を差し出せば最後の即詰みはひとめ。簡単な並べ詰みとなる。スタイリスト相手の収束は必ずこうなる。
羽生の寄せもそう。彼らは持ち駒に歩を三枚だけ残してぴったり寄せる。気持ちよい。中川もいい相手である。
なぜ彼らには歩が三枚残るか?
駒アタリ奇数番1を獲得した者は駒アタリ奇数番3までに歩を三枚投資する権利がある。歩を三枚すべて使って相手を追い込むことができる。そこで相手に手を渡すと追い詰められた相手は反撃する。そしてまた手番が戻る。最後に敵は首を差し出しカナ駒を渡すのである。羽生が王座戦第3局で負けた理由はいつもの寄せ筋にカナ駒がなかったということだけの話。
敵が首を差し出すまでにカナ駒以外に敵に渡した歩が三枚再び手許に戻っている。寄せにはこのカナ駒を使うだけ。だから最後は勝者に歩が三枚残るのである。本譜もそのようになっている。最後は自陣の角まで寄せに働いて見事に完結する。

2003.09.27放映
棋戦:第11期銀河戦決勝トーナメント決勝戦
戦型:相掛り25飛
先手:中川大輔七段
後手:佐藤康光棋聖

▲2六歩 ▽8四歩 ▲2五歩 ▽8五歩 ▲7八金 ▽3二金
▲1六歩 ▽1四歩 ▲2四歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽2三歩
▲2五飛 ▽8六歩 ▲同 歩 ▽同 飛 ▲9六歩 ▽3四歩
▲6九玉 ▽4二玉 ▲5九金 ▽8二飛 ▲7六歩 ▽6二銀
▲9五歩 ▽3三角 ▲8七歩 ▽2二銀 ▲4八銀 ▽6四歩
▲3六歩 ▽6三銀 ▲5六歩 ▽2四歩 ▲2六飛 ▽2三銀
▲5五歩 ▽5二金 ▲3七桂 ▽4四歩 ▲6八銀 ▽3一玉
▲5七銀右 ▽4三金右 ▲5六銀 ▽7四銀 ▲7七桂 ▽6三銀
▲6六歩 ▽5四歩 ▲6五歩 ▽5五歩 ▲同 銀 ▽4五歩
▲5六歩 ▽5四銀 ▲同 銀 ▽同 金 ▲3五歩 ▽4四角
▲8五桂 ▽8八角成 ▲同 金 ▽4四角 ▲7八玉 ▽6五歩
▲5五歩 ▽同 金 ▲8九玉 ▽2二玉 ▲6三角 ▽8六歩
▲同 歩 ▽8七歩 ▲7八金 ▽6六歩 ▲4一角成 ▽6七歩成
▲同 銀 ▽6六歩 ▲5八銀 ▽5七歩 ▲2五歩 ▽同 歩
▲2四歩 ▽同 銀 ▲2五飛 ▽同 銀 ▲2四歩 ▽3三玉
▲2五桂 ▽2四玉 ▲5一馬 ▽4二銀 ▲6一馬 ▽4三金
▲3二銀 ▽5八歩成 ▲4三銀不成▽同 銀 ▲同 馬 ▽8八銀
▲同 金 ▽同歩成 ▲同 玉 ▽7七銀 ▲9七玉 ▽8七金
▲同 玉 ▽8九飛 ▲7七玉 ▽6七歩成 ▲同 玉 ▽6六金
▲5八玉 ▽5七金 ▲4九玉 ▽5九飛成 ▲3八玉 ▽4八龍
▲2七玉 ▽3七金 ▲投了

122手で後手の勝ち