ブランコの原理 第2期竜王戦第1局の考察 島朗竜王VS羽生善治六段
2003.09.22 マシュダ一家

ブランコの原理2 第2期竜王戦第1局の考察   No: 2552 [返信][削除]
 投稿者:マシュダ一家  03/09/22 Mon 05:16:40

先に断っておくべきだった。我々は棋譜だけを見て様々なことを独自に書いている。既存の本など弊害でしかないからである。従って昔の棋譜でも今日の視点で全てを見ていることになる。参考にするものは棋譜以外では羽生の二言三言の感想だけで十分であろう。

17=36歩。昨日のNHK杯における対中飛車殺しの袖飛車74歩も醍醐味があるが、矢倉における74歩やこの36歩は比較したくないほど格調がある。ひとめ凄い。論理的思考をぬきに指し手の変化だけで説明しつくすことは無理であろう。
このようなところで変化をいくつ並べてもダメなのである。そのようなことを今まで羽生や森下までもが延々と行なってきたのであった。だから戦法とは流行に左右されてしまう。飽きたから別の戦法を指すようになってしまう。
この36歩は大変な手である。島はいつものように指しているから余り考えていない。棋士の経験値で指す。しかし今度の相手は羽生である。
18=44歩。これが敗因1と我々が書けば羽生なら頷いてくれるであろうか?感覚的には理解を示すであろう。これは言葉の問題である。この44歩に違和感を感じてくれればそれでよい。
すでに5筋の歩の見合いは先手が後手の推進力を奪って指した56歩によって一次停止している。本来ここで後手は55歩と当てれば同歩に同角と取ることができる。即ち後手が権利を持つ駒アタリ奇数番1なのである。しかし55歩には同歩と取らずに先手は57銀とあがることもできる。57銀ならば手順に銀が連動手となる為に歩は等価交換となり、清算後先手は手得をするであろう。そこでこの5筋の歩の見合いはブランコの原理が有効である。54歩に対する56歩は先手が作った駒アタリ奇数番予備1と解釈できる。この解釈を肯定する手が18手め、今羽生が指した44歩なのである。羽生は5筋の駒アタリ奇数番1の権利を放棄したことになる。
17手めの36歩とは先手が作った駒アタリ偶数番予備2である。これは後手の角道を開けた34歩と見合う。ここで偶数番予備をつくるということは駒アタリ奇数番の法則では相手に攻撃手を譲渡する前兆であった。
ところがここで羽生が指した44歩とは角道を自ら遮断した守備だけの手なのである。これによって5筋の駒アタリ奇数番1の権利は後手から失われ、逆に駒アタリ奇数番1を先手に譲渡している。これは銀の位置をみれば一目である。次に66銀とでれば55歩と駒アタリを作る権利が先手のものになるからである。後手の銀は二枚ともまだ2段目に居るためにこれを阻止することがすでにできないのであった。
19=島は有無を言わせぬ25歩。角で受けるのか銀で受けるのか聞いている。
20=33銀。これで角道は二重に遮断し後手の角の移動に関わる手数を先読みできる。そして5筋の駒アタリを解消するのはこの銀ではなく62地点にいる銀でしか有り得ないことが判明する。45歩と突いても44銀とは進出できないからである。
21=37銀。すでに先手は作戦勝ちである。これで後手が勝てるなら手合い違いである。羽生はそれを認めたくないであろう。羽生の分析では次の23手め46銀が積極的な手と延べているだけである。我々はこの46銀で先手優勢と一目で断定する。これは先手だけが作成した腰掛け銀の四辺形なのである。従ってもし羽生に勝機があるとすれば駒アタリ奇数番の法則だけで指すしかない。即ちこの46銀によって先手は55地点と35地点に同時に駒アタリを作成した為に駒アタリ偶数番2であると解釈するしかないのである。実際羽生に最初の逆転のチャンスが生じたのは62手めの駒アタリ奇数番1の局面である。島の緩手によりこのような局面が生じてしまった。当時羽生が駒アタリ奇数番の法則を知っていれば間違いようがなかった。羽生はここでようやく手番を握り盤面唯一の駒アタリ奇数番1である55歩を突くべきなのである。ここしかない。我々ならこの局面図だけをいきなり見せられても10秒以内で解答を出す。ところが羽生は35銀とでてしまった。これは悪手である。序盤から耐えに耐えてようやく奪取したあの55地点の駒アタリ奇数番の権利を放棄しては勝ち目はない。結局羽生は68手めに角を切って銀を取る以外に継続手がなかった。かなり野蛮な手である。島が終盤力において羽生に劣るためにその後再度チャンスが訪れるが結局押し切られた。
そこで我々は62手めで局面検討を終えることになる。以下はその内訳である。

22=43金。後手は44歩としたからにはひたすら何もしないで待つ。ブランコは二人乗りであった。座っている女の子は羽生である。島はお兄さんらしく立って一人で漕いでいる。
23=46銀。グイとブランコを押し出すお兄さん。ところがこれはお兄さんにとって前進する推進力でも、後手の女の子にとっては後進しているのである。
24=85歩。後手はここでグイと力を入れる。これで先手の77銀を釘づけにしようという力を発揮している。
25=66銀。妹が珍しくブランコに力を入れたので島はお兄さんらしく負けじともっとブランコに力を入れる。これをカニカニ銀などと呼んではいけない。これは二重の腰掛け銀である。前年の竜王戦でも島が見せたW腰掛け銀なのである。
26=86歩。後手は先手のお兄さんが与えてくれた駒アタリ奇数番1を早速行使し歩を突く。この飛車先歩交換の原理により先手は自動的に手番を握る。
31=35歩。厳しいお兄さんである。ブランコに座っている妹のスカートを踏みつけているのも気がつかずにお兄さんは本気で漕ぎ始めている。先手はここでムキにならずに58金とするべきである。それが最善であった。後手の妹は何もすることがないので31角とスカートの裾を直すか53銀と襟元を見るくらいであろう。74歩とムキになったら怒ってあげればよい。
42=35歩と突けばこうなる。妹はお兄さんの推進力に圧倒されて53銀と襟元を直す。
43=15銀。体を直角に曲げて最大の推進力を披露するお兄さん。24歩と合わせる狙い。最近では見かけないが当時の島のオハコである。羽生にはバカのひとつ覚えに見える。
44=35銀。どうであろう?ここで羽生はブランコの対象形を見せてくれた。見事である。お兄さんの推進力を引いて33地点で受けるのではなく、同等の推進力で対抗しているのである。ブランコがギシギシ鳴り始めている。これが羽生将棋の醍醐味。
45=36歩。妹の反発をたしなめる。
46=同銀。これで1歩得でさらに駒アタリ奇数番1。
47=58金。島の苦しい受け。ここで24歩と合わせても同歩同銀に27歩と飛車の頭をたたかれる。公園で妹に平手打されてはお兄さんの立場もない。
48=14歩。兄貴。ひるんだな。
49=26銀。突然妹がスケバンとなり慌てるお兄さん。ブランコで体がくっつく。これで銀と銀のお見合い。この形は名称が欲しい。金と金が逆さにくっつくと険悪だが銀同士なら仲が良い。編み物用語が似合いそうである。これはふたつのX文字が重なった力関係となる。エックス銀でいかがであろう?
50=24歩。追撃。
51=16歩。島の緩手1。
52=45歩。見事な展開。これで角筋開通。ブランコの力が開放状態となり風に髪がなびく。次に44銀或いは64銀と進出すればあの55歩の力関係が中和する。
53=79角。島の緩手2。これは24地点の歩を狙う直接手だが取られても痛くない。逆に壁形である。
54=44銀。これで最初に先手に奪われた屈辱の55地点の力はすべて後手が掌握することになった。羽生は島の緩手により逆転したということである。
55=37歩。いつの間にか中央の勢力図が入れ替わっていることに唖然とする島。ここで女々しい37歩。たった1枚しかない歩を桂馬が跳ぶ地点に埋めるとは誰が見てもおかしい。よく見ればあのお兄さんはいつの間にかブランコに座っている。そう。立ってブランコを漕いでいるのは妹の方であった。
いかがであろう?
将棋の逆転とはこのようなものである。力学的には二人乗りの空中ブランコショー。
56=25銀。銀は引く。これで2筋の力関係に一時的に戻る。5筋を掌握しているのは先手。ここで2筋まで後手に掌握されては先手は勝てない。同銀同歩で清算し25同飛で1歩損を解消する。
60=23歩。ここで妹はしおらしく「兄さん」と呼んでいる。しかし局面が落ち着いたと思ってはいけない。後手は序盤から繰り広げてきた55地点の相続裁判に勝ってすでに55歩の権利をいつでも行使できるからである。
61=28飛。島は耐える。他に手がないからである。
62=35銀。ここで羽生は55歩とするべき。それが流れである。この35銀は2筋へも圧力をかけようとするナイモノねだりである。
ブランコの原理では前進と後進しかない。将棋は二人乗りのブランコである。前進と後進が双方逆である。交互に力を入れたり抜いたりできる。それでブランコの揺れ幅が変動する。先手は立っている為に力を入れやすい。後手はいつしか先手と立場を入れ換えて今度はブランコに立っていたはずである。グイと55歩に力を入れれば後手が主導権を掌握したまま終盤へ向かうはずであった。
この35銀はブランコを横に揺らす手である。
このようなことはよくある。ブランコを横に揺らす子供。
アレを自分の子供にやられると親はやめなさいと言うであろう。ましてや同乗しているお兄さんなら「バカ」と言うであろう。
63=36歩。島も羽生に向かって「バカ」と小声で言っている。

まだ先は長い。この辺にしておこう。本稿で明らかになったことは5筋と2筋のブランコの関係図である。2筋が収まって5筋のブランコに回帰した時に先に駒アタリ奇数番1を掌握した後手が有利となった。


ブランコの原理1 向かい合う二人乗り 第二期竜王戦  No: 2549 [返信][削除]
 投稿者:マシュダ一家  03/09/22 Mon 01:58:11

島研総帥が初代竜王となると翌年の挑戦者は島研の裏番長羽生であった。このシリーズをサンプルにしてブランコの原理を展開して行く。
では開始。

開始日時:1989年10月18日&19日
棋戦:第2期竜王戦第1局
戦型:急戦矢倉
場所:神奈川県「川崎市民プラザ」
先手:島朗 竜王
後手:羽生善治 六段

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6二銀
▲2六歩 △4二銀 ▲4八銀 △5四歩 ▲7八金 △3二金
▲6九玉 △4一玉 ▲5六歩 △5二金 ▲3六歩 △4四歩
▲2五歩 △3三銀 ▲3七銀 △4三金右 ▲4六銀 △8五歩
▲6六銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8二飛
▲3五歩 △同 歩 ▲同 銀 △3四歩 ▲2四歩 △同 歩
▲同 銀 △同 銀 ▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △5三銀
▲1五銀 △3五銀 ▲3六歩 △同 銀 ▲5八金 △1四歩
▲2六銀 △2四歩 ▲1六歩 △4五歩 ▲7九角 △4四銀
▲3七歩 △2五銀 ▲同 銀 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩
▲2八飛 △3五銀 ▲3六歩 △同 銀 ▲3七歩 △2七銀打
▲4八飛 △6六角 ▲同 歩 △3九銀 ▲4九飛 △3八銀不成
▲3九飛 △4七銀上不成▲5九飛 △4六歩 ▲同 角 △5八銀不成
▲同 玉 △4七金 ▲6七玉 △4六金 ▲7七玉 △4七銀成
▲7一角 △7二飛 ▲2六角成 △4四歩 ▲2二歩 △同 金
▲6一銀 △8二飛 ▲5二銀打 △3二玉 ▲4一銀打 △3三玉
▲4三銀成 △同 玉 ▲5二銀左不成△3三玉 ▲1七桂 △2四歩
▲2九飛 △4五金 ▲4三金 △2三玉 ▲4四金 △5六金
▲2五歩 △1二玉 ▲2四歩 △5七角 ▲8八玉 △2四角成
▲3六馬 △2五歩 ▲4五馬 △5七成銀 ▲3四金 △同 馬
▲同 馬 △2三銀 ▲同 馬 △同 金 ▲3二銀打 △2四金
▲2五飛 △3三金 ▲2四飛 △同 金 ▲2五歩 △4八飛
▲3四角 △2三歩 ▲同銀成 △同 金 ▲同角成 △同 玉
▲2四金

まで139手で先手の勝ち

5=77銀。ここで角道を遮断する77銀は森下システム登場まで当然のように指されてきた。先手は急戦矢倉を指したいのである。この銀は単なる守備駒に留めずに66銀と進出する攻撃手に逆行相転化できるからである。展開次第で77銀は逆行連動手となる。
7=26歩。77銀を逆行連動手とする遠大な計画の手始めはこの飛車先歩を突くことである。森下システム以後この歩は島にまでオールドファッション呼ばわりされているが、それは島自身77銀とこの歩の意味を正確に把握していなかった証しである。
11=78金。先手の不満はここで78金としなければならないことにある。後手が54歩と突いたからには56歩としたいのである。前年の竜王戦では米長の急戦矢倉を封じるために島は逆に54歩とは突かなかった。ここで後手に先に突かれると先手は位を確保するために56歩と突き返したい。ところがそれでは逆に後手からの急戦矢倉に主導権を与えてしまう。ここで先手が駒アタリ予備1を後から作るということが問題なのである。
ブランコの原理によりこのような地点をブランコ前進とブランコ後進と表記する。ここで先手が56歩とするとブランコ後進となる。森下システム全盛期には先手矢倉が77銀ではなく66歩として先に56歩と突くようになった。これは11手めの78金が不満だからである。ここで56歩とできないならば、先に56歩と先手は突きたい。その意味を理論的に説明することが連盟棋士にはできなかった。だから矢倉は難解と思われてしまうのである。ここは一言で済む。将棋とは5筋が完全対象形なのである。だから56歩と54歩は同等に力が働く。そこでこう説明するべきである。
「先に5筋を突く=ブランコ前進運動である」
これならば子供にでもわかる。ブランコの前進運動とは力を入れることである。将棋ならば主導権を握る推進力となる。
15=56歩。互いに金と玉を左に固めここで先手はようやく56歩が突ける。これが「ブランコ後進運動」である。ブランコ後進運動とは自然の重力を利用して前進運動の力を反転させることである。将棋で言えば相手が主導権を握ろうとする推進力を反転させることになる。ここが今までの解釈と全く違う。
16=52金。56歩の解釈を巡ってこの16手めはロクな説明をされてこなかった。なぜこの地点を連盟棋士は簡単に説明できなかったのであろう?
52金とは受け専門の単一手である。この一手によって15手めの56歩がブランコ後進運動からブランコの前進運動に逆行相転化しているのである。
不思議であろうか?
我々も驚きながら書いている。ここに書くことは駒アタリ奇数番の法則に継いで将棋史始まって以来の革命的な理論となるかもしれない。駒アタリ奇数番の法則も革命的であった。あの時も我々はこのシンプルな理論で全てが説明できることに自ら感動を覚えた。今回のブランコの原理はそれを上回るかもしれない。それは最後まで書いてみないとわからない。
では最初に誰にでもわかるようにブランコの原理を視覚的に延べよう。
「将棋とは向かい合う二人乗りのブランコである」
驚いたであろうか?
一人だけで乗るブランコならば自力と重力が交互に作用する。ところが二人乗りのブランコはそれが二重になっているのであった。この原理で島羽生戦を説明してみようというのが本稿である。どうなるか我々も楽しみである。


なぜ北浜の解説は優秀か   No: 2548 [返信][削除]
 投稿者:マシュダ一家  03/09/21 Sun 21:11:39

本日のNHK杯は解説の方が際だっていた。将棋の中身は田村のヤンキー将棋でありゲロがでる。なぜ受けられないのか?田村必勝がこのザマでは完全に心理戦敗北である。このような精薄児相手に先崎の素晴らしい74歩の醍醐味を絶賛しても豚に真珠かもしれない。先に金上がりをわざとやらずに先崎は74歩を突いて挑発しているのである。
なぜ北浜の解説は素晴らしいか?
それは指し手を決して先読みなどしないからである。対局者が指した手の意味を全て解説するように心がけている。これが世間一般にわかりにくいのは指し手のアテッコが将棋の醍醐味と思われてしまったからである。
このような風潮をつくったのがコバケン達までの世代である。NHKは最近それに気がついたのでコバケンなどはもうテレビにださない。
NHKは指し手のアテッコを千葉を使ってわざとやっている。千葉が先読みしてそれがアタリなら大受け。ハズレでも女流だからと笑える仕組み。いかに指し手のアテッコが女々しい芝居かを視聴者に理解させる為のヤラセである。
千葉のオマヌケ変化も北浜は「なるほど、それで手を稼ぐと」などとフォローする。将棋には意外な手が有り得るということを常に畏怖として感じているのが北浜の類まれなキャラクターである。竜王戦での解説でも藤井三浦最強コンビに継いで北浜解説は興味深かった。大介などよりはるかに参考になる。彼の畏怖の在り方が参考になるのである。
感想戦は相変わらずである。どこに24銀が出てくる局面があるのであろう。先崎にだまされたということである。