竜王戦決勝トーナメント
MashudaBBS2003.07.23-
竜王戦決勝トーナメント準々決勝の中継森内−木村戦も王位戦第2局初日と同日に行なわれていた。相変わらず足を引っ張りあうスケジュールである。このようなことが今後何度も続くようであればいらない棋戦は淘汰するべきである。中身がない将棋が増えるだけとなる。木村VS森内も申し合わせたように相掛り十字架銀となった。後手の森内は羽生のように行方の真似はしない。木村はサンドバックにされた。見るも無残な収束。木村はやはり一昨年の羽生との挑戦者決定戦の第3局が全てであった。
対局日:2003.07.29
先手:木村 一基 七段
後手:森内 俊之 九段
▲2六歩 ▽8四歩 ▲2五歩 ▽8五歩 ▲7八金 ▽3二金
▲2四歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽2三歩 ▲2八飛 ▽8六歩
▲同 歩 ▽同 飛 ▲8七歩 ▽8四飛 ▲3八銀 ▽9四歩
▲9六歩 ▽3四歩 ▲2七銀 ▽4一玉 ▲3六銀 ▽3三角
▲7六歩 ▽2二銀 ▲1六歩 ▽6二銀 ▲6九玉 ▽5四歩
▲1五歩 ▽5二金 ▲5八金 ▽7四歩 ▲4六歩 ▽4二角
▲6六角 ▽8五飛 ▲8八銀 ▽7三桂 ▲8六歩 ▽同 飛
▲2五銀 ▽5五歩 ▲3四銀 ▽7五歩 ▲3六歩 ▽3八歩
▲同 飛 ▽3三銀 ▲8七歩 ▽8四飛 ▲3三銀成 ▽同 桂
▲2八飛 ▽3八歩 ▲3七桂 ▽3九歩成 ▲4八金 ▽6五銀
▲7五角 ▽同 角 ▲同 歩 ▽5六歩 ▲5八銀 ▽3八角
▲2五桂 ▽同 桂 ▲同 飛 ▽4九角成 ▲同 金 ▽同 と
▲同 銀 ▽5七歩成 ▲5八歩 ▽5六と ▲7四歩 ▽同 飛
▲7六歩 ▽5五桂 ▲5九桂 ▽7六銀 ▲7七歩 ▽6七銀成
▲6八歩 ▽7八成銀 ▲同 玉 ▽6四飛 ▲7九銀 ▽7六歩
▲同 歩 ▽8五桂 ▲8六歩 ▽7七歩 ▲8七玉 ▽8八歩
掛け値無しの永世十段中原がその亡霊である竜王戦本戦に登場したこと自体が恐ろしい。中村は藤井システム。それを無視して平然と穴熊に組める中原に恐怖を感じない者はいないであろう。中村の29手め▲6六銀がその傷痕を物語る。擬態イビアナへの対策ではない。中村が剥き出しの闘志を見せつけて中原に▽7四歩を突けと強制している。獅子となった中原相手に居玉で戦闘を挑む者はいない。そして挑発に乗らずにビッグ4で平然と先手を見守る永世十段。
中原の床の間の奥行きは闇である。少し前はかび臭かった。今ではそこに風が吹いている。新築の木組みではない。今こそ豊穣の芳香を放つ往年の桧舞台。
54手め▽4五歩。修羅場の底を知り尽くした男は自玉を直撃する角筋など気にせずにこの歩が簡単に突ける。狙いは▽2四角。これで中村は昨年までの受ける青春へフィードバックしてしまった。今年の狂気の中村はすでに▲6六銀で恋しい眼鏡を拭き始めていたのであった。
78手め▽2四桂。これがなんと香を取らせた時に仕方なく跳ねた13桂馬と連動したV2固め。この13桂馬が即詰みに関与するような寄せを誰が構築できるであろう?中原の奇跡の桂馬が復活となる。82手め▽3六桂。その至芸に痺れる。同玉は57歩成から76飛の十字飛車。84手め▽4八銀。蟻地獄の漆黒銀。36玉-49銀-同銀の二枚替えを中村が敢行すると28角打で次に37金打の詰めよ。ここであの13桂馬が玉の退路を阻止している。しかも28角打は19香取りとなる。そこで中村は命の香車を先に逃がしたが今度は王手飛車を喰らって闇夜でカビと心中。
開始日時:2003/07/22(火)
終了日時:2003/07/22(火)
持ち時間:各5時間
棋戦:竜王戦本戦準々決勝
戦型:四間対イビアナBig4
先手:中村 修八段
後手:中原 誠永世十段
▲7六歩 ▽8四歩 ▲7八銀 ▽3四歩 ▲6六歩 ▽6二銀
▲1六歩 ▽5四歩 ▲6七銀 ▽4二玉 ▲6八飛 ▽3二玉
▲3八銀 ▽5三銀 ▲5八金左 ▽5二金右 ▲1五歩 ▽3三角
▲4六歩 ▽8五歩 ▲7七角 ▽2二玉 ▲3六歩 ▽1二香
▲3七桂 ▽4四歩 ▲6五歩 ▽4三金 ▲6六銀 ▽7四歩
▲4八玉 ▽1一玉 ▲3九玉 ▽2二銀 ▲5六歩 ▽3二金
▲4七金 ▽4二銀 ▲2八玉 ▽3一銀右 ▲5五歩 ▽4二角
▲8八飛 ▽8六歩 ▲同 歩 ▽7三桂 ▲5四歩 ▽同 金
▲1四歩 ▽同 歩 ▲1三歩 ▽同 香 ▲2五桂 ▽4五歩
▲同 歩 ▽4六歩 ▲1三桂成 ▽同 桂 ▲4六金 ▽2四角
▲4八香 ▽5六歩 ▲5八歩 ▽6五桂 ▲6八角 ▽3三角
▲6七歩 ▽2四角 ▲2六歩 ▽4四歩 ▲同 歩 ▽4五歩
▲6五銀 ▽同 金 ▲4五金 ▽6八角成 ▲同 飛 ▽2四桂
▲2七玉 ▽8六飛 ▲8八歩 ▽3六桂 ▲4六香 ▽4八銀
▲1二歩 ▽同 玉 ▲1四香 ▽4九銀不成▲同 銀 ▽2八金
▲3七玉 ▽5九角 ▲3六玉 ▽6八角成 ▲2五桂 ▽1七飛
▲1三香成 ▽同 銀 ▲3四金 ▽5五金
山崎は強引に角換りを高野に押しつけ強引に力戦に持ち込んだように見えるが、実に綿密に計算されている。飛車先不突きにより後手から角交換しても先手が飛車先を二手突いた分と相殺されるように仕向け、桂馬を跳ねないことで中飛車の構想を実現させている。その構築美は康光を彷彿させる。高野は当初先手番で負ける気はしなかったであろう。▽4二金右は後手特有の千日手手順への裏口入学であるように見えるが先手が正確に反撃しないと中央突破の双頭手となる。高野は勝ちを意識しすぎて腰を引いた為に豹変せざるを得なくなった。その勢いを途中で静止できなくなり一挙に負けにした。飛車切りは可能であるが最初の攻防角=▽5四角を打つところまで山崎は研究済みである。飛車先不突きと桂馬を跳ねないことでこの攻防角が成立している。山崎の勢いは誰にも止められないようであるが、勢いは逆に読みやすい。むしろ山崎の柔軟さがそこに隠されてしまっている。だから誰もだまされる。二番目の攻防角▽3五角のクロスカウンターで高野はマットに沈む。
開始日時:2003/07/14(月)
終了日時:2003/07/14(月)
棋戦:竜王戦本戦1回戦
戦型:角換り後手中飛車
先手:高野秀行四段
後手:山崎隆之五段
▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽3二金 ▲2五歩 ▽8八角成
▲同 銀 ▽2二銀 ▲7七銀 ▽3三銀 ▲3八銀 ▽6二銀
▲7八金 ▽9四歩 ▲9六歩 ▽6四歩 ▲1六歩 ▽1四歩
▲4六歩 ▽6三銀 ▲4七銀 ▽4二玉 ▲6八玉 ▽5二金
▲7九玉 ▽7四歩 ▲5六銀 ▽3一玉 ▲5八金 ▽4二金右
▲3六歩 ▽5二飛 ▲6六歩 ▽5四歩 ▲8八玉 ▽5五歩
▲6七銀 ▽5四銀 ▲3七桂 ▽4四歩 ▲4五歩 ▽同 歩
▲1五歩 ▽同 歩 ▲3五歩 ▽同 歩 ▲4五桂 ▽同 銀
▲6三角 ▽5四角 ▲7四角成 ▽3六歩 ▲1四歩 ▽3七歩成
▲1八飛 ▽1四香 ▲5六歩 ▽3四銀引 ▲1二歩 ▽2二玉
▲1一歩成 ▽同 玉 ▲1五飛 ▽同 香 ▲3五歩 ▽2五銀
▲1五香 ▽1四歩 ▲3四香 ▽6二飛 ▲3三香成 ▽同金右
▲3四銀 ▽同 金 ▲同 歩 ▽2七角成 ▲5三金 ▽9二飛
▲8三馬 ▽2二玉 ▲9二馬 ▽同 香 ▲5二飛 ▽4九飛
▲9二飛成 ▽3五角
の末谷川勝利、と道新は報告している。序盤から一気に終盤の切り合いに突入する昨今の傾向と較べると、確かに中盤が長かったが、小生の如き古い将棋ファンにはこれこそがプロの将棋である。陣形の不備に苦しみながら決め手を与えずに反撃に繋げて行こうとする谷川と盤上を制圧しながらこじ開けて行く羽生の応酬。大変見応えのある中盤戦であった。
気のせいか、谷川は単刀直入・一気呵成路線を変更し、読みの巾を拡げて曲線的な指し回しを心掛けているように見える。かといって弱気に堕すること訳でもなく、一貫して強い姿勢と冷静さを保っている。これはしかし、本人が光速ノートで披瀝している指し方そのものの修正といった心掛けに因るものではなく、むしろ、心境・ものの捉え方といった無意識の部分に起因する変化かも知れない。そうした深みからじわりと生じた何ものかではないか。今後の彼の将棋がこの上なく楽しみである。
羽生は勝手の違いを感じたのではないだろうか。3七銀は当然の一手かも知れないが、あの辺りからは素人目にも形勢が傾いたように見えた。難解な中盤戦を制する第一人者である筈の羽生の判断をも狂わせるような何かが谷川から発せられていたに違いない。人間洞察に優れた羽生だから一層それを感じ取ったかも知れない。刻々と更新されるライブ画像の羽生の後姿にも彼の戸惑いが映し出されているように思われた。