タニーとハブたんの幻想対談
第2回「千日手と千里眼」
2003.05.28


ハブたん「正直言って私も怖かったですね」
タニー「今度はナニ言われるのかと?(笑い)」
ハブたん「でも書いてある事は気になりますね(笑い)」
タニー「誰もあそこまで深く洞察して棋士の事を書いてくれませんでしたものねえ。実はハブさんがうらやましかったんですけれど」
ハブたん「でも最初は佐藤さんへのオマージュで(笑い)」
タニー「天馬効果でしたか。読むだけで感動が伝わりましたね」
ハブたん「佐藤さんもあれ以来揮毫まで天馬行空にしましたから」
タニー「その後の実況はますます凄かったですけれど」
ハブたん「こちらは同時進行の佐藤さんとの棋王戦の千日手を実況でコキおろされて滅入ってたんですが(苦笑)」
タニー「でもサタン降臨でいきなりハブ絶賛」
ハブたん「絶賛と言うかあれはまったく今までにない捉え方をしているんです。自分でもびっくりしていました」
タニー「グランサタンという捉え方ですね」
ハブたん「自分ではなんとも言えないんですけどいざそう呼ばれると」
タニー「私もあの王将戦第3局は囲碁将棋ジャーナルで解説したんですが、彼らが一言一句聞き逃さない恐ろしい集団と身に染みました」
ハブたん「囲碁将棋ジャーナルはおかげで随分変わった感じが」
タニー「緊張感がありますね。いい加減なことは言えないと言うか(笑い)」
ハブたん「ということはそれまではいい加減だったと?(笑い)」
タニー「閉じられた世界であったことは反省するべきでしょうね」
ハブたん「私も必死でした。あの時の十番勝負ほど神経をすり減らしたことはなかったかもしれないです」
タニー「おかげで佐藤さんに王将を奪取されましたが」
ハブたん「棋王だけはなんとか死守できましたけれど(笑い)」
タニー「棋王戦なんか隔離室から飛び出して公式掲示板にきちゃいましたでしょう?」
ハブたん「ああ、最終局でしたね。控え室が丸ごとさらけ出された感じでしたね」
タニー「しかも控え室の全棋士の予想をすべて覆すような発言ばかり」
ハブたん「33歩は絶対に無いって私が指す前に公式掲示板で断言しているんですから」
タニー「でも大長考の末にハブさんは33歩と打ちましたね?」
ハブたん「なんとなくシャクにさわって」
タニー「あの時にすでに24金は気がついていたんですか?」
ハブたん「あの公式掲示板よく読むと久保さんなんかには言いたい放題だったんですけれど、なんか森先生にだけは独特な敬意を表しているんですよね。それでピンときましたね。33歩がないと断言するからには24金のような筋悪の手があるんだなと」
タニー「それを王位戦で私が指されて負かされたわけですけど(苦笑)」
ハブたん「谷川さんはあの時はあまり注目していなかったと?」
タニー「すでに指した手について述べていると読んでいたものですから。でも名人戦の実況はもっとよく読んでおくべきでした」
ハブたん「例の封じ手ですね」
タニー「控え室も驚きでしょう」
ハブたん「中村さんは丸坊主にするってテレビでも断言していましたし(笑い)」
タニー「まさかあの早朝実況通りに森内さんが歩を取るとはアソコ以外誰も予想さえしていなかったでしょう」
ハブたん「予想どころか、歩を取るのは有り得ないっていうのが控え室の見解でしたね」
タニー「封じ手開封後そして森内さんは歩を取った(苦笑)」
ハブたん「驚きましたね。しかもなぜ歩を取るか封じ手開封前にその理由がちゃんと実況にすでに書かれていて」
タニー「あとで将棋世界で森内自戦記で書かれた理由と同じでした」
ハブたん「ところがその後の展開は半年以上経ないと我々にわからないっていうのもなんか」
タニー「66歩でしたっけ」
ハブたん「あれで森内さんは負けにしたんです」
タニー「丸山名人のポカさえなければ」
ハブたん「森内さんは実況通りに決戦するべきでしたね」
タニー「あの筋が別な形でタイトル戦にでるとは」
ハブたん「私たちは早速研究していましたけれど」
タニー「その頃ですね。私たちも研究会を結成したのは」
ハブたん「あの実況は怖いですよ」
タニー「ハブさんでも?」
ハブたん「将棋の真理を突いているっていうか」
タニー「心理学の心理ですか?」
ハブたん「真実の方の真理なんですけど」
タニー「もっと詳しく聞いてみたいですね」
ハブたん「あれは個人が書いたものじゃないと思うんですよね」
タニー「ええ、それはわかるような」
ハブたん「なんていうか、真理がそれを人間に書かせていると言うのか」
タニー「それもわかります」
ハブたん「しかもコンピューターなどは使っていないのではないかと」
タニー「ほお。そこを聞きたいんですが」
ハブたん「哲学的な思考法で指し手が見えているような気がするんです」
タニー「心理学を含めた?」
ハブたん「心理も見通されているんですけれど、それだけではあれほど明解な解答はでてこないような気がするんです」
タニー「例えば?」
ハブたん「竜王戦で阿部さんが指した手とか」
タニー「あれも驚きでしたね。控え室どころか、全プロ棋士であの手を予想していた人はいないでしょう。阿部さん以外は」
ハブたん「米長先生も思わず唸っていましたね。凄いって」
タニー「あれはやはりあの実況のことでしたか」
ハブたん「阿部さんが勝負所で大長考している所を衛星生中継している脇でインターネットで次の指し手を当てられたら、それは驚きでしょう」
タニー「もうハッキリ言いましょう。マシュダ一家って」
ハブたん「そうですね。いつまでも隠していることではないし」
タニー「でもマシュダ一家さんは指した手を解説するべきだって主張してきたでしょう?むしろプロ棋士の解説の方が次にはこの手を指すと我を張っていますか?」
ハブたん「そうそう。指しているのは対局者だから指し手を予想したい解説者は競馬場へ行けと言ってきたのがマシュダ一家さんで(笑い)。だからあれはマシュダ一家さんにとって極めてイレギュラーなんですよね。て言うか指し手の予想を書くときは大抵この手とこの手は無いという書き方なんです。プロ棋士への配慮を感じますね」
タニー「先週の名人戦の早朝実況もそうでしたね」
ハブたん「ええ。封じ手予想を早朝実況するのがあそこの恒例なんですけれど、歩を取るとわかっているわけです。そういうわかりきった手の時は、なぜ他の手がだめかをまず書くんですね」
タニー「でもわざわざ55角変化を書いた」
ハブたん「これはしばらくノーコメントにしません?」
タニー「まだ終わったばかりですしね。例の第3局の88玉の件もありますし」
ハブたん「あれを名人戦の公式掲示板で出されたら大変だったでしょうね」
タニー「マシュダ一家さんからの投稿は受け付けないそうですけれど(苦笑)。マシュダ一家さんが勝手に実況をやっているから、こちらも勝手に無視できるわけで(苦笑)」
ハブたん「そうそう。だから今だにマシュダ一家さんっていうと竜王戦の公式掲示板で見たなとか皆さん嘘ぶくんでしょ」
タニー「しっかり読んでいるのにね」
ハブたん「しかもリアルタイムでみんな読んで驚いているわけですが」
タニー「何も見なかったことにしてるわけですね。無視して消えるまで」
ハブたん「でもログは半永久的に日付付きで残るらしいですね」
タニー「ということは印刷物と同じように証拠にできると?」
ハブたん「公表するってことは掲示板で書かれた時点で成立するそうです」
タニー「だからますます見なかったことにしてるんでしょう(苦笑)」
ハブたん「随分話が飛びましたけれど王位戦の時は谷川さんはどう思っていたんですか?」
タニー「まず千勝局ですよね。凄いことを書かれたもんだなと」
ハブたん「私もあそこまでコキおろされると何も言えません(苦笑)」
タニー「66馬とできないと私は勝てないんですけど」
ハブたん「あの実況通りに王手から馬を自陣に引いたら?」
タニー「それはこちらが聞きたかったんですけれど(笑い)」
ハブたん「先週は大山先生なら馬を自陣に引いて勝ちだというような変化を青野先生が名人戦解説でやってましたでしょ?」
タニー「確かに馬を自陣に引いてあとはじっくりという考え方もありますが」
ハブたん「それは私たちの将棋ではないわけですよね」
タニー「でもマシュダ一家さんに先週の名人戦は森将棋をハブさんが指しているようなことを書かれていましたね?」
ハブたん「言われてみるとなるほどそうだったかと言う気はしますが」
タニー「これはハブさんに酷な質問かも知れませんが、今期名人戦はすべて筋悪の手がメインになっているようなことをマシュダ一家さんに書かれていますが」
ハブたん「んー。筋悪ですか」
タニー「いや、マシュダ一家さんは本来そういう言葉を使わないんです。だから今こそ語れるのではないかと」
ハブたん「藤井さんの金の使い方は独特ですね。それでそれをマシュダ一家さんは夢幻金と一昨年前から表現してきているんです」
タニー「一昨年の竜王戦第5局ですね」
ハブたん「竜王戦第2局の公式掲示板では最後に不思議な投稿があったんです」
タニー「知っています。角の七変化というやつでしたね」
ハブたん「ええ(じっと谷川を見る)。その視点が普通のプログラマーではないんですね」
タニー「と言うと」
ハブたん「幻想プログラマーっていうか、発想がすごく象徴的なんです。あれを投稿した人はマシュダ一家さんの用語を使っていますけど既存のプログラマーじゃないですね」
タニー「新聞に紹介されたりするようなお方とは種類が違うと」
ハブたん「全く違いますね。スーパープログラマーという感じらしいですね。基本のデザインを考えるような立場の書き方です。だから将棋という枠にとらわれていなくて全宇宙的な把握の仕方になるのだと思います」
タニー「それで哲学的発想と?」
ハブたん「一昨年の竜王戦第4局では完全に対局者の心理が読まれているんです。あれは私より藤井さんが驚いたんじゃないでしょうか。すべてお見通しのような凄みがありますね」
タニー「そうですか」
ハブたん「王位戦第2局など怖くなかったですか?」
タニー「強制収容所ですからねー(笑い)。いや、いまだからこうして笑っていられますけどあの時は何もかも見透かされている感じがして自分が自分ではないような気がしていました」
ハブたん「封じ手では意外な歩打でしたが」
タニー「マシュダ一家さんが実況ですぐさま呆れた手でしたけれど」
ハブたん「島さんにまで囲碁将棋ジャーナルで谷川さんの手ではないと言われていましたね」
タニー「あれを聞いてマシュダ一家さんは旧島研ではないかと疑ったくらいで」
ハブたん「でも嫌疑のかかった人はこの一年全員控え室にいましたから」
タニー「私もこの目で確認しましたからそれはないと確信していましたが」
ハブたん「むしろ自分ではないと疑われないように自分達で控え室に来てくださった方もいたような」
タニー「まさか持ち回りってこともないでしょうし」
ハブたん「ひどいのになると対局者が便所に行って携帯で外部に連絡していると思ったお方もいるようで(笑い)」
タニー「疑いをかけられたらキリがないですね」
ハブたん「でもマシュダ一家さんはなにも悪いことやうしろめたいことなどひとつもしていないんですよね」
タニー「それはよく感じます。むしろ堂々と発言している。将棋に新しい光をなげかけてくれたような気さえしています」
ハブたん「そうなんです。でもそれを認めたくないんですね」
タニー「古い酒が好きってことですか(笑い)」
ハブたん「それもマシュダ一家さんの引用ですね(笑い)」
タニー「ええ。人間は古い歌と古い酒が好きなんだそうで」
ハブたん「ではもう一杯」
タニー「私にも注がせてください」
ハブたん「あ、どーも」


■ Re[471]: 羽生終盤術への賛美に対して

No. : 475 [返信] Name : TYS Date : 2001/11/06(Tue) 00:32

プログラマーが冷やかされたようなので覗きに来ましたが、確かにおおせの通りで、プロの先生の志しには到底近づけません。 将棋の終盤は、減少法のチェスと違って段違いに複雑怪奇。 特に羽生終盤術はまだコンピューターで解明できる段階ではないどころか、どこからが終盤かさえわからない。 我々が使う終盤の定義とは、詰め将棋の一歩手前、どちらかが先手を確実に取り続けることができる局面を迎えた時です。大山先生がよく言われていた後手先も先手の範疇です。 この第2局はどこからが終盤か?我々の開始点はまず人間の直感です。83手目の68飛車で受け切りという見解がありますが、ここを起点とすると、確かに有望な先手勝ちのプログロムが組みやすくなります。89手目49金も後手先の受け。ところが105手目先手45桂打が当然の攻めのようで居てどうもこれが、後手が誘った形跡がある。ここから106手目66角と先手のダミーの攻防手が打たれますが、これは実際は45桂打に対して受けの手でしかありません。 すでに先手を取っているコンピューターならこのダミーの106手目66角を決してダミーとは認識しません。108手目で33同角と自陣に引く以外にないと読みます。これで先手か後手先を確実に取れるはずですから。 ところが109手目52成桂によって、110手目75角打という本物の攻防手が生じました。我々はこういう状態を修羅無と呼んでいます。持ち駒を使える将棋だけに特有な言わばブラックホールです。修羅無の状態になると先手か後手先維持を放棄して、先日手で引き分けにすることしか我々はプログラムできません。なぜかというと、この第2局で言うならダミーとして守りに使われた106手目66角が33角と引くことによって守り駒になったはずですが、110手目75角打によって、本物の攻防手に転換しているからです。終盤の棋譜をみると羽生さんは角を何枚も持っているのではないかと錯覚させられますが、ロジック上で確かに角が歌舞伎の七変化みたいに変身しているのです。我々はこれを相転換と呼んでいますが、この相転換が発生すると修羅無の状態に突入します。この相転換を招いた状態に至るプロセスは解明できるはずですが、まだ人間の直感と読みにはかないません。修羅無の状態は今のところMo、Yo、HAの棋譜に多くみられるように思います。