寄生虫効果1 UP2002.2.18
「あの方たちはどういう意味をもつのでしょう?」
「精神の寄生虫」
「精神の寄生虫?」
「寄生虫という言葉は、かつて悪魔のように思われていた。フィラリア症が典型」
「フィラリア症?」
「蚊が運ぶフィラリア菌で象皮病や陰嚢水腫になってしまう恐ろしい病気。足が肥大化したり、金玉がばかでかくなる」
「金玉がばかでかくなるって、サッカーボールぐらいですか?」
「じっちゃんとこにきた患者は、クッション替りにそこに腰掛けていた」
「自分の金玉に腰掛けるんですか」
「飲み屋の軒先にあるタヌキの金玉は、フィラリア症からきている。最近みかけなくなったな」
「魔よけ効果がうすれたんですかね?」
「日本での最後のフィラリア症感染者は1978年が最後。1970年代は諸々の寄生虫が激減した。寄生虫は線虫、吸虫、条虫の三種類がある。フィラリアは線虫。線虫には盲腸に宿っているギョウチュウというのがいるが、こいつは湿疹をおこす線虫とされてきた。俺たちも、ピンテープを使って毎年学校でギョウチュウ検査をやらされた」
「ピンテープってなんですか?」
「朝、ウンコしたあと肛門にテープを張りつけて、そこに寄生虫の卵がないか調べる検査」
「なんか痛そうですね」
「痛い。しかもウンコつけてしまった時がある」
「それ提出したんですか?」
「その時はピンテープなくしたって言って、保険の先生にもう一枚もらった。また翌朝痛い思いする。しかも肛門に張りつけたあとのピンテープの臭いまで思わず嗅いでしまう。セルロイドとウンコの臭いが混じった臭い」
「それは臭そうですね。でも寄生虫は絶滅したんですね」
「絶滅はしない。激減しただけ。70年代は寄生虫の受難時代。ところが寄生虫が激減したときに、今まで鳴りを潜めていた病気が急増した」
「鳴りを潜めていた病気?」
「アトピー、花粉症、小児喘息。そこで藤田絃一郎教授らがその現象に着目し、寄生虫にはアレルギーを押さえるESCがあることを発見した」
「ESC?」
「パソコンのエスケープキーと同じ頭文字。機能も同じ。寄生虫がもたらすESCが変型IgEをつくり、マスト細胞となってアレルギーを押さえる。これが寄生虫効果」
「彼らにもその寄生虫効果があるんですね?」
「精神に巣くう寄生虫として健全な魂に寄与するかもしれない。その仕組みは今のところ形而上的なものだが、そのうち意味が明らかになる」