NHK杯戦2002.2.3

藤井猛VS木村一基

藤井システム木村パニック

温泉芸者の花電車

マシュダ談 2002.2.5. 付録名人戦の大伽藍  UP2002.2.6. 5:00


「ついに幻の竜王戦対決です!」

「木村も人生最大の後悔。まさかあの竜王戦挑戦者決定戦第三局が逆転されるとは。温泉気分で招いた頓死」

「あの一局に勝っていたら今ごろ竜王になっていたかも?」

「それがこれから証明される。どのくらいの差があるのかね」

「藤井前竜王も今年は好調の兆しが」

「羽生ショックは相当つらかったろうに。第五局投了の瞬間が今でも痛々しく蘇る」

「藤井先生の先手番です。NHKの振り駒には作為を感じますか?」

「作為もなにも主催側はやりほうだい。以前にそういうクレームあって一言座席の移動の関係という弁明あっただけ」

「あとで振り駒の様子編集で挿入できないんですかね?」

「面倒なことはせんの。トーナメントの割りつけも演出のひとつ」

「主催側はやりほうだいと?」

「テレビはね。名人戦は新聞社入るから別の意味で突っ張る。対局室の観戦しにきた者がネクタイ締めておらんからと憤慨した名物記者がおった。その記者は観戦客のマナーの悪さを注意してきたなどとと衛星放送で自慢気に語っておったが、その時この記者はセーター着とった」

「自分はセーター着て、他人にはネクタイしてこいって叱ったんですね。さすが名人戦ですね」

「叱るのはいいが、マンマでテレビにでてきちゃいかん。誤解されるだけ」

「新聞社の矜恃と思ってテレビに対抗しようとしてるだけでは?」

「逆。テレビだからって気張らずに普段通りにやりますよという意地が裏目にでただけ。あとで視聴者から厳しいクレームついた一件。テレビでは普段通りが通用せんの。ブンヤはそこわかっておらん。特に文芸部は」

「普段着思考そのままでテレビにでちゃったんですね。対局が終われば相変わらず対局者にズケズケ聞くのは?」

「それはえーんよ。ズケズケ聞かんと対局者は何もしゃべらんからね。むしろもっと突っ込まにゃいかん。竜王戦はみんな紳士すぎて突っ込み足りんくらい」

「記者のキャラですかね?」

「違う。名人戦のような大伽藍のプロの殺し合いとアマも参加できる棋戦との性格の相違。名人戦はその殺伐さが記者達を鍛えたとも言える」

「それでズケズケと聞くんですね」

「ただし最近はロクなこと聞いとらん。部外者やシロウトが聞いた方がましということが多々ある」

「いつ頃から?」

「米長羽生戦の前後からじゃね。米長が全部知っとるよ。当事者はしゃべらんだけ」

「他にご意見ありましたら」

「名人戦対局中の衛星放送解説時間に++がノコノコ出てきてアホ話するの勘弁してもらいたい。ニュースステーションのブンヤより貧相。貧相なのはマナー不感症より見苦しー」

「テレビはむずかしいですね。一見ホンネと感じるものもすべて演出が必要ですか?」

「特に喋りはね。ホンネなんかテレビで語れば即追放。大伽藍記者はもっと殺伐と裏方に撤するべき」

「ホンネはテレビで無理ですか?朝生も?」

「発言者は全員クロウト。発言内容が最初からわかっておる。シロウトは学生でもヤラセ」

「今ふと思ったんですが、NHKは名人戦ほしいんじゃないですか?」

「アホ。本部は新聞社みたいに勤勉じゃないからムリ。面倒なことはせんでオイシーとこだけ貰うのがテレビ。アナウンサーのつけ上がった態度にも出てるがな」

「--------もだめですかね」

「外郭団体ウド貸せば++からもぎとれるかもね。人材の問題」

「順位戦も結構大変ですものね。NHK衛星放送は順位戦最終日のドキュメントも毎年好調ですが」

「絞りたて果汁のオイシーとこ。アホな******はこの殺人大聖堂見て、もちっと努力せんとね」

「それからくらべたら記者さんはまだマシ?」

「そりゃ++と一緒にはできんよ。ただ貧相なのはテレビではマイナス効果。見た目で評価されるだけ。しかも棋界裏話がただの自慢話じゃセミの脱殻同然」


対局開始。(以下/の左は手数)

「もう7手めで16歩です。藤井システムになりました」

「まだわからんね。今の7/16歩と指した藤井の右手、小指が立っておったろ」

「はあ、それがなにか」

「あれは妖しい」

「いいことあったんでしょうか?」

「誘ってるね」

「木村先生8/42玉です」

「ほっほ!木村あの小指の思い出にジーンときたか」

「藤井先生、今度は小指を立てずにビシっと9/15歩です!」

「9手めか。早い」

「木村先生の急戦を封じようと?」

「いやまだわからん。だが早い突きこし」

「54歩-58金」

「意外じゃね。13/58金では78銀とあがりたいが、藤井は誘いの闘志剥き出し」

「木村先生、穏やかに14/52金です」

「15/77角!」

「先受けですか?」

「いや、左銀が79のまま向かい飛車狙い。53銀ではなく42金としたからね。藤井血走っておるね」

「今日の解説は屋敷先生です」

「鈍い刃を駆使する名工か」

「天才では?」

「そう。屋敷の順応性は天才。チューニングが天才的。この角の評価も本質的なこと言っとるね。74歩からすぐには弱い角頭攻められんと。大抵の解説者は飛車先受けの一言で終わり。今日は屋敷にお任せしよっか」

「では屋敷先生が立場上話せなかったことだけ」

「19/48玉は藤井が木村を煽った。お前ごときに正調藤井システムはもったいない!とね」

「木村先生は着々と22玉ですが穴熊ですか?」

「藤井が正調システムはずしたからできる」

「25/88飛で向かい飛車急戦模様です」

「41金が離れておるからね。飛車交換は木村からはできん」

「26/45歩でした!」

「これか!木村やけに素直に囲っておると思ったら、41金は誘い!油断ならんヤツ!」

「飛車先交換しました!屋敷先生は飛車交換もあるかなと」

「そりゃ勉強しとらんからね。ここで飛車交換もあると言えるとこが屋敷の異才たる由縁。大概は無理と考える。屋敷が勉強せんのはこの先入観が邪魔だから」

「やはり85歩を打たされました」

「誰が指しても打つ。屋敷の感覚は先入観をもたない所が長所。惜しい才能。C1にいるべき棋士ではない」

「50/66角」

「こりゃ決まった。木村会心の一局。やったね!」

「録画は編集されているみたいですね。藤井先生の考慮時間が5分もずれてますが」

「やっぱ藤井も長考しておったか。木村にハメられた。ああいうとこ編集したんならテロップで消費時間表示でもしてもらわんと藤井の葛藤がわからん」

「竜王戦なら木村先生、藤井竜王との初戦を飾ったということでしょうか?」

「竜王戦なら藤井は正調で行くじゃろ。お家芸はNHK杯準決勝までとっとくつもりだったのかね」

「56/52香車で61馬からの両取り受けましたが」

「そこに打つか?」

「もったいないと?」

「木村はもう香得。3筋にすぐにでも打ちたい香じゃがな。ここは44馬と引き、銀を守りつつ強く62馬にあてたい」

「温泉気分ですかね」

「あの89の桂馬も馬で取る気じゃろ。贅沢すぎる」

「馬交換後、43地点が空いて薄くされるのが嫌だったんでしょうか?」

「どうも薄いことにコンプレックス感じておるね。藤井は薄くするの得意じゃから怖がっておるだけ。どーせ43銀は浮いておった。むしろ83の飛車を角で狙われる逆転筋にビビッただけ」

「56歩も取られて香得が消えましたね」

「香車が歩と同じでは木村ちょっと情けない」

「でもその隙に桂馬取りました」

「駒得が戻っただけ。手番を藤井に渡した脅威をまるで感じとらん」

「藤井先生、歩で飛車苛めが始まりました!逃げた馬が今度は銀あてです!」

「36に馬が戻っては局面よじれたね。桂香得でも実質桂得では馬の働きといい勝負」

「馬の守りは金銀四枚ですか?」

「そう。そして今の一手で飛車先が貫通して先手が取れるということが一番大きい。馬のデュアル効果」

「64/64歩と受けました」

「もーアホかと。飛車成り怖くて将棋が指せるか!44桂馬となぜ打てん?馬取って王手では藤井も飛車は成れん」

「藤井先生83金と飛車頭に叩きつけました」

「それを待ってたか!こんなんボケ金じゃい!飛車くれたれ!桂馬打て!」

「63馬と逃げたら?」

「飛車で金を食い千切って55馬で勝てる。飛車先が馬で止まるからね」

「71飛車打は?」

「32金と逃げて仕上げの金底歩で鉄壁。飛車一枚では藤井完敗」

「桂馬取って34桂馬は?」

「銀で食い千切って36桂馬のサザンクロス一発でおしまい。44桂の効果」

「66/62飛車と逃げました!」

「もー見てられんな。これで45桂も消えた」

「67/63歩」

「歩しかない藤井に歩で攻められたんでは泣くに泣けん」

「69/72金でまた飛車取りです!」

「どーせなら51とまた逃げたらえーがな」

「木村先生飛車を見捨てて77歩成で飛車にあてて肉薄です!」

「そんなん間にあうかね」

「藤井先生の飛車もピンチです」

「いや!66飛車逃げがエレベーターのF1」

「 54桂馬でまたピンチですが」

「ばっか。そんなとこに打つ桂馬か!藤井得意の飛車使いの芸に惑わされた!桂馬の打損」

「飛車エレベーターF2で下がって馬あてです」

「なんでそこに下がる?96飛車と逃げて藤井優勢」

「94歩とつかれますけど」

「飛車とられるまでの三手で飛車取って先手番を握れる」

「でも69にさがっちゃいました。78馬でまた飛車取りです」

「99に逃げれば飛車を取るまでに二手。一手損したね。まあ木村は桂香を5筋でダンゴにしたから駒得解消で依然藤井優勢。あの桂香は藤井の先行投資」

「でも藤井先生61金と木村先生の飛車とっちゃいましたけど!」

「藤井にもっと早い寄せがあると?」

「飛車取り合って普通に62歩成ですが」

「そりゃ間にあわんだろーに」

「79/67と」

「これでまた逆転!今度はいかん。藤井の見落とし!」

「80/57と!」

「こりゃまいったね。マムシと金攻めでは受からん」

「あれ?木村先生、82/47と金?」

「木村もあせっておるね。せっかくのマムシもったいない。藤井は斜め駒なくて詰めよもかからんから駒重ねていけばすぐ終わりじゃがな」

「馬まで清算しちゃいました」

「もータコかと」

「藤井先生25角です!」

「こんな好位置に攻防手打たれてはまずい」

「木村先生まるで先手がとれなくなりました」

「なんか狂っておるな。今度は42金のベタ打ちか?」

「囲碁の感覚でしょうか?」

「滅茶苦茶じゃがな。まあ逆転はもうないけど」

「木村先生必死の防戦です!今度は102/66桂馬と逃げました!」

「木村パニック踊りじゃね」

「110/33銀です!」

「35金とすりゃ木村楽勝じゃがな。ボケナス」

「114/79飛車打ちです!」

「なんで33歩とせんの?桂馬はずして終わりじゃがな」

「42金では?」

「21玉と気持ちよく遊泳」

「52金-同金-22銀-32玉ですね」

「そこまでやらずに藤井は投げる」

「でも飛車打ちましたけど」

「15歩を忘れとるね。こうなっては攻めたら危険」

「藤井先生69歩です。いいとこに歩が打てますねー。同飛成で今度は銀を当てました!」

「飛車渡したら後手は即詰み!木村いくらなんでもこりゃテレビ向けにワザとやっとるね」

「飛車は65に逃げました。藤井先生14歩と突きました」

「藤井システムの最後の罠」

「同歩では?」

「ええんじゃよ。それで」

「121/35龍です!藤井先生36歩と飛車を叱りつけました!」

「歩で叱りつけられたらたまらんな。ここに桂馬打ちたかったのに一石二鳥の歩」

「34龍と桂馬とりますかね」

「それっきゃない」

「67角で龍飛車の両取りですが」

「飛車切って華々しく勝つつもりじゃろ」

「124/55龍とにげました!」

「こりゃ13歩成で藤井、いい形作りになった」

「127/33銀と打ってまた囲碁になりました。藤井先生35桂までです」

「41玉か35銀で藤井投了かね」

「128/34銀です!」

「ナスがママか?わざと負けるよーな手」

「67角と出て飛車銀取りとなりました!」

「こりゃ凄い!」

「55角と合わせて飛車取り後同角成は?」

「ばっか。22飛車から13手詰め。飛車は渡せん」

「飛車逃げて62歩の叩きです!34の銀を取らないんですね」

「51に逃げられるからね。ここで木村に詰めよがなければ負け。藤井は61歩成で次に23とからの詰めよ」

「取りました」

「49金に角のヒモついておったからね。この角25に打ってから大活躍しとるね」

「その角で34の銀をもぎ取りました!」

「こりゃ今取った銀を51にぶち込んで必死。まー玉の早逃げで木村勝ち。危ないことするね」

「かなり興奮させてくれましたね」

「これがプロの芸。簡単に勝ったのではせっかくテレビにでた甲斐もない。木村やるね」

「木村先生134/49龍と金とっちゃいましたけど!」

「タコ!駒得してる場合か!」

「藤井先生待ってましたとばかりに金で叱りつけました!」

「逃げてられんな。そこまでして見せたいか。木村も凄いヤツ!」

「16桂から木村先生の猛攻撃開始です!」

「まあ詰めよぐらいはかかるじゃろ。51銀打たれるまでになんとかなる」

「28龍に18銀で叱りつけました!」

「木村もよう叱られるね。最初は歩から始まって」

「19龍と逃げました!」

「おい!こりゃワザとじゃないな」

「マジだったんですか?藤井先生51銀です!」

「詰めよ!」

「25桂馬で王手の詰めよ逃れです!」

「同角の一手。逃げたら17角打ちから詰む。ここで先手の詰めよが消えるから、木村最後のチャンス!35銀で桂馬取って勝ちか!」

「146/13香です!」

「アホ!駒渡すだけじゃがな。もーええ。疲れた。こりゃ将棋とは言えん」

「なんでしょうか?」

「温泉芸者の花電車。藤井も笑ってお茶飲んどるよ」

「湯飲み茶わんの音聞こえましたね」

「やはり木村は竜王戦挑戦者決定戦に負けて当然。これじゃ羽生に勝てんはず」


161手にて藤井勝ち。

「大逆転ですか?」

「違う」

「木村先生、切れた切れたと頭抱えていますが」

「そーゆー事自体精神が腐っとる。羽生や康光がそんな臭い芝居テレビでみせっか?黙って身震いしてりゃええ。水ごりでもして出直してこい!」

「でも序盤は素晴らしい戦略を披露してくれました」

「頼むよ木村、ほんと!」