第51回NHK杯戦3回戦7局 2002.01.20.放映
先手森内俊之VS後手中村修
半居飛車穴熊対藤井システム+向かい飛車
湖水に映る逆さ富士 逆さ富士固め
2002.01.20. マシュダ談
「中村は12手めに端歩突くね」
「中村流の藤井システムです」
「13手め57銀が最強手。最も手が広い」
「中村先生しばらく考えて14手めに43銀としました。今朝の早指し戦と同じです」
「福崎は58金じゃったろ。羽生や森内は13手めで最強手。中村そりゃ考えたくなる」
「17/36歩ですね。急戦ですね」
「違う。急戦含みの脅し。だから57銀が最強手となる。急戦が指せなければただの居飛車穴熊と思われて藤井システムが機能しやすい」
「で62玉ですか。22/82玉まで中村先生4分負けてます」
「脅しに負けた分」
「郷田先生の解説ですね。中村先生の王将二期のこと話されています」
「中倉姉の不思議流という紹介を想定した先手取り。郷田はこの言葉を否定する良識派」
「森内先生、なんと穴熊です!」
「中村が脅しに負けて悠長に構えたからね。当然」
「でも怒りましたよ。向かい飛車にして入城後いきなり飛車先交換です!今朝の早指し戦と同じ展開?」
「どうせ歩の交換だけ。森内は25歩と受ける一手。中村も気が早いね。森内の穴熊が36歩に次ぐ第二のプレッシャーになっとるね」
「4分差の考慮時間依然維持です。ここで森内先生長考してますね」
「ほっほ、中村飛車にヒモつけるだけの32/32金指して、森内もう勝負所と思っとる!32金指すなら先に指さんとね」
「郷田先生もここですでにどちらかが優勢のはずと」
「どちらがって、森内に決まっておるがな。中村の一歩持ちが無効になる展開」
「ここからが展開部と?」
「向かい飛車なら第一展開部。中村の32金が手ぬるい」
「まだ森内先生考慮中です。逆に5分オーバーとなりました」
「大長考じゃね。一瞬の隙も逃さないという精神力!」
「33/66銀でした」
「角をひとつ下げる第一展開部」
「今度は中村先生の長考です」
「13桂馬しかないじゃろ。そこが第二展開部への間奏句」
「考慮時間差なくなりましたね。双方残り8分です」
「36/42角?どうせ角交換するから手損じゃね」
「郷田先生も不思議がってますね」
「ひところじゃったら間違いなくこれこそ不思議流と叫ばれとる」
「先手穴熊なのに金はまるで最初から動きません」
「中村が二筋攻めたからね。それで42角とまた後退するのが異常感覚。郷田ははっきり言ってやりたいんとちゃう?」
「森内先生37/55歩と位をとりました」
「54歩をつかせないという強手!これで42角が2筋で交換する以外使い道がない。つまり先の必然手が読みやすくなっとるわけ。表面にはでてこんが、この必然手が読めるということで森内作戦勝ち。角をどこに打てるかという筋さえ見つけりゃいい。半穴熊でも先手、かつ駒交換必至でじり貧もない。皮一枚残して勝とうとする気迫!」
「ここで13桂馬です!」
「向かい飛車特有の三手一組の手じゃね。13桂馬-24歩-25歩というお決まりごと。25歩と後手が必ず打つから、先手は必ず先手番を維持できる。ここで有効な手があれば勝ち筋」
「双方残り6分!郷田先生は森内先生に誤算があったのではないかと?」
「2筋が突破されちゃうからね。でもそりゃ中村への配慮。森内に成算がなきゃあそこで長考するはずない」
「41/75歩でした!第二展開部開始です」
「これか!確かにここが一番早い」
「なんか金動かして穴熊を囲いたくなるとこですけど」
「これがプロ最高峰クラスの勝負勘。ここで攻めあい勝ちを目指すとこが強烈!」
「64歩?24角で交換するんじゃないんですか?」
「6筋の歩が切れていないと、と金で攻められん。5筋の位が大きいから下準備は今しかない」
「そこで43/16歩です!」
「凄いね森内は!ここで相手に手を渡す勝負術!しかも決戦となれば7筋、5筋の突き捨てが必ず効くはずという下準備!しかも歩切れは一筋で先手で補えるという三段構えの周到さ。玉筋をこじあけてどこでL字固め決めるかだけあとは読めばいい。これが逆L字固めに相転化する」
「別の名前を」
「富士固め、逆さ富士固めにしよう。そうなるかまだわからんけど」
「角交換です!」 53/46角まで必然変化。
「郷田先生形勢は微妙と言っています」
「飛車にひもつけただけの32金が離れ駒となっておる分をどう処置するかわからんからね」
「56/73角で富士固めを迎撃です」
「これで32金がタコ金確定。角を成らせて金を使う順が最強の応手」
「森内先生優勢?」
「あとは直線的。森内先手番はずっと維持できる」
「59/75歩でかなり悠長な手のようですが」
「後手の最大の急所」
「手抜きは?」
「先手一筋で先手で歩切れ解消するから無理」
「取りましたね。これで中村先生残り1分です。森内先生3分」
「一筋で香車が走って歩切れ解消で先手で桂取りはおいしーねー」
「41角で逆さ富士固め決まりました!金銀両取りです」
「3-4段目の湖水を境に見事に頂上地点が対称形となる。こういうとこ形で覚えとくと読むとき楽。頂上地点が反対側。向かい飛車の時読みやすい。あとは攻めあいじゃね」
「郷田先生も両取り逃げるべからずと言っています。26歩ですかね?」
「74角成が痛すぎ。2筋のと金焦土は放置されて飛車が7筋に回られる」
「中村先生85角と銀にひもをつけました」
「勝負手!さすが中村!ここで攻防兼備の角が打てなければ敗勢という勝負勘!」
「32角成りで金を取りました」
「そっぽむいたとこであとは中村の勝負術しだい」
「でも42馬が飛車あたりです」
「痛い」
「53馬が銀あたりです」
「痛い」
「13香成で飛車あたりです。同香の一手ですね」
「そんな暇ない。馬が絶大」
「郷田先生が、76/75歩打で65銀と逃げれば駒がばらばらになると」
「逃げてらんない。普通52歩で馬にあてる」
「86馬と逃げれば?」
「67角成りで49金にあたるからまだ恰好つく。ところが31馬の方に逃げるとまた飛車あたり。中村もうやる気なくすじゃろ」
「香を取らずに76/52飛と逃げて馬に当てました」
「香も取れないんじゃダッチョーの思いじゃろーね」
「すでに30秒将棋です」
「なんか凄まじい切りあいやっとるね」
「あとは受ける青春ですか?」
「郷田もそんなことモー言わんぞ」
「郷田先生は中村ワールドと言ってます」
「ワールドが糞受けの同義語にされてはかなわんな」
「ワイルドですねー。金銀全部自陣に打っちゃいました。5枚あります」
「囲碁やっとるの?」
「郷田先生言葉を失ってなにか念仏繰り返していますが」
「解説のしよーもない。せめて解説泣かせと言ってもらいたい」
「ナルホドと言っていますが。ナルホド・ザ・ワールド?」
131手にて森内八段の勝ち。