噂話
なあ、おい、知ってるかい?芸妓宿にえれぇべっぴんが入ったってぇ話さ。
酒場でさわぐ町人たち、しかしその後ろで静かにその話に聞き耳を立てていた流浪人。
男の刀が低い唸りを上げた
そいつぁ本当のトコ、どこかの国の姫さんだってことだ。
えっ?そんな姫様がこんな小汚い町に来るはずないってか?
いや、それがまんざら噂話でもないらしいぜ。
こないだ西の方でちょっとした戦があったろう。
そのとき負けちまった国の姫さんなんだとよ、なにしろありゃひでぇ戦だったからな。
そんでさ、城の者はなんとか姫様だけでもってことで逃がしたそうだ。
ん?・・なんだ信じてねぇなオマエら。
まあな、あれが本当に姫さんだったとしてもオレたちにはなんも関係もねぇもんな。
間違いない、あの戦で出会った物の怪だ。人の生き胆を食いその者に成り変わるバケモノめ!
ついに尻尾をつかんだぞ。父上の仇、今こそ獲らせてもらう。