白い

今はもう冬である、寒い。
吐く息が白く立ち上る、夜ちょっと食後の散歩に出かけた私。
空気はしんと冷たく、夜空が透き通って見える感じだ。
途中あったかい缶コーヒーでも買おうかと自動販売機の前の光の中に顔を入れる。
ぼわん、とてもまぶしい光だ。おっと一番欲しいのが売り切れだ。しかたなく私はそのとなりのボタンを押した。

「押しましたね。」

突然の声に私はビクリと体を震わし、そーっと振り向く。
その声の主は私のすぐ後ろで、ボタンを押した私の指を見つめていた。
なんなの、この人?なんだか気配も無しに近づいてきた様だわ、変質者?あー一体なんなのよー!?怖いのはゴメンだわー。
とかなんとか思っているとその男は光の中にその姿を表わした。
まぶしかった。
その男は上下とも白いスーツ姿で、白い蝶ネクタイ、そして白いシルクハットをかぶったなんとも珍妙な出で立ちであった。

「こんばんわお嬢さん。」
そういうと男は帽子をぬいでペコリとお辞儀をした。

「ああ、こんばんわ。」
私もなんだかつられてペコリと頭を下げる。
「・・・あ、あの・・一体なんなんです?」
気を取り直して話かけてみることにした。

「ありがとうございます。」
えっ?

「実は私ある人と賭けをしておりまして、それは次にその今押されたボタンを押すのは男か?女か?といった賭けでありましたのですよ。
そしてあなたが押された。
私は女性が押す方に賭けておりましたので、私の勝ちが決定いたしました。

いや。正直なところひやひやしていたのですよ。賭け自体は単純きわまりないものですが、その賭けの対象がかなり大きなものでしてね。
本当にありがとうございます。

アンゴルモア星の神に勝つことが出来ましたことを、あなたに感謝いたします。
そしてこの星を守り貫けたことに。」

はぁ・・・?

そういうとその白い男はまた闇の中に消えていった。
しばらくボーとしていたが、あっ、と思い。自動販売機の取り出し口からあったかい缶コーヒーを取り出した。
その缶コーヒーで手を暖めながら帰ろうとすると、空からふわりと何か降ってきた。
一枚の白い羽だった。

そんなコトが1999年にあったのをフト思いだした。
別になんてことのない話だよね?



わーむほーる