紫色に

紫のイメージとして「高貴さ」がある。
しかし、それと同時に「死」のイメージがあるのも事実である。
静脈に流れる、濁った血のイメージ。
昔の貴族たちはこの色を好んで使った。それはもちろん自分をより気高く見せるためだが、人が必死になって避けようとする死を受け入れ、取り込んでしまう、そうすることで死をも超越したかったのかもしれない。

私は、今、そんな紫の光を見ている。キラキラと光る紫の結晶、紫の宝石だ!
一般的に紫の宝石はそれほどめずらしいものではなく、高価なものでもない。しかしこれは少々変ったいわくつきのものなのだ。「ブライト・ロード・アメジスト」この宝石を持つ者には、最高の富と名声を与えてくれると言う。
そんなものがどうして私の手の中にあるのか?
この宝石はもう一つ不思議な力があるのだ。
持ち主に富と名声を与える変りに、死をも呼び込んでしまうのだ。死のイメージの紫。

そんな紫の宝石だ。とても美しい。数々の生命を取り込んで来た、深い紫の光なのだ。私はこの宝石を眺める、そんな至福の瞬間が私の心を癒す。ああ、本物の美とはこういうものを言うのだろう。

しかし、そうだね。これを持つものには死が訪れるのだ。
ここが重要な所だ。死ぬのは好きじゃない、でも、この宝石は美しい。
実は、私は泥棒なのだ。それも宝石を専門に盗む宝石泥棒。

だから、この宝石はしばらく眺めたあと、どこかの路上で誰かに格安の値で売るのだ。
その宝石を買った者はあっという間に大金持ちになるだろう。
そして紫の光の中、死ぬ。
私は宝石泥棒だ。また盗む、そして、この美しき宝石を眺めるのだ。
この紫の光とも、もう、すでに何回目かの再開である。
それでは、また会おう、高貴な死の輝きに。



わーむほーる