「速攻生徒会」



ふむ、なにやら今世間では「いじめによる自殺」がブームらしい。
マスコミにより一件の「いじめを苦にしての自殺」が大々的に放送されると、
そこから連鎖的に広がり始めた。

「学校側の管理が甘かったのでは?」
「いじめられる子をどうしてみんなは守ってやれなかったのか?」

当事者ではないテレビを見ている人間はこう言う。
バカを言うな、そんなことできるわけが無い。
先生がいじめを無くすなんて100年前からできることではないし、
ましてや「君、イジメカッコわるい!」って同級生に言える子供なんて
いるわけがない。
もしいたとしたら、そいつはかなりのバカだ。
だってなんのメリットもないばかりか、リスクだけがただ闇雲に多過ぎるからだ。

だったらイジメは無くならないのか?
この先も永遠に無くならないのか?

‥‥いや、無くすことはできるよ。
実際、私の学園は今、完全にイジメなどない状況を造り出している。
そう完全に、イジメが、嘘偽り無く”ゼロ”なのだ。

この私が生徒会会長を務めるこの学園ではね。

‥‥ふむ。
「もしそれが本当ならどうすればイジメをなくせるのか、その方法を教えて欲しい。」
と、あなたはそう尋ねるだろう。
よろしい、教えましょう。
簡単なことなのだ。
世間は学校側の責任や見て見ぬフリをする環境に問題を見つけだそうとするが。
間違いだ。
見当違いもはなはだしい。
そんなことはどうでもいいことだ、テレビは何故彼等を追求しないのか、PTAは何故彼等に糾弾を声を浴びせないのだろうか?
イジメの原因は”虐める側の人間”のせいだ。
結論、虐める人間が居なくなれば、イジメなど存在しない。
‥‥というわけだ。

だから私は彼等を除去することを始めたのだ。
イジメと聞いて年輩の方々は
「そんなのは根性がないからだ、ガーンと反撃してやればいいんだ。」
とかいう体育会系の方が結構いらっしゃる、
しかし現代のイジメは既に犯罪のレベルに至っているのです。
あなたは銃を構えた殺人犯にガーンと根性でぶつかっていけるのですか?
手足を縛られたまま25メートル泳げますか?
‥‥わかりにくい?
ん、でもまぁ、そういうことなのです。

さて、そこで本題です。
彼等、虐める側の人間を”消す”方法です。
いやいや、消すって言っても殺すわけじゃ無い。
あぁ、デスノートって漫画で名前を書くだけでその人物を殺せるってノートが出て来ましたが、あーゆーのがあれば楽でいいんですけどねぇ。
まぁ、実際はそんな非現実なものは存在しないわけで。
でもね、またここもあなたたちの時代とは違うのですよ。
私達、中学生も現代は皆持っているのです。
使い様によってはその人物を消すことだってできる魔法の道具。

‥‥そう”ケータイ”を持っているのですよ。

私は生徒会をいう立場から全校の生徒を調べることができます、そこで何人か正義感の強い、でも悪に立ち向かうほどの勇気はない人物何人かにこう言うのです。

「イジメの現場を見たらメールを見るフリをしてその現場をケータイで録画しておいてくれ」

と、もちろん危険なことはしなくていい、ただ録るだけでいい。
第一、いじめっ子達も分かっています。
回りの人間もイジメを知っていても、ちゃんと見て見ぬフリをしてくれることを。
自分からわざわざ危険に近付く様なバカなことなんてしないと、
わかっているのです。

だからメールを見ながら、あとipodでも聞きながら録ってください。
そうしていればイジメの現場にすれ違っても彼等は何も気にしないでしょう。
もちろんそれらはフリで、彼等のムービーを撮って、撮って、撮ってください。
彼等の汚い、卑劣な、頭の悪い言葉を録って、録って、録ってください。

そしてそれを無料で、無記名でアップ出来るサイトを教えますので。
そこにそのまま送信してください。

はい、これで完了です。
あぁ、自分のケータイからは消去しておくのを忘れない様に。

あとは私がやっておきます。
そのサイトのアドレスをQRコードに変換し
3センチ四方ほどのシールを作ります。
100枚くらいでいいでしょうかね。
ネットにアップしたからと言って世界中の人に見てもらう必要はないのです。
そのシールを学校のちょっと見えづらいところに
ペタペタと貼ります。
トイレの個室とかがよいでね。
あと職員室にも貼ります。
ぺたぺた。

これでだいたいオッケー。

あとはMD、CD、DVDまぁ適当なメディアに落として
その虐めていた子のご両親宛に送ります。
あとはそのご近所さんところにも忘れぬ様送ります。

それでオッケー。

一ヶ月もすればその子は学校から居なくなります。
というか町から居なくなります。

ね?なくなるでしょ?イジメ。

そうやって私はこの学園のイジメを一掃したのですよ。
さぁ、お困りの皆さんどうぞ、この方法を試してみてはいかがですか?

あ、あと自殺しようと思っているのなら
まずこの方法を試してみてください。
一人でも十分出来ますので。
どうせ死ぬんなら完璧に復讐してからでいいじゃないですか。

死んだら二度と生き返ることは出来ないんですよ?
未成年は捕まりませんからね、彼等はあなたが死んだあとものうのうと青春を満喫しますよ。

しかし、

この方法で私が最初に助けようとした子は残念ながらあと一歩のところで助けられませんでした。
もうほとんど仕掛けは成功していて、
いじめっ子の映像を見た近所の人がそのいじめっ子の家の前に生ゴミやら犬の糞やらネコの死体を放棄するようになり、その子の両親も含め半ば半狂乱で夜逃げ同然で逃げ出した。子供のイジメを大人のイジメが駆逐するという近年まれに見る痛快劇でしたのに。

そうなる数日前に私が助けようとしていたその子は自殺してしまった、死んでしまったのです。
当初、警察はこの子がいじめっ子の映像を流したのではないかと疑っていましたが
時間的に映像が流されたのは彼女が死んだ後でした。

なので学校では彼女の霊のしわざだ、とかそういう噂も広まりましたけどね。
まぁ、やったのは私ですし。

えぇっと、何の話でしたっけ?
‥‥あぁ、そうだ自殺しようと思っているのならやめておきなさい。
それより確実な復讐ですよ。
死んだら二度と生き返ることは出来ないんですよ。
そう、二度と生き返ることはないんですよ。

私は死んでしまった妹と、もう二度と会うことは出来ないんですよ。

まぁ、この方法で一つ困ったことがあるとすれば。
私、こういう方法でここ一年間数々のイジメっ子を除去してきたわけですが。
そうすることで何故か今この学園の生徒数が、

当初の半分になってしまった。

‥‥ということくらいでしょうか。
いやいや、これくらいのことは、げにいた仕方の無いことでございましょう。

で、あなたはどちらの人間ですか?
この町に居られる、人間なのですか?
居られない、人間なのですか?
我ら生徒会は既にその方法をやってはいないのですが、
いまだその駆除は静かに施行され続けています。
えぇ、この方法誰でも出来るって言ったでしょう?
そう、既に、町に居るケータイを持った全ての人々が我ら生徒会のメンバーなのですよ。

ゆめゆめ忘れる事なかれ、お天道様はいつでもあなたのことを”見て”いますよ。



完。



わーむほーる