シーン6
RIDE ON TIME

チー、カシャン、チー
監視カメラの静かなモーター音だけが聞こえる。
「さあ、ここからは私にまかせて。」
と森絵は言っていた。五人の盗賊はここまでは何の問題もなくやって来た。森絵はさすがかってしたる建物なので、監視の抜け道を通って来た。しかしここまでだった。
「なんか、入り口の所とえらく違うね。金持ってるんだね。」
ジンノが言う。
「私もここからは知らないのよ、ほとんどの人間に対して極秘な場所になってるからね、盗まれたりなんかしたら困るでしょ?」
森絵は、でもあなた達ならできるんでしょ、とニヤリと笑った。
「で、どうよマリオ。」
ジンノがマリオに言った。マリオは小型コンピュータのキーボードをカタカタとたたく。
「ん〜ちょっと難しいかな?」
「おいおい、頼むゼ。」
高松は少しいらだった声で言った。オレンジはジッとまわりに気を払っている。
「いや、できることはできるんだけどね。」
「そしたらやれよ。」
「でもね、高松さん、一時的に監視の目をごまかすことはできるんだけど、せいぜい2秒ってところなんだ、それも一度やると次にもう一回やるときにはプロテクトが自動強化されるから、ひどく時間を食う。」
「てーことは何だ。2秒でカメラの向こうに移動しろと・・・。」
「そう、それも一人ね。重量チェックとかもあるんでね。そして向こうに行けたその一人がここの警備室に入ってカメラの映像を見てる人を眠らせてくれればいい、機械をあざむくのは簡単だけど、人間の目をあざむくのは難しいんだ。・・・で、誰が行く?」
ふふん、とジョン高松が鼻で笑った。
「そーゆー盗賊らしいコトは俺にまかせてくれよ、歳喰ってるがいい仕事するぜ。」
彼はスリルを楽しむ典型的な盗賊タイプらしかった。ずいぶんと楽しそうだ。

「じゃ、いいかな。みんなわかった?それぞれの仕事やってくれ。」
マリオが言った。高松の目が変わった。集中。呼吸の音。自分の心音。
ワン、トゥー、‥‥
マリオは無言で手を上げそして下ろした。始まりだ。
高松が監視カメラの動きに合わせて走り出す。高松の靴の音が6回鳴った。
「ふー・・はい、成功、あとは高松さんにまかせて。俺達はそれぞれ移動だ。ジンノは宇宙船の管制室にオレンジはジンノに付いてやってくれ。」
「よろしくオレンジ。」
ジンノが言う。
「ああ、荒っぽいことはまかせとけ。」
「で、森絵は俺を案内してくれ。」
「いいけどどこよ?」
森絵が聞いた、
「社長室。」
マリオは一言で答える。
「え?」

シーン7に続く