シーン4
TIME ITSELF

私は森絵、森絵・カグヤ。あの数十年前の人類の最大の危機により世界の人口が四分の一にまで激減した、「最後の時」と言われた時代の後に生まれた世代。親からは昔のきらびやかな時代の話と、終末に向かって行った時のこと、その状況を乗り切ることはできなかったが多大な犠牲を払ってやり過ごしてきたこと、などを耳にタコができるほど聞かされていた。そんな時代の人間だ。
現在この星は小さな国に細分化されている。
国とは言ってもその国を治めるのは国王でも大統領でもない、金を集められる者、つまりは企業家なのだ。
平和な世界を創るには人々の間に一定の価値観が必要だ。いくら神にお願いしたところで、空からパンは降ってきやしない、人類最大の発明、貨幣、つまりはカネが共通の価値観となったのだ。
「最後の時」以来、全ての国の政府の薄情さ、そのあまりの脆弱さに人々はあまりにあきれた。そして人が自然に集まっていった場所。それが仕事のあるところ、企業家が統治する「国」だったのである。
そして私の父もその企業家の一人だ。「KAGUYAコーポレーション」、企業であり国でもある所のトップに立つ男である。私から言わせれば最低の人間なんだが。人と金をあやつる術は最高のものを持っているらしい。
その父の国の宇宙船を盗むのだと言う、ジョン高松。昔はかなり有名だったという盗賊グループの一員だということだ、私はよく知らないが私の国にはも一度来たことがあるらしい。しばらくは盗賊をやめ暮らしていたらしいが、最後に大きな仕事がしたかったのさ、と高松は言った。
まあ、どんな理由があるのか知らないが、アイツが困るんなら面白いと思ってこの話に乗ることにした。高松も心底からの悪人ではないみたいだし、私も家を出るところなのだったから。

しかし昨日は飲み過ぎた。頭がガンガンする。
鏡を見る。ずっと見てきた顔。父が母親に似てきたな、と言った顔。
少しむくんでる。やあちょっぴりブスな私よ、おはよう。
「へへっ、何やってるんだろうな私、ガキじゃないっての。」
トントン
ノックの音。
「おい、森絵、集合だ。下にきてくれってさ。」
マリオの声だ。
「んー、わかったー、ちょっとまっててねー。」
さて、いよいよ始まるのね。どうなるんだろうね。まあ人死にがでないことを祈っておこう。
窓からもれいる光はとてもやわらかく。
四角く切り取られた空は青く高かった。

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