シーン17
END
and
ENDLESS

宇宙旅行が手軽にできるほどじゃないけど、少しお金を出せばそれが不可能ではなくなった。
そんな時代の話。

暑い。
砂漠のを突っ切る一本道、一台の車が走る。
乾いた砂、乾いた風。カーラジオがひびわれた声で歌っている。
懐かしい曲だ。

ジンノが運転しながら歌に合わせてハミングする。なんだか妙にその歌に溶け込むハミング。
「あっと、マリオこの歌嫌いだったけか。」
俺は助手席で外の景色を見ながら
「別にもういいよ。」
なんとなくそんな気分で俺は答える。
「ああ、そうだった失恋だっけか?嫌いなわけ、な〜詳しく教えろよ〜。」
あーまたこいつは人の不幸話が好きなんだから
「絶対言わねーよ、特におまえにはな!」
「けけけ、ムキになるとこが怪しいな、そーとー恥ずかしい話なんじゃな〜い?」
絶対言わないない。絶対だ。後々何言われるかわかったもんじゃない。
「ふふ〜それ面白い話ね〜私にも聞かせてよ〜、ね〜マリオ。」
あ、森絵の奴聞いてたのか寝てると思ってたのに。森絵もジンノと一緒にニタニタ笑っている。あーもーこいつらはー!!
「さぁー白状しなさいマリオ、あなたの青春の恥ずかしい一ページを!」
「そうそう、僕達に話してごらんすっきりするよ、親友じゃぁないあか。」
俺はふくれっ面で窓の外を眺める。二人の笑い声が楽しそうだ。
そうあの二人は元気にしてるだろうか、もちろん森絵も含め、高松、オレンジは死んだんだ。
それは事実、しかし俺は森絵が打たれたときそっと頭部にあるパーソナルメモリーは抜いてきたんだ。もちろんジンノは光ディスクを二枚もって帰ってきた。高松とオレンジの記憶だ。体の再生はいくらでもきく、アンドロイドなんだからね。
また、始められる。そう俺達には時間は無限にあるんだ。
ジンノが言ってたが人類のデータの詰まった宇宙にあるあの球体は、それ自体で宇宙を旅することもできるそうだ。この星の自然の復活の見込みがなくなったときは他の環境の合う星を探し飛んで行くらしい。ただデータだけを乗せて、何百年でも何億年でも。

「兄貴、これからどうすんだい?」
「んーさあな、どうするか。とりあえず美女でも連れてこの星を旅してまわろうかな。」
「いいねぇ美女、それにしようよ。」
「よし、そんじゃとりあえず探すかムチムチの美女を!」
「はは、兄貴なんだかのってるね〜。」
「当り前だ俺の人生まだ始まったばかりだゼ、楽しまないでどうするよ?」
そう言って高松はガハハと笑った。オレンジもイヒヒと笑った。

砂漠だらけのこの世界、だけど車の走るその道は何処かにかならず繋がっていて、行き止まりなんてのはないんだよ。走って行きゃあ何処かに着くのさ。楽しんでいきなよオマエもさ。歩いて行ってもいいからさぁ。

「あれ、おっかしーな。」
とジンノが言ってから数時間。車が突然の故障です。直すのはマリオが専門。
砂漠はやっぱり熱いって言うことを実感したよ。
「ねーマリオまだ〜。」
「そうそう、倒れちゃうよ俺達〜。」
「あーテメーら何寝言言ってんだ!俺が一生懸命やってるのに、なんだそれは!」
ジンノと森絵はどこから持ってきたのか。ビーチパラソルに冷えたビール。森絵にいったては日焼け止めなんか塗ってやがる。
「あーもうヤメ!俺にも何か冷たいものくれよ。」
俺は工具をほっぽり出して、車のボンネットに腰を下ろす。
「んじゃ投げるよ。」
森絵がカンビールをポーンと投げてよこした。
それを捕まえる瞬間、なんとなく思った。

まだ始まったばかりさ。



The End









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