シーン13
FIRE

「おいマリオ今何処だ?」
マリオのイヤホン型通信機からジンノの声が聞こえた。
「ジンノこっちの用事は終わったよ。下に降りてるとこだけど、これからどうするんだ?」
マリオそう答えると立ち止まりジンノの返事を待つ、一面ガラス張りの廊下、空が見える。
「ああ、こっちもだいたい完了してる。後は二人を空へ送るだけだ。ん、そうだ森絵はどうした?」
「ちょっと面倒なことになってな休憩中だよ。アレは取っておいたから後よろしくな。」
「あーやっちゃったのかよ・・・まあ二人も三人も一緒だけどな。」
「ん、それじゃ町の病院の前で待ってるよ。」
「おう、データは送るから楽しんで見ててくれ。じゃまた後で。」
「ん。」
通信終了、計画は上々だ。それじゃ後は帰りの車でも探しますか、かっこいいのがいいな。ジンノの選ぶ車はクラッシックすぎるんだよな、だからすぐ故障する。まあいいか。時間はまだある、ちょっと寄り道でもしてくかな。
マリオはカグヤビルのある場所に足を向けた。

マリオとの通信の後ジンノは、人鳴カグヤを呼び出していた。
「イヨー人鳴!ダメじゃん、自分の娘を殺しちゃあ。」
「ああ、もう全部おまえのせいだよ。こんなことして何になるってんだ?俺達の仕事はAIの研究と自然回復の援助、それだけだ。こんなよけいなことしなくていいんだよ。何を急ぐ?俺達には時間は無限にあるんだぜ。」
人鳴はせきたてて言った。ジンノは間をおいて静かに話しかける。
「そこがAIと人間の違うところなんだよ、人鳴。今、現在AIの頭脳の思考パターンはほぼ人間のそれといっしょだ。だが、知っての通り彼等は永遠に生き続ける、俺たちが記憶を操作してそうとは感じさせてないが。なんとなく分かっているんだよ。彼等には死の恐怖というのが人間にくらべて格段に薄いということに。この問題をクリアーしないことには俺の研究は完成しない。」
「ああ、そうかもしれんな。しかしだ、それは俺たちの研究ではなくてオマエ自身の研究なのだろう?・・・・あまり俺に迷惑かけないでくれよ、ジンノ。そうオマエは昔からよくわからないことをするやつだったがな・・。」
「ははっ、まあ心配するな。もうすぐ終わる。たいした被害はないと思うから。」
「つーかジンノもうかなりの損害だぜ。」
人鳴はやれやれとため息をつく。
「それじゃ人鳴またな。」
「ああ、いつか本当のことを話てくれよ。謎だらけよおまえの行動は。」
ジンノはそれには答えず。軽く笑って通信を終わらせた。
電脳の人間もいい感じになってきたな、とジンノは思う。

シーン14に続く