ブゥン
高松の前にあるモニターが淡い光りを発して起動した。通信のウインドウが開く。その映像はジンノを映しだした。
「やあ高松さん、うまくいったみたいだね。」
「当り前だこのくらいのこと。で、そっちはオッケーなのか?」
「こちらこそ当然さ。もう今すぐにでも空の彼方に飛んで行けるゼ。準備はいいかい?」
「ああ、オレンジはどうしてる。」
「今、そちらに向かったよ。んじゃ乗客は二人ってことで。」
「ん?おまえらはどうすんだ?」
「俺達は別にいいよ、宇宙に行ったって別にすることないしね。そうだ、もう教えてくれてもいいだろ、アンタがそこまでする理由ってなんなんだい?」
高松はふっと天井を見上げ、ちょっとの間をおいて言った。
「まあいいじゃねえか、くだらないことさ。しいて言うなら男のロマンってとこかな。ははっ」
「ふうっ・・最後まで本音は吐かないね。・・確認したいんだろこの世界を‥‥・・。」
ジンノの目が何かを見透かすように鋭く高松を見つめた。
「オマエ、何で・・・何か知っているのか。」
高松は驚きの感情を押し殺して言った。一雫の汗が頬を伝う。
「さあね。」
ジンノはニカっと表情を変え楽しそうに笑う。
「俺は知っているといえば知っているけど、今言葉で説明してもそれはアンタにとってなんの意味もないことだよ。自分の目で確認しなければならない、そうだろ?」
「ああ、そうだが。」
何者なんだコイツは?高松の思考はまた激しく混乱する。ジンノ。俺の調べたデータにも変な所はあった。ごく最近のジンノの個人データは確認がとれていたのだが。それ以前のデータに明らかな壊残の後が見られるのだ。年齢さえも誤魔化しているようだった。時折見せるその知識も的確で正確、ただの技術屋だとは思わなかったがいったい・・・・。
「それじゃあまた後で、オレンジが着いたら連絡してくれ。」
ジンノはそう言うと通信を切ろうと手を伸ばした。
「おい!ちょっと待てよ。オマエ何たくらんでるんだ!?おい・・。」
ブン、高松の前のモニターからジンノの映像が消えた。
「チッ、いったい何だってんだ。踊らされているのは俺なのか?・・何をやらせるつもりなんだか。」
チクショウ、難しいこと考えるのはヤメだ。死ぬことはないみたいだしな、腹決めてジンノ、いやアイツだけじゃない、誰かの書いたシナリオだ、これは。ここまで来たらとことんまで付き合ってやるぜ。クソおもしろくもねえ。
高松は前に並ぶ機械類の上に両足をドカッを乗せて帽子を深くかぶりなおす。
自分の書いたシナリオは却下され最低な気分だったが、高松は妙な高揚感に包まれていた。
何かが分かりかけてきた気がする。