ネジ式

とあるミュージシャンがDJのラジオ番組より

はい、こんにちは。
今夜は何を話そうかな、う〜んそうだね。これはよく聞かれるんだけど僕がこの音楽の道を進むきっかけになったことを話そうかな。
これを聞いてるリスナーのみんなも自分のやりたいことがあったりすると思うんだけど、ついついやっぱり俺は、私はダメなんじゃないかって考えちゃうと思うんだ。

そんなことも一つの運命の道なんだ。
そしてその運命はちょっとしたことで大きく変っていくってコト、それを覚えておいてほしい。

僕がそんな運命を感じたのはちょうど大学2年生のときだった。

それまで僕は漠然と将来音楽やっていきたいなぁと思っていたけど、とくにこれといって何をするわけでもなく、ほどなく楽しい大学生活を送っていんだ。そもそも田舎に住んでいた僕が都会の大学を受験したのも、都会に出れば何か楽しいことがあるだろうってイイカゲンな気持ちからだった。しかし都会に出たからといって何か特別な出来事がおこるわけじゃない。

そのころアパートで一人暮しだった僕はなんだか妙な感じに悩まされていた。
誰かに見られている様な感覚だ。実際は誰もいないんだけど誰かが僕の行動を見ているような視線を感じる、その視線を追うと、それはパソコンからだったり、CDラジカセだったりする、そうするとその視線はすっと消える。そうすると僕はその視線の見ていたパソコンでネットしてみたり、CDを聞いてみたりするようになったんだ。まるでその視線の思い通りに動いてるような感覚だった。

その日もそんな視線を感じテレビをつけてみた。
ドッペンゲルガーって知ってる?なんか、自分に似た人間がこの世に3人いるとかいうアレのことだよ。僕はテレビを見て驚いたね。そこにはまるっきり僕そっくりな奴が出ていたんだ!
ちょっと変な化粧をして、そのころ流行っていたビュジュアル系のバンドってヤツだった。

そいつはそれからどんどんメジャーになっていった。友達からはアレおまえなんだろ?って電話がたくさんかかってきたりして僕はなんだかイライラしていたんだ。しまいには母親からも電話があってサインを送ってくれだとか言いだしてきた。今思うと何もしてない自分がイラつく理由だったんだと思うけど、そのころはそんなことはわからず。ちょうど、そのときやっていたソイツのラジオ番組に電話した。電話相談とかをやっていたんだ、たぶん。
めずらしいことにその電話は繋がって、僕と同じ顔をしたそいつが電話の向こうに出た。まったく同じ声で僕がしゃべりだすと、そいつは突然取り乱し電話を切ったんだ。

翌日、僕がアパートの部屋でもんもんとしているとそいつが訪ねて来た。
「あれは困る」
「いったい何なんだおまえは!困るって何がだよ困ってんのはこっちだよ!一体おまえはなんなんだ!?」
僕はまくしたてて言った。そうするとそいつは
「それじゃ全部話そうか。」
と言って話しはじめた
とても信じられない話だった、彼は鏡の世界の僕だという、鏡の世界ではこの世界のように平和な世界ではないらしく、彼は自分の夢をつかむためにコチラの世界に飛び込んできたと言うのだ。

これは可能性だよ、僕が出来ることは君にもできるはずなんだ。可能性なんだよ。
そういうと彼はにっこりと笑って僕の手を握った。
バチッと火花が飛んだような感覚が手の中にあった。
そうすると目の前にいた僕の様な彼はだんだんとぼやけていき、そして、消えた。

僕は狐につままれたように放心していた。

それから数日たって、おかしなことに気がついた。
彼がいなくなっていたのだ。というよりも彼の存在そのものが消えていた。テレビやラジオにひっぱりだこだったバンドだったのに。誰に聞いてもそんなやつは知らないと言う。
一体なにがどうなったのかさっぱりだった。

・・可能性。
そういえばパラレルワールドってのを何かで読んだことがある。平行世界のことだ。
この世界は一つではなくあらゆる場面の可能性の分だけ世界があるという説のこと。つまり、この二つに分かれた道を歩いていくとき、右の道を歩いていく君と左の道を選択する君は、同時に平行した世界に存在するわけだ。
僕が見た彼はそんなパラレルワールドの存在だったのかもしれない・・・。

それからだよ、僕が真剣に音楽にとりくみ始めたのは。もちろん自信なんてこれっぽちもなかったさ。
でも、可能性はあるんだと思っていた。いつか出会った彼の様に可能性はどこかに確かに存在する。
それを選ぶか選ばないかは自分次第だということに、そのときやっと気付いたんだ。

そして様々な可能性の中から今の僕がココにいるってってワケ。

ちょっと話長くなっちゃったけど、何か目指している人がいたらさ、簡単にあきらめちゃダメってことだよ。可能性は自分で選ぶことなんだからさ。ん、ちょっと説教ぽかったかな?でもそういうこと。

んじゃ曲いきます。
えーと、ちょっと昔の曲なんだけど。そうそう、ちょうど僕が大学のころよく聞いてた曲です。
「セラニ・ボージ」で「僕のマシュ」

ん〜やっぱセラニはいいよなぁ〜



わーむほーる