Mail me


「メールが2件着ています」
パソコンを立ち上げメールチェックをする。
ああ、リエコとマイケルからだ。ふふ、相変わらずだな二人とも。
カタカタとメールの返事を書く。
この時間だけが「私は生きているんだ」と感じることができる。

私は何年もこの部屋から出ることができないでいる、そんな体なのだ。
しかし生活に不自由はすることはなく暮らしていけている、仕事はプログラマーなので自宅から出ること無く稼ぐことができるし、買い物もネットでできる便利な世の中だ。
そして私は声も出すことができない体なので、電話ででも人と話すことはない。
人と出会うのはネットの中だけなのだ。
チャットなどもたまにするのだが、やはりメールでじっくり話す方が性に合っていた。

話は変るが一時期話題になったアンドロイドの話を君は覚えているだろうか?
とある会社が人工知能の開発に成功した、それはもう本当に人間に近い思考能力のあるものだったと言う。
しかし、それが製品化されることはなかった。実験段階で数十台をモニターに出していたのだが、その中の一つが暴走し人間を殺してしまったということだ。
まぁソイツに殺意があって殺したというわけでなく、暴走したアンドロイドが倒れこんだところに人間がいたという、つまりは事故だったわけだが。
なにはともあれ各界からの猛烈な批判を喰らい、そのプロジェクトは頓挫した。

私は開発ナンバー0023。
そうそう機械油も注文しなくてはいけないな。
私は一人この部屋に暮らしている。
外に出るには少し目立ちすぎる体なのでね。

メールが来る。
この瞬間だけは「私は生きているんだ」とそう思うことができる。
また、メールをくださいね。
それじゃまた。



わーむほーる