タイム・イズ・マネー


いつもニコニコ時間ローン

あぁ忙しい忙しい、やりたいことはいっぱいあるのに時間が足りない。
そんな人のための時間ローンです。

医学の進歩により一つの発見が成された。
全ての人に時間は平等である、そう思われていたがその常識をくつがえす発見だった。
脳下垂体より分泌されるとある物質が人間の集中力を促すものだとわかったのだ。
人間、集中している時間はその時間をめいいっぱい使ってるだろうし、だらだらと時間を無駄に過ごしている人には何時間あっても有効に使っているとは言えない。その集中力を司る物質を人為的にコントロールすることが出来るようになったのだ。
時間が欲しい人に充実した時間を与えることが可能になった。
多くのサラリーマンがこれを利用した。

しかし一つの落とし穴があった。 この物質は限りがあったのだ。多少個人差はあるものの一生に分泌される量には限りがあった。
化学的に生成することも試みられたが、今だにそれは成功していない。
一時期にそれを大量に放出した人は残りの人生を白痴の様に過ごすか、もしくは死ぬだけだった。
多くの才能あるものが早死にするのはそのそのせいかもしれない。
バリバリと働いていた人たちが突然に死ぬ事件が多発した。

そういった危険制を踏まえてこの物質の研究は中止された。

しかしいったんその効果を体験した人達はもうそれが無くてはやっていけない。
需要には供給がある。
商売人はそれを見逃さなかった。闇の時間販売が始まった。
しかし時間を買うだけ買って死んでしまう不届きな輩が増えた。
商売人は考える。新しい発想。
この物質は作り出すことは出来ないが、他人のものを移植注入することが可能だとわかった。
この世には時間が足りずに苦しんでいる人もいるが、日々だらだらと無駄に時間が流れるの疎ましく思っている者もいる。そしてそういうダラダラした奴は大抵金に困っているのだ。
彼らからその物質を金で買い。その取り出した物質を本当に必要としているに少し高額で売るのだ。
これは素晴しいコトだと思いませんか?
時間は人に平等に与えられるものではないのです。早く時間など過ぎてしまえと思ってる奴には少しのお金を与えておけばいいのですよ。

そんなあなたもこんなあなたもいつもニコニコ時間ローン。

テレビをぼんやりと眺める僕は時間はあるが金はない典型的な貧乏学生だった。
近所にある無人時間ローンに向かった。もちろん買うほうじゃない、売るほうでだ。
初めて行ったのだが、意外に簡単そうだった。
DNA判定システムというのがあって、そこに人さし指を入れるとチクリと痛みがあって血を採取。その人の「時間(残りの物質量)」を判定する仕組みになっている。

ピー。
エラーが出た。
結果、僕には金は出ないということだった。
たまに先天的にその物質が少ない人がいるそうなのだが、僕がそれだったようだ。
ちぃなんだよ、あぁ明日からどうしよう。
え、でもそれが少ないということは、どうなるんだろう僕は?
少し考えたがどうでもいいことだ、部屋に戻ってテレビでも見よう。
と、ふらふらと歩いていたところ車に跳ねられて死んだ。

あ、そういうこと?・・・まぁいいか、金には困らないだろうし。

おしまい。



わーむほーる