[ドラえもん]


あん あん あん とっても 大好き ドラえーもん♪

「そーらを 自由に とーびたーいなー♪」
「いや、別に飛びたくなんかないよ」
「って!オイオイのび太くーん、そんなにヤサグレないでよ〜もっと夢を持とうよ〜」
「ふっ‥‥どんなに夢を持ったって、ボクみたいな何をやってもダメな人間には何の意味もないのさ」
「そんなことないよ!やれば出来るんだ!やらないと何も始まらないじゃないか」
「やればできる?‥‥そうさ、その秘密道具を使えばボクだって空を飛べるし何処へだって行ける!‥‥しかしそれがなんだ!結局ボクが何もできないってことを浮き彫りにするだけじゃないか!そんなの何の意味もないよ!そんないつか醒める夢ならば、最初から見なければいいんだ!」

「それは違うよのび太くん、君は学んだじゃないか、これまでの楽しくも可笑しい経験から。。」
「‥‥うっ、そうだよ、わかっているんだ。」
「泣くなよ、のび太くん」

「‥‥えっ、ぐっ。。。そうだボクはわかってしまったんだ、ドラえもん。何も出来ずに虐められ部屋に閉じこもっていたボクは、暗い闇に落ち込み、本当に死にそうになっていた。だけど死ぬのは嫌だ。。だからボクは想像した。とっても楽しいことを。未来からやって来た猫型ロボット、不思議なポケットから出てくる未来の便利な道具。それでボクは時には失敗もしたけれど、楽しくも素敵な体験をした。。そうだ、冒険にも行ったね!」
「うん、恐竜の世界や魔法の世界、地下帝国なんかにも行ったよね」

「そう、それもみんなボクの想像の中の出来事‥‥」

「しかし、それは君をこの暗い押し入れの中から脱出させるのに十分な、経験と想い出になった。たとえ、それがただの想像であってもだ。」
「うん、わかっている。ボクはもう外の世界に恐怖を感じることはない、もう大丈夫なんだ。ありがとうドラえもん。」
「うん、のび太くんこちらこそありがとう。」
「だから、ドラえもん大好きだからさ!君までもがボクの妄想だったなんて、そんなことは!そんなことは嘘だよね!?そうだ道具を出してよ、もしもボックスで「ドラえもんが本当にいる世界」を作ってよ!」

「ふふふ、のび太くん、もう君は大丈夫なんだよ。ボクがいなくなっても、もう、全然大丈夫なんだ。だからしっかりおやり。君はもうダメなのび太くんじゃないんだ。もう立派な大人なんだよ」
「そんなの‥‥そんなの嫌だよ!ドラえもーん!‥行かないで、行かないでよ!!」
「‥‥のび太くん、がんばれよ。そして本当にありがとう‥‥」

そう言うとドラえもんは足のほうからその姿がスーッと薄くなってゆき、半透明のその姿の後ろにある押し入れの壁が、だんだんと、くっきりと。
「ドラえもん?ドラえもん!?ドラえもーーーーーん!!!」























‥‥‥‥
「「なーんてな!」」
「ふははは、ドラえもーんナーイス演技!」
「のび太くんこそ迫真の演技だったよ、本気で泣いてたんじゃないの?」
「ふへへへ、まあぁねぇー、あ、ママが呼んでるや、おやつの時間かな」
「うん、それじゃ行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」





そうしてボクは誰もいない部屋を見た後、きびすを返し、フスマを閉めて階段を下りる。
「ママ〜今日のおやつなーに」
「んー、今日はドラ焼きよー」

あん あん あん とっても 大好き ドラえーもん♪



わーむほーる