ディエロン

エピローグ

あれから数日がたった。

みんなそれぞれの生活にもどっていった。
小早川伸哉は今もときどき小泉愛子のクリニックに手伝いには行っているがその回数は以前と比べるとずっと減った。というのも今もテレビニュースでやっているが、昏睡状態だったディエロン患者が次々に意識を取り戻しているということだ。李白栄は病院の先生だったらしく回復した患者の対応でてんてこまいだそうだ。
その回復した患者の中に「荒木霧生(あらききりお)」という少年がいた。彼は「ディエロン」妄想病の初期の患者で、もしかすると一番目の患者だったのかもしれないということだ。その彼も回復し意識を取り戻しはしたのだが、数日前病院からその姿を消したのだそうだ。
捜索の手は進められたがそれ以来彼の姿を見たものはいなかった。

さあ、人々はこの世界に戻っては来たがうまくやっていけるのだろうか。

そしてまた数ヵ月。

ピンポーン。
伸哉の部屋の呼び鈴がなる。
「あー誰だよこんな時間に。」
伸哉が時計を見ると朝の7時だった。
「はいはい、誰ですか〜。」
インターホンで話し掛ける。
「は〜い元気ぃ私よ!」
「はっ?なんだオマエ?ガキのいたずらか?」
「あー失礼しちゃうわねー私よ私!わすれちゃったの?」
ん〜、モニターに映るその姿はどこか見覚えのあるかんじだったが、小学生か中学生かそんなところの女の子だ。そんな知り合いはーーーあっ!
玄関のロックを外す。ガチャリ。
「あーやっぱり、オマエ「サキ」か?」
「ハイ、御名答!魔法使いのサキちゃんですよ。」
そりゃわからないはずだ、あの世界とは別人のような、どこかのお嬢様か?ってな服装と髪形だったんじゃな。
「ははは。サキ〜元気してた。なんだよその格好、アイドルのまねでもしてんのか?」
「えっ!伸哉知らないの?う〜ん私もまだまだなんだなぁ〜。」
とふと後ろでつけっぱなしにしていたテレビから「サキ」という名が聞こえた気がして振り返る

『・・・・と、そのディエロン患者の中にチャイドルとして人気があった「伊沢サキ」ちゃんもいたのですが彼女も無事復帰し今日から仕事を再開するそうです。それでは彼女のファンの声を聞いて見ましょう・・・・。』

モニターの中にはむさ苦しい男がサキちゃん復活おめでとーとか言っていた。そしてその画面の端のアイドル写真は、まさしく今ここにいる「サキ」姿だった。
「ん、まーそいうこと。今日はもう仕事だからあまり時間ないんだ。これ私のメールアドレスだから連絡してね、絶対だよ!じゃね。」
というとその紙切れを受け取って唖然としている伸哉の頬にチュっとキスして、走って行った。
なんだよ、子娘にあしらわれてんぞ僕。とほほ。
「ん、まあがんばれよー。」
「イエース!」
そのサキの笑顔がいつまでも続くことをちょっと祈った。でも大丈夫だろ?ねぇ。

あと、僕が仕事しているパソコン関係のことで一つ
ゲームソフトが発売された。それはネットを使って行われるロールプレイングゲーム。その世界にいる全ての人がどこからかネットに繋いでいる本物の人間だということで、今までにない無限の想像性があった。
そしてそれはあっという間に世界中に広まった大ヒット商品となる。
僕も少しやって見たが、やられたと思った。
少し懐かしい風景、そしてゲームの中で伝わる噂。
「この世界を統治している、いわゆるゲームマスターの名前知ってるか「キルラ」って言うんだゼ。南の地域で見た奴がいるってよ。」
「へーそいつ倒したら。俺がマスターになれるのかな?」
「バカ!むちゃくちゃ強いんだよ、この世界ではまさしく「神」みたいな存在なんだからな。」
「へーでも一度は見て見たいよな。」

愛子さんもいそがしい、いそがしいと言いながらも楽しそうだ。ときどき李先生も訪れてるみたいでいいことだ。
ときどきあれは夢だったんじゃないかと思うが、まあ夢みたいなもんだな、と思う。
とりあえず
みんな元気だ。

それでいいんじゃないかな。
それじゃまた、夢を繋いで合いに行きましょう。

「ディエロン」

「D-Online」

END

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