ディエロン

ディエロン STRAT To End 4

小泉愛子と李先生の姿がスッと消えた。

伸哉はもうここでは驚くことはしないぞ、と思っていたがやっぱりビックリした。
そしてぼんやりと放心状態で数分、体も少しは動くようになってきた。
と、ともに「ココにいたらヤバいんじゃねーの」ということも思いだしてきた、そのときに
ちいさな女の子がまたスッとあらわれた。
伸哉はまたビックリしました。
「伸哉くん行くわよ、私の目を見て。」
「えっ?えっ!?っもしかして愛子さんなの?」
「あーごめんごめん、まあ今は時間ないみたいだから早くして・・ん何よ?」
「・・・・若造り?」
えいっ、いうが早いか彼の頭上にチョップがさくれつした。
「いてーなぁ〜、やっぱり愛子さんだこのツッコミは。」
「あ〜ね〜あなたとコントやってる暇はないのよ。早くして。」
「はいはいっと、・・・・えっ、うわーーーーーー。」

ドスン
「やぁ伸哉くん早かったね」
李先生がにやりと笑う。変な体勢で落ちた伸哉はこしをさすりながらこの景色に見入ってしまった。
「すげー。」

こんな世界を持って入るのは私だけかと思っていた。私も一時期のツライ時も過ぎ大人になってからはこの世界に頼ることはほとんどなくなったのだけど、ときどきはここを訪れるときがある。リアルワールドでは体を休めることはできても精神はなかなか休めることはできない。私の様なやり方をしてる人はたくさんいるのじゃないだろうか?ずっとそのことを知りたかった。だけどコレは人間の最も深い部分であり、最も知られたくない部分なのだ。私は心理学や医学書をかたっぱしから読み始めた。しかしどこにもそれらしいものは載っていなかった。そのこと言ったとしてもそれは狂人の言葉として受け止めてられてきたのだろうかと思う。私は自分が少し怖くなる、自分が異常な人間ではないかと思ってしまうのだ。普通に生活し、人とも普通に話すことができる。だけども最後の奥底の話までは誰ともできない。言ったとたん、私はこの世界の全てから切り離されてしまう様な気がしたからだ。

そんなとき全国で「ディエロン」患者が急増した。私は救われた思いがした。しかし同時に思った。 「それはそういう風に使うものじゃないよ。」
と。
そして伸哉くんや李くんがキルラ歪んだ世界を止めてくれた。
みんなそれぞれに「世界」を持っていると私は思う。
それは自分のための世界。だけど間違うこともある。そういう時は他の世界の人が少し見せてやればいいだけのことなんだよ。
「ほら、君、僕と同じこと考えてるね。」
そうだよ、君は一人じゃないんだ。

青い空が赤く染まっていき、そして月が出て星が瞬き出す。
小泉愛子の精神が少し溶け込んでいったような気がする
小早川伸哉の精神も壁を取り去った。
李白栄の精神が流れ出す。
そんな場所がやはり必要なんだ、たぶん。
「ディエロン」世界に引きずり込まれた人達の心もその空の上をスーっ通って行く様だった。
それはお互いに共有しあえる人がどこかにいる、それだけのことでよかったんだと思う。
そのなかにサキの姿もあった。笑っていた。笑顔で答える。
そんな星空の中、最後にキルラの姿がみえた。
その姿は少し幼く感じられ、ソッポを向いていたが。恥ずかしそうにポソリと言った。
「今度はリアルワールドで僕の世界を造ってみせるさ。」

「できたら見に行くよ。そのときは連絡してくれ、ははっ。」
伸哉は笑った。
キルラもえへへと笑った。
愛子も李先生もあははと笑った。
そして僕らはそこで寝てしまった。
とても心地よい眠りだった。

そして目が冷める。ヴーンとパソコンの音で伸哉は目を覚ました。
「あ、帰ってきたんだ。」

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