ディエロン

OPEN The Window

炎がゆらゆらと揺らめいている。
ボクの心の中に。
それは色がなかった。
黒い炎が揺れる、それを見ていると穏やかになっていく。
八つ裂きにされた精神の破片が涙を流し終えて、新しい世界へとボクを導く。
新しい世界、それはまだ未成熟な世界。
いつ終わるともしれない不安定な世界。
そう、炎だ。あの黒い炎で、この世界を、より、完璧なものへと
「ディエロン」
この世界をボクの現実に、そしてもう忘れかけているアノ遠い世界は夢の中に閉じ込めて、しまおう。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

村外れの一軒家にドラゴンが一匹、羽を休めていた。

「ん、で?どうすりゃいいんだ?」
「うん、そうだね。それが大事なところだ。でもまぁ簡単なことだよ張本人をつかまえればいいんだ。」
「この世界を造ったヤツか?」
「うん、そう。」
「って李先生はそいつを知っているのか?」

「そんなのはこの世界に住む人間なら誰でも知ってるわよ。」

と、横からサキが口を挟んできた。
「やあサキもう大丈夫なのかい?」
「まあ、なんとかね。」
「ほーチビっ子のくせにしぶといな、ははは。」
と、伸哉が言ったとたんにサキの見事な蹴りが決まった。
「痛ててっ!・・・元気でーすね。かなり。」
「ははは、まぁまぁサキ。そう邪険にするもんじゃないよ。ついさっきまでこの伸哉君が君を看病してくれてたんだから。」
「・・・・・‥ふん、だからって関係ないわ。」
ちょっと顔を赤らめてふくれっ面のサキ。
「そーだー感謝しなさーい。」
と伸哉がおどけた声で言う。すかさずサキのシャープな蹴りが決まる。

「で、そいつはどこに居るんだ?早いことかたずけようぜ。」
伸哉は脇腹を押さえつつ言った。
「あそこよ。」
とサキが指差した。
窓の外に見える山、その指は山の頂にそびえる暗く大きな城を指差していた。

で、それから僕とサキと李先生は少し準備を整え、その城の入り口までやってきたんだ。

と言ってもそこはただの城門であって、城自体はまだ小さく遠くにあるのだ。
ここからはドラゴンで飛んで行くことはできないようだ、嫌な黒い雲が立ちこめている。
そして門は閉まっていた。

どーやって入るんだろ?と思っていたら、門の横にある小さな扉、まるで猫専用出入り口みたいな扉がカタンと開いて小さな生き物が二匹「キャキャキャキャッ!」と妙に高い声で笑いながら出て来たのだった。
「うわっ!」
僕はあやうく尻餅つきそうなくらい驚いた。その二匹の生き物は緑色の顔した小人だった。身の丈30センチあるかないかの人、赤ん坊の様な体に不格好なくらい大きい顔がのっている、そしてその顔は老人のそれだった。

「ヘイおまえタチィ!一体何のヨウかなぁぁ!!!!」
二人の小人は同時に耳障りな高い声でガナリたてる。
「もしぃぃおまえタチがぁ!」
「コノ扉を通りたいのならぁ!」
「我々の質問に答えられたのならぁ!」
「通して」
「「やろう」」

小人たちは何か奇妙なポーズで一方的に喋ってくる
「おいおいこりゃ一体何だ!?」
「まあまあ伸哉君おもしろいから彼等の話を少し聞いてみようじゃないか。」
そんな中サキだけはつまんなさようにまるで関心なくあらぬ方向を見ていた。

「ソレデはー質問デス」「です」
「あるトコロに嘘つきの男と正直物のー・・・。」

とそこまで小人が話し出したときにサキが小さな呪文を彼等にぶつけた。
「ギャッ!ナニをスル!」
あいかわらずの高い声を発しながらその小人達は何か文字列の様なものに分解され渦巻き消えて行った。唖然とする僕。

「サキーこれからがおもしろいところなのに。」
と李先生が言うとサキはちょっと怒ったかんじで
「もう!李先生はのんびりすぎるの!こんなのただの防御プログラムなんだから分解しちゃえばすむことじゃない、いそがないといけないのよ私達は。」
「わかっているよ。ただちょっと伸哉君に教えておきたくてね。」
と一呼吸おいて李先生は伸哉に言った。
「えーと伸哉君。ここはまるでゲームみたいな世界だけど、私達が目指しているのはこの世界から脱出することであって、別に魔王をたおして世界の平和を取り戻すってわけじゃない。そこんとこをよく理解しておいてくれ。だからモンスターが出たからって全部倒すさなきゃならないわけじゃない。私達はただこの世界を造ったヤツのところに行って少しプログラムに手を加えるだけの話だ。」
ああ、そうだそうだよな、そうだった。頭で理解してもちょっと意識がついていかない、そんな頭を整理する暇もなく二人はちゃっちゃと城門を開け、中へ入って行った。

ああ、で、さっきの小人の質問の答えがとても気になるのだけど‥‥・・質問さえもわからないんじゃどうしようもないな。

RUN 17