ディエロン

FLY SKY

「おわっーーーーーーー!!」
ドラゴンは空を舞う。李白栄の乗ってきた龍は李と撲とサキを乗せて空高く舞い上がる
「すごいな。空飛んだのは初めてだよ。」
伸哉はただ素直に感動していた。
「まあ、しばらくはこの空の散歩を楽しんでくれ。少し時間がかかるからな。」
「なぁ李先生、一体どこに向かっているんだい?それとこの世界の仕組みや、その理由もそろそろ話てくれないかな?」
「ん〜そうだな。それじゃ初めから一通り話してみようか・・・・。」

李先生の話の内容はだいたい僕が想像した通りのことだった。
ここは人々の造り上げた妄想世界だということだ。
しかし、少し違った。僕はこの世界は様々な人々の思念が寄り集まって、このような現実を越えるリアルを造ってしまったのだと思っていたのだが、それは違った。
このディエロンはたった一人の想像で造られているのだ。
昔、このディエロンの妄想が始まった、第一の発現者、その一人がこの広大な世界を造り上げていると言う。その他の人達はただこの世界に吸い寄せられて来ただけに過ぎないというのだ。

僕達が住む本当の世界よりもこちらの妄想の世界に魅了されてしまった人、それがディエロン患者なのだと言う。

「彼等は肉体は現世に置いてきたまま、この世界に来ているんだ。まあそれ自体は私達が眠っているときごく普通にみる「夢」と同じものだ。しかし伸哉君、君も感じているだろうこの世界のリアルを。」
李先生は前を向いたまま話し続ける。
「ここにいれば現世に置いてきた肉体など不要なのだよ。だけれどもこの世界にも「死」はあるんだ。ここにいる人達のほとんどが今、現世のどこかの病院で植物人間として生かされている。その生命維持装置を切ればここにある精神も消えてしまうんだ。・・・タマシイというものがあるのかはしらないが、肉体が消えればその人物は消えてしまうと言うことだ。」
「でも李先生、それならばそう心配することもないんじゃないか?現世に愛想をつかした奴がここにやってきて、そのうちくたばるんだろ?ほっときゃいいことじゃないか。まあ僕は早くここから出たいんだけどね。」
「ふふ、伸哉君それはあまりに楽観的な考えだよ。君みたいなしっかりした人間は少ないんだよ。世界のほとんどの人間は誰もが夢の世界で暮らしたがっている、現実にボヤキ、嘆きながらね。それは最近増えてきた精神クリニックの数を見てもわかるだろう?」
「ふ〜ん、そーゆーもんなのかなー。」
「で、そこで問題が起きた、ほら見えてきたあの地平線のあたりを見ててくれ、ゆっくり近づいてみるから。」
そう言うと李先生はドラゴンのスピードを緩めた。

「ん〜なんだか暗くてよく見えないなぁ〜。」
「いや・・いくら目を細めて見ても見えないよ。あれはただ純粋に「闇」なんだ。」
「えっ?」
そう、そこには突然に闇が広がっていた。この世界が「そこ」で終わっていたのだ。空も大地もそこからは無い。世界の外周をぐるりと闇が取り囲んでいた。
「ちょっと李先生、これはなんなんだ!?」
「これは世界の果てなんだよ。そしてこれは日を追うごとに世界を浸食し始めている。よく見てご覧、境目で闇がうごめいているのがわかるから。」
実際彼の言うとおりそれは視覚からだけでなく、肌で感じることができた。
「この世界に終わりが近づいて来ている」のだと。

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