ディエロン

THIS GAME

はぁ、はぁ。
伸哉の額に汗が光る。
モンスターはまだ十数匹残っている。
実際、魔法を使うことがこんなにも疲れるものだとは思わなかった。
魔法はただのプログラムに過ぎないのだが使用する際にかなりの集中力を必要とした。サキもこの圧倒的な数の前には少し苦戦したいるようだ、本当の年齢はわからないが、見ためは小さな女の子なのだ。体力的にきつそうだ。
と、思っていた時に目の前に影が落ちた。
「危ない!」
サキさけんでこちらに火の魔法を放つ。
僕の後ろには剣をふりかざして今まさに僕に切りつけようとしていたトカゲの化け物がいた。
「うっうわ!」
と身まがえた僕だったが。僕が魔法を唱えるまでもなく、その化け物はバタンと後ろに倒れてしまった。
「バカ!しっかりしてよ・・・ね・・。」
と、言ったところでスッとサキは倒れこんでしまった。
「おいサキ!しっかりしろよー・・・・・・おっ?」
と顔を上げ回りを見ると、モンスター達が僕とサキを取り囲んでいた。
彼等に表情があるのかどうかはわからないが、その鋭い牙のある口の端をクイッともちあげ、ニタニタ笑ってるような気がした。
一匹や二匹ならどうにかできる自信はあったがこの数じゃどうなるかわからない。
チクショウ!こんなとこで死んでたまるかー!!

バサリ、バサリ

と、その時遠くから羽音のような音が聞こえた。鳥?音はしだいに大きくなり僕の頭上にやってきた。
それはたぶん、「ドラゴン」とかいうものじゃないかと思う。
さらに敵が増えるのか?
なんてこった!もうダメだ!と思ったときそのドラゴンがしゃべった。
「やあ、君が小早川伸哉くんかい?ちょっとてこずったみたいだね、だけどもう心配ない、そら!」
なんでドラゴンがしゃべんだ?とか思う暇もなく、そのドラゴンはながい首をうねらせ、するどい牙をむき出しにし火炎放射機の様に炎を吐いた。
力の差は歴然だった。そこにいたほとんどのモンスターがやられるか、または逃げ出した行った。

ドラゴンがフワリと大地に降り立つ。
その背には一人の男がまたがっていたのだ。ドラゴンがしゃべったのではなくこの男がしゃべっていたのだとやっと気が付いた。
「あんたはいったい・・?」
「そうだね、自己紹介がおくれたね私は・・ん?サキ大丈夫かい?」
意識を取り戻したサキがこういった。
「リー先生‥来るの‥遅い・・。」
リー先生!?こいつがあの本を書いた奴なのか!
「はははすまないね、でも死ななかったからよしとしてくれ、うん。そうだ伸哉君、私が君をここに呼んだ李白栄だ。よろしく。」
「は、はぁ。」
なんだかまだ事態が飲み込めないが「まだこれからが始まりだよ」といった顔の彼をみて僕はドッと疲れが押し寄せてくるのを感じたんだ。

GO14 sea