ディエロン

GO into

それで、私はいったいどうしたらもとの世界に戻れるのだろう?

小泉愛子は考える。キルラはどうしたの?といった風でこちらを見てるが、彼に話してもしかたのないことだ。しかし今頼れるのは彼しかいない。
「愛子どうしたんだい?僕でよければ相談に乗るよ、まあ出来る限りでね。」
屈託のない笑顔で彼は言う。
「う〜んそうねぇ〜・・・この辺りのことに一番詳しい人って誰かしら?できればその人に会いたいんだけど‥‥・・。」
キルラはふっと一瞬考えこむと、こう切り出した。
「困ったね。一番というとココのリー先生ってことになるけど・・どこ行ったか皆目見当もつかないからね。」
「そう・・それは困ったわね。」
と、私が少し落胆した表情をみせると、彼はああ、そうだ、と思いだしたように言った。
「二番目ならいるよ。」
「えっ誰?」
「うんとね、ここからちょっと離れた所なんだけどね、サキっていう魔女なんだ。」
「魔女!?」
いいかげんこの世界にはなれてきたつもりだったがやっぱり驚く、いや、当然と言うべきか。
魔女くらいいるわよね、こんな世界じゃ。

そして私はキルラと共に魔女サキの館まで行くことになった。

はぁ・・・・・・・。
いや、私の認識が甘かったのだろう、「ちょっと離れた所。」キルラはたしかにそう言った。
たしかにちょっとの距離なんだろう、この世界の人たちにとっては・・・・ひと山越える距離なんだが。
「どうしたの愛子、まだちょっとしか歩いてないよ、いそがないと日が暮れちゃうよ。」
「・・・うん、わかってるけど・・ちょっと休憩しない。」
日頃の運動不足が身にしみる。
「う〜ん。まあいいか・・・・・ここらへんでいいかな。」
彼がそう言ったとき私は既にすわりこんでいて、その変化に気付かなかった。
いや一瞬イヤな空気が漂ったのは気付いていたのだが、あまりにも疲れていたのとそのイヤな感じが一瞬にして消えてしまったので、勘違いかな?と思ってしまったのだ。

そう、それは精神異常の患者がときおり発するオーラとでも言おうか。

ふっと目をあげるとキルラの姿がなかった。
「あ・・れ・・キルラ?」

タン。
背後で軽い衝撃が走った。
視界が突然白くなってくる。

「・・・・これで二度目だな、意識を失うのは。」
小泉愛子はぼんやりとそんなことを考えながら
意識を暗い闇のなかへ落としていった。

GO12