ディエロン

travering

「さてと、どうしたもんかね。」
突如、現実世界からその姿を消してしまった彼はボソリと言った。
彼、小早川伸哉はほとほと困り果てていた。

この村の住人に助けられ、ここがあの妄想世界「ディエロン」だということも分かった。そしてそれから数日いろいろ調べては見たのだが、妄想の世界というわりにはかなりしっかりとした「現実」を創り上げている。
「僕にどうしろってんだよな、別にさらわれたお姫様を助けに行くってわけでもなさそうだし。」
しかし気になるのは俺をこの世界に呼び寄せたと思われる「サキ」って女だ。あいつは何者なんだ? あいつはここから俺達の世界へ通信を送ってきたのだろうか?もしそうだとすればサキを探せばこの世界から脱出する方法もわかるだろう。うん、そうだな、まずそいつを探すことにするか。

「おーいヤム!ちょっとこっちきてくれないか?」
そう伸哉が言うと奥の部屋でそのヤムと呼ばれる少年が不機嫌な声で答えた。
「なんだよ〜シンヤ。えらそうだな〜助けてやったのは僕なんだゼ?もっとうやまいの気持ちってのを持ってもらわないとー。」
「へいへい、わかってるって。感謝感謝。でさぁ聞きたいんだけど。」
「それでおしまいかよ。・・まあいいや。で、何?何を聞きたいのかね?」
「おまえこそえらそうにガキのくせして。」
「ガキって言うなよ!」
「ははは、んでね本題に入るよ。ヤムここらへんに「サキ」って名前の奴いないか?」
ヤムは少し考えこんだようだが、ふっと目を上げて答えた。
「うん、シンヤこのあたりにその名前の人間はいないよ。」
「あぁ、そうか・・・・。」
伸哉が少し落胆の表情を見せた。
「だけどね。その名前には心当たりがあるよ。」
「ほ、本当か!?」
「うん、でも僕は直接あったことがないんあだけどね。魔法使いだよ。魔法使いのオババ様だよ。」 「なんだエライ人なのか?どこにいんだ?」
「そうだね、たぶんエライ人だと思うよ。でもずっとあの山の上にいるんだ。ここ数年下りてきてないんじゃないあかな?僕も話でしか知らないんだ。」
そう言ってヤムは窓から見える一つの山を指差した。かなり背の高い山だった。
「う〜んそうか〜。」
「なんだ?シンヤ?まさかサキに会いに行こうってんじゃないだろうね。」
伸哉はヤムに目で答えた。
「だめだよ。あの山は神の山なんだ。僕達は入っちゃダメなんだよ。それに実際問題あの山はかなりきついよ。いろいろとね。」
「ふ〜ん。でも俺ね、そいつに会わないといけないんだよ。」

それから数時間後、小早川伸哉はヤムに山の入り口まで案内してもらいその「サキ」のいる場所を目指して歩いていた。
「ふぅ、たしかにこりゃキツイ。」
しかしこの道であってるんだろうな?こんなとこで遭難したら生きては帰れないだろうし、まったくいったいなんでこんなことになってんだろーな。はぁ。
伸哉はため息をついた。それもそうだ。山登りと言っても人の入らない山なのだ、道なんてあってないようなものだ。伸哉が不安になるのも無理がないだろう。しかし彼には今こうするしか他にやるべきこともないのだ。
「ん!?」
前方の繁みがザワっと音を立てたような気がした。何かの動物か?肉食でないことを祈るばかりだ。 伸哉はじっと息をひそめる。相手もこちらをうかがっているようなそんな気がする。数秒が数時間にも感じられた。
と、突然音もなく目の前に体長が5メートルほどあるドラゴンが現われた。
「!!!!?」
一瞬伸哉は息が止まるかと思った。だがすぐにこれがニセモノであることがわかったのだ。これはまるでゲームセンターとかで見る立体映像そのものだった。
「おい、誰だ?これ映してんのは。こっち側の人間じゃねーな。なんでこんな技術を・・とりあえず顔出してくれよ。」

ガサリと葉の揺れる音が後ろで鳴った。
俺は振り向きソイツの姿を確認した。
「へっ?」

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