ディエロン

WHAT IS THIS?

「ん〜今日はなんだかお客さん少ないわね。」
小泉愛子はあくびをしながら言った。朝から今、昼の十二時まで相談者はたった一人だった。それもただのストレスからくる胃潰瘍だった。まあ”ただの”なんて言っちゃあ本人には失礼なんだけどね。
そうだ、電話してみよう。
そう、今日はなぜか小早川君がここに来ていない。今日は来ると言っていたし、何よりいつも時間に正確な彼が連絡もなしに休むとは考えられない。もしかしたら風邪でも引いているのかな。ふふ、弱ってる小早川君も一度はみてみたいものだわね。私が年上だってのに時々私を子供扱いするときがあるんだから。
トゥルルルル、トゥルルルル、
呼び出しが鳴る。
カチャ
「ただいまココにはいません。あとからもう一度おかけ直しください」
録音された女の声が聞こえた。
家にいないのかな?それとも起き上がれないくらい風邪ひどいのかしら、まあ風邪かどうかは知らないけど。それとも寝坊?
そのとき彼女は受話器を当てた耳にチリッと痛みを感じた。

「あっ・・つつ、何コレ?漏電?」

ふっと顔を前に上げると一瞬、立ちくらみの様な感覚におそわれた。ほんの一瞬だっが彼女は異様な感覚を感じたのだ。まるで世界が止まった様な。
嫌な予感がした。彼女は表の看板を「CLOSED」にすると愛車のベスパに乗って、小早川伸哉の家へ向かった。

小早川伸哉の部屋には照明がついていなかった。きちんと整理された部屋の床に何枚かプリント用紙が散らばっていた。パソコンのモニターがつけっぱなしになっていてスクリーンセーバーのアニメがちょこちょこ動き回っていた。そしてその横には飲みかけのコーヒーカップがあった。
おかしいいわ。小泉愛子は思った。
「小早川く〜ん。いないの〜?」
呼んではみたが返事は帰ってこない。玄関の鍵は開いていた。その時点でかなりおかしいのだ。もしや泥棒?・・しかしそれにしては何か盗ったような形跡もないし。わけわからないわね。
ふうっ、これ以上別に何も発見できないし、もしかしたらちょっと出かけてるだけかもしれないしね。ちょっと待たしてもらうかな。そう考えて彼女はパソコンの前にある椅子に腰掛けた。
と、そのとき。手が何処かにあたったのか。パソコンがヴォンと音を立てた。

「わっ!何よ?」

彼女がパソコンの方を見ると一枚のディスクが排出されていた。彼女は「なぁんだ」と思いつつ、それを引き出した。
一枚のディスクのラベルには走り書きで「ディエロン」とだけ書かれていた。

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