■電車■




◆「事故がアレで節電でこのありさまか」

「あぁ。困ったことになったな、俺達”鉄道マニア”にとってはな」

「いや、俺は逆にこれはチャンスだと思っているぜ」
「なにがだよ?電車は電気で動くのだぜ?事実本数を減らしているところさえある」

「いいか、俺達”テツ”は乗り鉄、撮り鉄、時刻表マニア、など細分化していったが、まだ幼かったころ、たぶん共通して見たものがあるはずだ」
「ん?なんだ?地方によって電車は違うしそれを知るのがまた楽しみなのだが、共通して?」

「…‥D51」
「国鉄D51形蒸気機関車!通称デゴイチか!」

「そうあの黒く力強いフォルム、鉄の塊が煙とうなりを上げ疾走するあの勇士!」
「カッコいい!」
「そう、カッコいいのだ!」
「うむ、しかしそれが何のチャンスなのだ?」

「ふふふ、電気が使えない…‥ならば蒸気機関車ならどうかッ!!」
「な、なにぃ!!??…‥いや、待て待てそんな時代を逆行するようなことを第一、二酸化炭素出しまくりだし、エコじゃない」
「ふんたしかに。だがオマエは今なんの仕事に就いているのだっけ?」
「ッ!…‥エコ関係の会社だ。そしてオマエは」
「そうJRの社長だ!」

「まさか、まさか、だよな。いや、そんな出来るわけが無い、そんなこと出来るわけが無い!」
「バカめ!あの事故のことはみんな言っていた「想定外の出来事」だと。おい!想定外とはなんだ!」
「起こりえないことだ!」

「しかし、起こった!つまり想定外のことだろうと、出来るわけがないことだろうと!出来るんだよ!起こりうるんだよ!俺達が映像でしか見ることのなかった蒸気機関車がこの地を走る様を!うなりを上げる煙突を!力強く回転する車輪を、鳴り響く汽笛を!」

「ふ、ふははははは!よーしやるか!」
「あぁ、やるぜ!」

と、そんなことは出来るわけが無い、成るわけが無い、不可能なことだ。
そうあなたは思うのだろう。
だが、しかし。
数年後、あなたは見て聞くのだ。
そして乗るのであったッ!!

完!









わーむほーる