「あらしのよるに」



あらしのよる、オレは道に迷いほうほうのていで一件の小屋に潜り込んだ。
あら?
声がした。どうやら先客がいたようだ、しかしそとはひどいあらしで月も見えぬまくらな闇。
声の主の姿が見えぬどころかにおいもせぬ。
しかし、このあらしをやり過ごすためオレは声の主と一夜の宿を共にした。
まぁなんといおうかこのお方、どうにもオレと調子が合う様で一夜を明かして語り合った。
姿も見えぬこのお方をオレは生涯の友になる者だと思い。
風が去り互いに別れを告げるとき、約束をした。

また、会いましょう。必ずや会いましょうと。
そうして結局姿も見ぬままに、オレは村に帰り数日後、約束通りに会いに行った。

友達になるのになにの問題もありはしなかった。
ただ、オレがオオカミで彼はヤギだったのだだけのこと。

そうさ、こんなにも楽しく話せる相手など彼のほかにいやしない。
誰がなんと言おうがかまうものか、楽しいんだからしょうがない。

だがオレが彼と木々のほとりでおしゃべりを楽しんでいるときに
仲間に見つかった。
「なんだ、おいしそうなヤギじゃないか、少しわけてくれないか?」
オレは嫌だと言ったが。
ソイツはしばらくすると仲間を引き連れてやってきた。
狩りをするために。生きるための糧を喰う為に。

オレは彼をくわえると全速力で逃げた。
逃げ足には自信があった。
仲間の追跡を振り切ると
オレは彼に言った。
「さよならだ」
彼も言った。
「さよならだね」

たまたま話をしてしまったのがいけなかったのだ。
料理と会話をするやつなんていない。
おしゃべりのできる相手を喰うやつはいない。
それだけの話さ。

オレは彼を崖に突き落とすとその場を離れた。
下は川だ、運がよければ助かるだろう。

帰り道、とても腹が減っているのに気が付いた。
柵の中にヤギを見つけた。
おいしそうだ。
と思ったときにはオレはソイツの腹を引き裂いて
その内臓を、肉をむさぼり喰っていた。
あぁ、とてもおいしいなぁ、とても、とても、おいしいなぁ。

ドン。

夢中で喰っていたからか、それとも変なことを考えていたからだろうか。
オレはそのにおいに気付くのが遅すぎた。
人間のにおいだ。
そしてケムリのにおいがする。
腹が焼ける様に熱い。
血があとからあとから溢れ出て止まらない。
か、体も、も、もううまく動かせない。
オレはふらふらと数歩進んだあと、ぱたりと横になった。

人間はヤギをつれていくと、オレを残して去っていった。

涙が溢れ出た。
なぜなんだ?
人間よ、なぜ?
なぜ、オマエはオレを喰わないのだ?








※注意、映画「あらしのよるに」とは違う場合があります。
というか予告だけ見て書いたのです。
こんな話だったらイイナ♪



わーむほーる