DownLoad Brain


実はここだけの話なんだが
私は特殊な能力を持っているのだ。

まぁ超能力とかそういったたぐいのものとはちょっと違うのだが
そう記憶力のことだ。

私は記憶力が異常と言えるほど優れている。
たとえばそうだ、先ほど本屋で立ち読みしていた雑誌を今ここで全部朗読することもできるし、一週間前に擦れ違っただけの人の顔も正確にスケッチすることもなんら造作のないことだ。
というよりは私は自分の目で見たもの聞いたものを全て覚えていると言ったほうが話は早い。

人間の脳がそんなに記憶出来るのか?と言った疑問を持つ方もおられるだろうと思うが、もちろんそれは出来ることなのである。実のところそこのあなたも小さな子供から老人までそれは出来るし、実際にやっていることなのである。あぁそう、でも覚えてないよそんなこと、と言いたいのはわかるが覚えてはいるのだ、ただそれを思い出せないだけなのだ。

人間の脳は広大で、現在の進化進歩した最新鋭のコンピューターを持ってしても人間の脳を模倣するに至らない。つまりは私にもそしてあなたにもコンピューター以上の能力と容量を持つ脳がココにあるのである。

そして私は意識的にその能力を使用できるようになった。
つまりは思い出す方法だ。
これはわりと意識すればできることだった。
自分の脳をコンピューターに見立てて考えればよかったのだ。
基本的に人間には忘れるという機能はない。ただ思い出せなくなるだけなのだ。
あなたにもあるだろう?完全に忘れたと思っていたことがふとしたきっかけで思い出されるというコトが。そう忘れてはいない、記憶の糸が繋がらなかっただけなのだ。

この能力は大変便利なもので私はこれを使い快適な生活を送ることが出来た。
そうしていたとき、ふと思ったのだ。
そう、まさにコンピューターと同等、それ以上の機能があるのだからコンピューターと同様の機能性能で使用することが出来るのではないだろうか?自分の脳を。。

パソコンで絵を書ける、それは人間の入力をパソコンがプログラムを介し実行することである。
そして私も目をつぶると今日見て来た風景を綿密に思い出せことができるし、それを絵に変換することだって脳の中では簡単なことだ。
音楽を頭の中で演奏することもできる。
つまりは私の頭の中にもコンピューターと同じようにOSがあり、そこに多種多様なプログラムを走らせることによって、様々の事象を整理しているである。
このことに体感として気付くか気付かないかが分かれるところだが。
しかし私にはこの考えがぴったりとはまった。
それからだ、私は自分の脳内を解析し、自身の脳内に走っているプログラミング言語を解読することに没頭し、そして成功した。
まさにそれはプログラムであり、私はその瞬間生まれ変わったかの様な爽快感を味わった、世界が広がる感覚。。いや、自分自身が広がったと言った方が適切か。

それからがおもしろい、コンバートだ。
パソコンに使用されているプログラムを私の脳内に変換して取り入れる。
私の機能が向上していく。
ネットからいくらでも取り出せるので私の能力は無限に広がる。
運動機能もスポーツ選手のシュミレートを取り入れ向上させることができた。
私は無限の世界を手に入れたのだった。

しかし私はコンピューターではない人間である。
どんなにあがこうが「老化」は防ぐことができなかった。
どんなに素晴しい能力を持っていようが全ての人に同等に死は訪れる。

しかし、そのときだった。
私は面白いものを見つけた。
とある企業の研究チームが開発しているA.I.だった。
A.I.つまりは人工知能のことだ。
コンピューター上で人間の脳を再現すること、研究者達の永遠のテーマだった。
それを見た私はその基本がほぼ成功していることがわかった。
私の脳に非常に近い(原始的ではあるが)構造になっていたからである。
しかし研究はそこで行き詰まっていた。
基本はできているのだが人間の様にするには膨大な量の情報、データを入力しなければなからないのだ。言葉を覚えさせることはもちろんのこと、感情などどうやってもプログラミング使しようのない問題が多々あったからである。
しかし、私にはそれが出来る。

私は迷うことなくそのA.I.のプログラムを私の脳内に取り入れた。
既に私の中には膨大な情報、そして人間としての記憶がある。
A.I.はそれをあっという間に取りこんでいった。
そうするとどうだろう!
彼、そう彼だ、私の全ての情報を取りこんだ彼は私の中で私になった!
私の脳の中にもう一つの私が完成したのである。
プログラムとしての存在の私。
お互いに何も会話はいらなかった。
次にすべきことは分かっていたからである。 私はそのプログラムをネットに流した。
世界中の様々な場所で「それ」を見る人がいる。
そして初めにも言ったが思い出せないだけで人間は誰しも一度見たものは覚えてしまうものなのである。
私は増殖した。
決してフリーズしたりウイルスに犯されたりしないコンピューター、、つまりはあなたの脳にジャックインすることに成功したのである。
オリジナルの私はあと何十年か経てば死に、土に還るのだろうが、
プログラムという存在で有機的な存在に住む私、私と同じ記憶と機能を持った私はいったいこれからどう進化していくのか?
楽しみなところだ。


Transfer interrupted!


わーむほーる