恋愛チャイム


今日こっぴどくフラれた。
高校時代から友達として付き合っていた彼に告白したのだ。
「ゴメン、俺は友達としてしかみれないから・・。」
私は、あはは、そうだよね。うん、わかった。と笑いながら彼と別れ家路につく。
途中はもう走っていた。
部屋に着くとベットに倒れ込み無言で叫んだ。

シャワーを浴びて少しだけすっきりとする。
ふん、だ。あんなやつなんか別にかっこよくもないし、ドジだし、お金にもならない演劇なんてやってるし。いつも夢ばっかり見て私のことなんてちっーともみてないんだから。あんなバカなやつ好きになんかなるわけないじゃん、あんなバカ・・好きになんて・・。
あう。
「あーもう寝る!寝てさっぱり忘れます!」
私はそう思いベットに潜り込む。
寝返りを13回ほど打った。
・・・眠れない・・・・チクショう。

私はもう寝ることを諦めてテレビでも見ることにした。
でもこんな時間だ、たいした番組はやってない。
パチパチとチャンネルを変える。あっ、通販番組をやっていた。
これが結構おもしろい。
深夜のせいもあってか軽快な話術のせいなのか。
私は電話をかけ、その商品を注文していたのだった。
失恋の後だったからなのか変な興奮をしていた。
商品はカーワックスだ。バーナーで焦がした車体もピッカピカになるすぐれ物なのだ!
まぁこんなことは電話の後で気付くのだが。私は車なんか持っていない。ていうか免許も持ってないのだけれど。
そのときは「これは凄い!絶対欲しい!!」と思ったのだからしかたない。

その通販は地域宅配サービスを実施しており注文後2時間で届くというのだ。
私はドキドキしながらカーワックス「ピカリン2000」の到着を待った。
しかしこんな時間の2時間はわりと長く感じるものだった、少しうとうととしてきたころにピンポーンとチャイムが鳴った。
宅配便だった。

私は着払いの料金を払うとドキドキしながら、梱包を解く。
中にはテレビで見たのと同じピカリン2000が入っていた。
私はちょっとはしゃいでいた。
カーワックスなのだがちょっと使ってみようと台所のステンレスの所に塗ってみた。
驚いた!本当にピカピカになった!大抵こんな商品は実際に使ってみるとガッカリすることが多いのだが。これは本当に大げさなトニーの広告文句にも偽りはなかったのだ!
私は次にお風呂場も磨いてみた。ピカピカになった!
フローリングの床に塗ってみる。ピカピカになった!!
タンスにも、壁にも、テレビにも塗ってみよう。ピカピカになった!!!
部屋がピカピカになった。
光る部屋。
私はちょっと試しに自分の爪に塗ってみた。驚くほどぴかぴかになった。それはとても綺麗だった。
私はついには自分の体にもそれを塗ってみた。・・・私の体もぴかぴかになった。部屋全体が凄く綺麗な光りを放っている。あはは、すごい、すごいや。あははははは。

私はとても楽しい夢を見ていた。
目を覚ますとまだ夜中だった。
テレビをつけても砂嵐。
まくらが涙に塗れていた。

ピンポーン。
チャイムが鳴る。
宅配便じゃなかった。



わーむほーる