梅雨どきの怪談

あれは忘れもしない、春も少し過ぎた雨のシトシトと降る季節。
私は本当の恐怖というものを感じた、そんな最も悪しき日だったのです。
私を震え上がらせたヤツ、彼は目立たなく、暗い性格のヤツで、雨の降るようなジトジトした日が好きだという。
そんな彼が私を待ちかまえていた。
何のために?
いや、彼も悪意からそうしてるわけではないのだ。
それはわかっている。
しかし、私には耐えられないのだ、彼の存在が。
あのぬるりとした肌、うつろな目、表情のつかめないその顔、すべてが私の嫌悪の対象だった。
そんな彼が影にひそみ、待っていたのだ、私が現われるのを!
事件は起こった。
突然のことに私の体は硬直し、まぶたを閉じることさえままならなかった。
彼が、私の唇をうばったのだ。
彼はぬらりと私の唇を舐めた。

「キャーーー!!」

私は叫び声を上げ、彼を投げつけた。
‥‥投げつけた?

そう、彼はとても小さいのだ。
まるで、小さな虫のごとく。

なめくじ

私が一番嫌いな生き物なのよ!
だから梅雨ってイヤなのよ。どこもかしこもジメジメジメジメ。
そうよ。私が今いるのは洗面所、
こんなとこにもあの野郎は出てくるわ。
別に流しのとことかにいたら、水でジャーって流してやるんだけど、今回はすっごく見えにくい所にいたのよ。あ〜も〜ヤダヤダ!

私ね風邪とかひかないように、家帰ってきたら、ウガイすることにしてるのよ。ね?いいことでしょ?
それで、あなた聞くけど、ウガイするときってコップの中なんてあまり見ないでしょ?
でもね、いたのよ。

なめくじ

私はウガイをするためにコップに水を入れ、水を口にふくみました。
そのとき唇にぬるりとなんだか変な感触がしたのです。
私はコップを口からはなし、コップの中を眺めます。
銀色のコップの中には水、そしてその水に浮かんでいました。
少しちぢこまった「なめくじ」が。

「キャーー!!!!!」

おしまい

P.S. あのときもし間違って飲み込んでしまうという可能性を考えると私はもう‥‥

わーむほーる