光に向かう前の暗闇

私はまだ生きている。
誰が死のうが生きていようが
生きている。
白いベッドで寝る私
足音が響く
その音はだんだんと大きくなり私の部屋の前で止まった
「さあ、手術の時間だ準備はいいね。」
私は震える左手をおさえ、コクリとうなずく
成功の確率は3%
涙は出ない。
私には自信がある。
私は死なない。
私が死ぬと涙を流すヤツがいる
そいつは安物のドラマとワイドショウしか見ない
だから人が死ぬシーンでしか涙を見せない
そう教えられてきたバカなヤツ
悲しいから泣くのではなく悲しいシーンだから泣くヤツだ
そんな悲しみに酔い、悲しんでいる自分を愛するヤツのために死ぬわけにはいかない
あなたに泣いてもらったところで私は嬉しくも何ともない
あなたは私の死を悲しんでいる自分に気づき、なんて自分はやさしい心をもった人間なんだろうと思うのだろう
だから、私は生きる。
あなたの作る陳腐なドラマに付き合っている暇はない
私が何度あなたを殺そうと思ったか、何度自分を殺そうと思ったかあなたは知らずに泣くのだろう
そんなことを許すものか
だから、生きる。
今になってやっとわかった
私は生きなければならない
なんとしても
だから大丈夫、死ぬわけがない、絶対に!
私は手術室に、
「では、はじめます」
その部屋は静かですこし声にエコーがかかる
私は目を閉じた

わーむほーる