寿町での話

雪・・・。
白いとっても白い雪
月もない暗ぁい夜空にふわりふわりと落ちてくる
窓のあかりがまた一つ消えていく
僕は黒くて丈の長いコートを羽織りふらりふらりと歩いていく
明るい町には全てが在ったように思えた
いや在ったのかもしれない
しかしこれだけははっきりと分かる
あの場所の人はいなかった
僕の足は町からかなり離れた小高い丘にたどり着いた
草花にほんのり雪が積もっていて微かな光を帯びていた
ふと目を揚げると少女が一人町を眺めていた
こんな所で何してるんだい
なにも・・・ただあの町が怖くって
みんな心で思っていることと違うことをしているわ
君にはそれが分かるのかい
ええ、分かるわだって皆仮面を被っているんだもの
あらあなた仮面を忘れてきたの?
それじゃあ町には帰れないわよ
いいんだよ僕はもう
・・・・私は向こうの町に行くけどあなたは?
そうだなとりあえず海の方まで行ってみようと思う
そう、それじゃあ今度会うときが在ったら本当の笑顔を見せてね
それとその白いコート素敵よ、バイバイ
えっ白くなんか・・あれ
少女の姿はもう小さく、後に残った僕は雪の積もったコートのまま少女と反対の方向に足を向けた

 

わーむほーる