call3
死んだことに気づかずにテレビを見てる人
----------田嶋 時教----------

ある町のはずれの小高い丘の上に木々に隠れるようにして
子供達に「お化け屋敷」と言われている時代がかった洋館があった

「僕は生れてからずっとこの館で暮らしてきた。」
長い廊下、どこまでも続く扉、窓から光りの差す螺旋階段
「そんなお屋敷が僕は嫌いだった。」

五歳のころだったと思う。
父がこんなことを言ったのを覚えている
「時教、おまえはこれからいろいろなことを学ばなければならない。と、言っても学校の勉強のことじゃない。人を見るんだ。人が何を考え、どう行動するか、そしてそれは意味があるのか。わからなくてもとりあえず人を見ろ!。」
その言葉を最後に父には会っていない、仕事の都合らしいが時にメールが来るくらいで、実際に顔を会わせることなく
僕は十六歳になった。

父の言葉通り僕はずっと人を見てきた。
「おもしろくない」
これが僕の答えだった。
全ての人が見ていてイライラする。とにかく自分だけの常識をふりかざして、自分の都合のいい情報だけを掴み、他人をおとしめ自分の位置を見掛け上高くするのだ。
こんなことでは人全体としてはレベルは下がる一方だと僕は思うのだけれどもだれもそんなことを言わないので不思議だった。

今日も帰り弱い人に会った。アンケート調査のふりで近ずいてきたシューキョーの人だった。特に用事もなかったのでちょっと相手をして見た。その彼は世界の終末を望んで自分だけは救われると思っているよくいる人だったがそのアンケートがバツグンにしっかりしたものだった。一つの考え方をおしつけるものでなく全ての角度からその人がどのような考え方をしてどんな思想を持っているのかを合理的にそして的確に判断できるものだった。僕もおもしろくてあっという間に数百問の心理テストのようなものを終えた。
「こんなアンケートを考える人がいるのならこの世界も捨てたもんじゃないな。」 と、思わされるほどのものだった。シューキョーの彼の笑顔は怖かったが、嬉しいことだった。

----------ビリー・タジマ・ハンプソン----------

僕の家は町外れの小高い丘の上にある
近所の子供達から「お化け屋敷」といわれている
僕はここでずっと暮らしている

母はいない。よく知らないが僕を生んですぐに死んだらしい
父はいそがし人らしく。初めて父に会ったのが五歳のときだった。
それも数日間だけで、あとはメールだけで実際に顔を合わせることはなかった。

そして十六歳の誕生日になった。
毎年、父はプレゼントを送ってくる。いつも不思議に思っているんだがこのプレゼントどうやって選んでるんだろう。いつもそのとき僕が一番欲しいと思ってるものが確実に来るのだ。この館のお手伝いさんが選んでるのかなと思ったこともあったが、しかしいくらなんでも僕が日本製のデジタルカメラが欲しいなんてわかるわけがない、誰にもそんなこと言っていないのに今ここにそれがある。
まったく父はよくわからない人だ。
あっ、それといっしょにアンケートみたいのがついてたがこれがバツグンに面白いものだった。たかがアンケートなんだが心理テストのようなものでかなり計算されて、刺激的だった。
しかしそんなことはどうでもいいんだ。
僕は今だに父が何の仕事をしているのか知らない。

----------田嶋 政宗----------

今、世界の人工は完全に飽和状態を越えていて中国の「一人っ子政策」やインドでの避妊教育など対策はとられているがそう簡単に人は減るものではない
そこで世界会議では「間引き」を行なうことにした。
もちろん問題はどの国でどのくらい間引くかである。
その選定には世界の頭脳といわれる私に一任されることになった。
しかし私も機械ではない、そう正確に全てを分析できるわけではない、そこで私は私の数を増やすことにした。
クローンの私である。彼等は数百人、創られ、生まれた。
そして彼等の父親として十六年間、手紙をかわし彼等の国を調べたのだ。
彼等は優秀だった。こう言うと自分を褒めているみたいで奇妙な感じなのだが..
おもしろかったのがクローンにも環境による個体の差が表われていて知能でいえばだいたい同じくらいなのだが性格面ではかなりの違いがでていた。中にはかなり最悪なものもいたがその傾向はその国の環境をよく表わしていた。
さて
クローンのデータ以外にも様々な要素を組み入れ各国の消えてもらう人のパーセンテージは決定した。後はIDに登録されている個人要度に照らし合わせてその国のパーセント以下のものを選び出す。
で、「間引き」の方法だが心配しなくても今はいろいろな方法があるのだよ。
昔はチェルノブイリだとかフセインの洗脳だとか大ざっぱな方法が多かったが。

大丈夫、安心してていい、もうすぐ人類の再出発が始まる、
そこに君がいるかは知らないがね。

わーむほーる