「リリカル・ミステリー」の既刊情報&感想
著者 友桐夏 レーベル 集英社コバルト文庫

表紙画像のリンク先はbk1です。

白い花の舞い散る時間 ガールズレビュー タイトル 白い花の舞い散る時間 ガールズレビュー
初版 2005/9/10
ISBN 4-08-600647-2
感想 タイトルに「ミステリー」と入っていますが、ミステリーというよりサスペンスでしょう。 読み進めていく中に謎とヒントが散りばめられていて 「どんな結末を迎えるのだろう」「よし!謎を解いてやろう」という気にさせてくれます。 ですが、最後は意外性があるものの、読者に与えられたヒントだけでは謎が解けそうにありません。 トリックの一部が清涼院流水さんの「みすてりあるキャラねっと」ですでに使われているものであったことも ちょっと拍子抜けしました。 あと瑞姫って、取りかえられたあとも名前が同じじゃすぐに見つかっちゃうんじゃないかとか。 それとも亜梨栖も本名は瑞姫なのかな?
4人の少女のキャラはうまく描き分けられていると思いますが、 ひょっとすると「普通の外見」「お子様」「美少年風」「お嬢様」というお決まりのパターンがあって、 それに沿っているのかも知れません。 「楽園の魔女たち」のサラ、マリア、ファリス、ダナティアみたいな感じでね。
あとは・・・せっかく山中の洋館という非日常空間を舞台にしてるんだから、 もっと日常と非日常の描写にメリハリを付けて欲しかったですね。 なにか4人とも最初から非日常を生きているみたいで、「日常」部分が感じられないのです。 日常から非日常へと踏み込むことでキャラの成長をはっきり象徴させるようなイベントが欲しかったです。 いわば「行きて帰りし物語」のようなものを。そういうのとリリカルさとを両立させるのは難しいかも知れませんが。(2005/9/30)
春待ちの姫君たち タイトル 春待ちの姫君たち
初版 2005/12/10
ISBN 4-08-600702-9
感想 おお!おお!おお!やりましたな。 「白い花の舞い散る時間」ではうやむやになっていた 「日常と非日常の間のメリハリ」「キャラの成長を象徴させるようなイベント」が、今回は明確になっています。 「物語消費」の仕組みをメタ視した作品だと言えますね。 これは消費されるべき物語を意識的に作り、それを消費している物語です。
ミステリーとしても良くできています。 メインはいわゆる叙述トリックというやつですが、 サブでは、考えれば分かる論理トリックも見た目以上に盛り込まれていると思います。
キャラの描き分けも上手いですし、 「白い花の舞い散る時間」とキャラがあからさまに重複していないところを見ると、作者の引出しは多そうです。 強烈なインパクトを持つキャラがいないのが残念ですけれども、 これは作品の性格上しょうがないかも知れませんね。 あまり1人か2人かが強烈なキャラだと作品の微妙なバランスが崩れてしまうので。
この人の作品はしばらく追いかけることにします。 この完成度を今後も保つことができるならば、きっとどこでも通用すると思います。(2005/12/30)
盤上の四重奏 ガールズレビュー タイトル 盤上の四重奏 ガールズレビュー
初版 2006/3/10
ISBN 4-08-600738-X
感想 前作の「春待ちの姫君たち」もそうだったのですが、 本作もまず「特別な生徒」「花火」「偽物」といった「消費されるべき物語」があって、 それを操作することによって特徴を出している作品ですね。 物語とキャラクターの変化に対してとても意識的です。
心理描写も、目新しさはないですが丁寧です。 こういう華やかな表層とどろどろとした裏のギャップは、少女向け作品の方がシリアスですよね。 電撃文庫やファンタジア文庫でのヒロインの裏表というのはギャグや可愛さに転じてしまいがちですが、 コバルトだと「ずーん」とシリアスな方向に来るようです。でもそれが良いです。
惜しいのは、物語は見事なのですが、あまりにも登場人物が物語に縛りつけられていて、 読み終わった後も忘れられないような強烈なキャラが居ないことですよね。 登場人物がことごとく腹の探り合いをしていて、主人公ですら読者に対する謎を抱えているので、 なかなか強烈なキャラクターを作れないのかも知れません。 しかし、どうも今のままでは売れ筋になれそうになくて営業面で心配です。 作品自体は完成度が高いので心配していませんが。(2006/3/27)
楽園ヴァイオリン クラシックノート タイトル 楽園ヴァイオリン クラシックノート
初版 2007/5/10
ISBN 978-4-08-601020-7
感想 題名に「リリカル・ミステリー」とは入っていませんが、紛れもない「リリカル・ミステリー」の続編です。 やった!このシリーズは打ち切られてなかったんだ!
独特のリリカルで謎めいた雰囲気は健在です。 単に作中で「一流だ」「上品だ」と書き連ねても浮いてしまう場合がありますが、この作者は上手くそこを処理していると思います。 たとえば会話のシーンではキャラクターの表情よりも、手の動きとか、さりげない風景描写などに重点が置かれていて 間接的な暗示が多いように思うのですが、これが上品さを出すのにかなり効果的なのではないでしょうか。 元々少女向けレーベルの作品は華やかな外面とどろどろとした内面のギャップが売りだと思うのですが、 友桐夏さんの場合、そのギャップさえも抑え気味で上品な感じがするのです。 いや、本当の一流など知らない私にはこんなことを書く資格などないかも知れませんがね。(笑)
それにしても「白い花の舞い散る時間」「盤上の四重奏」と合わせて、なんとも込み入った話になってきました。 次の作品があったら、さらに複雑になるんだろうなぁ。 もう図か表かにしてキャラクター関係を整理しないと理解できなくなってきたので、誰かが整理してくださったら、それを見て納得しようと思います。(2007/5/27)
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