「キノの旅」の既刊情報&感想
著者 時雨沢恵一 レーベル 電撃文庫

表紙画像のリンク先はbk1です。

キノの旅 The beautiful world タイトル キノの旅 −the Beautiful World−
初版 2000/ 7/25
ISBN 4-8402-1585-5
感想 なるほど、こういう話だったのですね。 極論を並べる寓話のようなものの連続なので最初はわざとらしさが鼻についたのですが、 第五話の「大人の国」で一気に好きになりました。 うまい!この話でキノは誰でもあって誰でもない誰かになりました。 エルメスもどこにでもあってどこにでもないモトラド(なぜにドイツ語)になりました。
銃器――パースエイダーと呼ばれていますが、これらの細かな描写も良いです。 十連発の22口径オートマと、一方で薬莢もない旧式なリボルバーの対比。 しかも最初に出すのは使い勝手の悪いリボルバー「カノン」(なぜにピストーレでなくカノン)。 この無駄でマニアックな拘りがキノの旅を、従来の寓話ではなく、 俗っぽいライトファンタジーにしてくれています。(笑)
ただ今風のユーモアを使うからには、これは普遍的な作品にはなり得ません。 面白いですよ。間違いなく。 でもやはり流行から逃げられない作品であることを心に留めておきながら、楽しまなければならないでしょう。(2002/12/29)
キノの旅 2 The beautiful world タイトル キノの旅2 −the Beautiful World−
初版 2000/10/25
ISBN 4-8402-1632-0
感想 1巻に比べてだいぶ硬さが取れましたね。 最初に出てきた時のキノは断罪者みたいな乾いた雰囲気がありましたが、 だんだんと主観を持った等身大のキャラへ変わりつつあります。 「絵の話」「自由報道の国」ではやはり客観性や普遍性を追い求めていますが、 そこに登場するキノは当事者としての1つの視点でしかなくなっています。 主観と客観の使い分け、これがとても上手くなっています。
え、野暮な評論はやめろって?仕方ないじゃん、私はこのシリーズが売れてから読み始めたんだから。 評判の良い「優しい国」なんて、最初から結末をいろいろ推測しながら読んだぞ。 作品が売れると言うことは、そういう野暮な視線にもさらされるってことなのさ。(笑)
まぁそれはともかく、簡単に感想を言いますと、 1巻ではとげとげしかったキノと世界との関係が、2巻になってしっくりしてきたように思います。 キノが世界を受け入れ、世界もキノを受け入れたような感じですね。(2003/2/22)
キノの旅 3 The beautiful world タイトル キノの旅3 −the Beautiful World−
初版 2001/ 1/25
ISBN 4-8402-1709-2
感想 この作者は煙に巻くのが好きですね。 本音を書いているようで、 最後の一線では「本当に本音を書いてると思うかい?だまされてはいないかい?」と聞いてきます。 批判的であるならば、自らも批判にさらされなければならない訳で、 作者もそれに身構えてしまっているように見えます。 あるいは身構えている=煙に巻いていることを前面に出すことで、 作者を身近に感じさせようとしているのかも知れません。
小野不由美や榊一郎の作品には間違いなく、読者に伝えたいはっきりしたものがあり、 それが伝えられると作者が確信しています。 しかしどうも時雨沢恵一の作品は違うようです。 伝えたいものはあるけれど、照れが入っているというかね。 メッセージを100%マジに主張することにためらいがあるみたいです。
という理屈は置いておいて、面白いですね。 読者の期待するオチを見透かして、ラストで別のオチにすり替えるところなど見事です。 そうそう何回も使える方法ではないと思いますが、 次はオチを二重にすり替えたりするんじゃないかと期待します。(笑)(2003/3/15)
キノの旅 4 The beautiful world タイトル キノの旅4 −the Beautiful World−
初版 2001/ 7/25
ISBN 4-8402-1844-7
感想 感想を書くのは難しいですが、読み進めたくなるシリーズです。 オチなしの話も多くなってきましたが、 やはりどこでどうやってオチをすり替えるかに興味がありますね。 この巻でも2つの話でオチのすり替えがありました。 「仕事をしなくていい国」と「認めている国」です。 2話とも本題・・・というか読者に読ませたいところは、すり替え後のオチとは別のところにあります。 逆に言うとオチのすり替えによって、判断を読者にまかせているとも言えます。 しかしこの方法ももうマンネリ気味。 エルメスにツッコミさせることで変化を付けたりしていますが、もう一工夫欲しいです。 ただ、話の構造に凝り始めると、 このシリーズが目指しているであろう普遍性からは遠ざかってしまうというジレンマがあるかも知れません。
ところで黒星紅白という人のイラスト、どんどんシンプルになっていきますな。 モノクロイラストでは途中からスクリーントーンをやめて白と黒の境界線を意識するようになっていますし、 カラーでは黒地の上に互いに対比する補色を平面的に置いて色彩効果を狙っています。 これで近くのものと背景とで輪郭線を使い分けていなかったらフォーヴィズムみたいです。 なめらかなCGが主流の中で、こういう実験も面白いですね。(2003/3/21)
キノの旅 5 The beautiful world タイトル キノの旅5 −the Beautiful World−
初版 2002/ 1/25
ISBN 4-8402-2013-1
感想 1話ごとの話の複雑さは4巻が1つのピークでしたね。 5巻では1話1話がシンプルでストレートなオチになり、 代わりに話と話の関係、つまりはシリーズ構成に凝る度合いが強くなってきました。 しかしこのシリーズが目指すところの普遍的なメッセージとシリーズ構成との間に 必然的な関係が見えてきません。 ですからシリーズ構成に凝るのも、オチのすり替え同様、作者の手探りの内の1つに過ぎないと考えています。 「キノの旅」というより「作者の手探りの旅」ですね、これは。
第1巻の「大人の国」は、キノとエルメスを普遍的存在にした本当に良い話でした。 しかしその後の設定はキノやエルメスやシズや陸や師匠をどんどん特定な存在にしぼっていってしまっています。 それは違うんじゃないか、普通の作品ならともかく、 このシリーズでは逆に可能性を狭めているんじゃないかと私は思うのですが、どうでしょう?(2003/3/23)
キノの旅 6 The beautiful world タイトル キノの旅6 −the Beautiful World−
初版 2002/ 8/25
ISBN 4-8402-2155-3
感想 私がこの巻についてとても驚いたのは、 「ベルギーでは、」で始まり「とてもセクシー!」で終わる【巻末特別問題】に、 Web上でとても多くの人が律儀に答えていることです。 やっぱりみんなやるんだなぁ。やらなきゃファンじゃないよなぁ。 というか作者自身がWebを意識してこの企画を仕掛けたんじゃないかという気がします。
私?私は「イラスト添付は不可とする。」という条件が嫌なので辞退いたします。 いやぁ残念だなぁ。イラスト可なら喜んでやらせて頂いたんですけど。(笑)
内容の方は、5巻から引き続いてシンプルなオチと、凝ったシリーズ構成となっています。 そして結論を敢えて書かないで、読者の判断に任せる話が増えました。 キャラ設定がどんどん特定されていくために、個々の話の結論を出さないことで シリーズ全体の普遍性のバランスを取っているように見えます。 5巻の感想ではキャラの特定化がシリーズの可能性を狭めることを危惧していましたが、 考えてみれば「大人の国」によってキノとエルメスは普遍的な存在になっているんですよね。 だから5巻、6巻のキャラ特定化の方向性は、あまり心配要らなそうです。 しばらくこの方向性で行くでしょうから、ゆっくり先を待ちましょう。(2003/3/30)
キノの旅 7 The beautiful world タイトル キノの旅7 −the Beautiful World−
初版 2003/ 6/25
ISBN 4-8402-2386-6
感想 1巻以降では一番バラエティーに富んだ構成になりました。 特に「何かをするために」は5巻、6巻から続くキャラ特定化のピークに当るものでしょう。 「何かをするために」は、1巻の「大人の国」と対になるエピソードな訳ですが、 「大人の国」がキノを普遍的な存在にさせたのとは実に対照的です。 ただ、「大人の国」の出来があまりに良過ぎたので、 「何かをするために」の方はそれほど印象に残りませんでしたけれど。(^^;
あとは「冬の話」と「迷惑な国」が興味深いですね。 いつもはトリックスターのようなキノが「冬の話」では保守的で、打破される側に立っていることや、 「迷惑な国」に4日間滞在したことは、作者のマンネリを防ごうとする姿勢の現れかも知れません。 のらりくらりと読者を煙に巻こうとするあとがきに、その気持ちが一番強く出ています。(本当か)
キャラの特定化はこの辺りで止めておいて、 また2、3巻の頃のゆったりした雰囲気を目指すのが良いと思うのですが、 はたしてこの先どう進むでしょうか?(2003/6/23)
キノの旅 The beautiful world 記憶の国−Their Memories− タイトル キノの旅 -the Beautiful World- 記憶の国
初版 2003/12/ 3
ISBN 4-8402-2525-7
感想 切ない話にはなっています。最後のどんでん返しもよく出来ていると思います。 でも最後のオチが雰囲気をすべて壊してしまっているんじゃないでしょうか。 別に1800円(税別)出したのが惜しい訳じゃないですよ。 1800円(税別)なんて。く、1800円(税別)・・・はともかく、 絵本仕立てで、イメージCDまで付いてて、あとがきがなくて、オチがこれですかい。 帯に書いてあるキャッチコピーと内容が微妙に違うような気がするのですが。
他の話と一緒に本に入っているなら構わないのですけれど、 この一話だけを特別に独立させたのは、個人的にはハズシだと思うなぁ。(2004/1/1)
キノの旅 8 The beautiful world タイトル キノの旅8 −the Beautiful World−
初版 2004/10/25
ISBN 4-8402-2832-9
感想 う〜ん、またしてもキャラを特定化する方向に進んでしまったなぁ。
1冊の半分以上を占める中編「船の国」は、面白くはあるのですが、 納得がいかない箇所が幾つかありますし(例えば、船長の誤解はキノが説明すれば済む話じゃないかとか)、 新キャラのティーを登場させることに作者がこだわり過ぎている感じがします。
キャラを増やしてしまうと、シリーズ全体の自由度が失われます。 とすると問題は、ティーがその失った自由度を補って余りあるキャラなのかどうかなのですが、 うーみゅ、どうも今のところそんな魅力的なキャラには見えないなぁ。 まぁ、シズと陸の話であってもティーと出会う前だとしておけば、 ティーを必ず出さなきゃいけない訳ではないのですけども。
一方で「道の国」や「ラジオな国」は良く出来ていると思います。 短いですがちゃんとメッセージが込められていますし、 他のエピソードから束縛されず、また他のエピソードを束縛してもいません。 このパターンで、面白いものを多く書くのは難しいことでしょうが、3、4年前はできていたんですよね。 それが今はできにくくなっているように見えます。 ちょっと先行きに不安を感じる8巻でありました。(2004/10/31)
キノの旅 9 The beautiful world タイトル キノの旅9 −the Beautiful World−
初版 2005/10/25
ISBN 4-8402-3172-9
感想 どうも「キノ+エルメス」「師匠+相棒」「シズ+陸+ティー」の 3組のローテーションで回して行くことになったようですね。 あまり具体的なエピソードを出してキャラを縛ってしまうよりはこの方が良いでしょう。
師匠とシズの登場頻度が高まるにつれて、 キノが訪れる国の物事に首を突っ込むことが減ってきたような気がします。 おおまかな傾向は
キノ:訪れる国に留まるつもりはなく不干渉
師匠:留まるつもりはないけれど干渉
シズ:留まるつもりで干渉するけれど結局留まらない
というところでしょうか。 どのキャラを出すかによってパターンを決めているというか、 どのパターンにするかによって登場キャラを選択しているというか。 キノを「誰でもあり、誰でもないキャラ」に留めておくには有効そうです。 だんだん「キノの旅」じゃなくなってきそうな気もしますけど。
印象に残ったエピソードは「作家の旅」。皮肉が利いています。(2006/7/28)
キノの旅 10 The beautiful world タイトル キノの旅10 −the Beautiful World−
初版 2006/10/25
ISBN 4-8402-3580-5
感想 (未読)
キノの旅 11 The beautiful world タイトル キノの旅11 −the Beautiful World−
初版 2007/10/25
ISBN 4-8402-4025-3
感想 (未読)

学園キノ タイトル 学園キノ
初版 2006/ 7/25
ISBN 4-8402-3482-5
感想 ライトノベルでよくある「シリーズものの短編集」は短編だけでもなんとか読めるように書いてあるものですが、 これは本編を読んでいないと分からない作りですね。
しかし文章はあまり洗練されていません。 いくら普段の時雨沢恵一さんが文章が上手いといっても、パロディ+ギャグにはまた違ったテクニックがあります。 別に執筆の専門家でないので詳しくは分かりませんが、 現時点の時雨沢恵一さんがパロディ+ギャグを書き慣れているとは到底思えないのですが。 ネタのアイデアは悪くないですが、全体でみるとネタの密度が全然足りないですし、テンポも悪いですし、 ネタをストーリーに活かす事もできていません。
たまにはこういうのも悪くないですが、あくまで洒落で止めておくべきものでしょう。 このレベルで今後も商業作品として売っていこうとは思わないで欲しいです。 プロの作品なら賀東招二さんくらいのギャグの技がありませんと。
あと黒星紅白さんのイラストが全部流用なのがちょっと……、せめて表紙くらい描き下ろしを準備できませんか。(2006/7/28)
学園キノ2 タイトル 学園キノ2
初版 2007/ 7/25
ISBN 978-4-8402-3908-0
感想 (未読)
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