| 感想 |
榊一郎が満を持して送り出す長編+短編の新シリーズ「キミボク」の長編版第1巻です。
ファンタジーとしてそれほど目新しいものではありません。異世界召喚モノの一種でしょう。
現実になじめずに「此処では無いどこかへ」行きたいと思っていた主人公が、
いざ「どこか」へ来てしまうと、今度は現実へ戻りたいと思ってしまうという展開も、
もうハートフルファンタジーでは使い古されてしまった感があります。
でもやっぱり、榊一郎は上手いです。
そういう古臭ささえも、この作者の手に掛かると必然的な魅力になってしまうのです。
私にとって榊一郎作品の魅力はなんと言っても、その作品世界を形作っている必然性です。
ファンタジーですから、ウソであり、作り話であり、ある意味現実逃避でもあるのですが、
ウソを使ってでも語りたい世界があり、伝えたいものがある、そのことが明確に分かります。
「使い古した設定?でも本当に使い古されているかな?
もっと書けることが見落とされているんじゃないかな?」
榊一郎はそう言っているように見えます。
このシリーズが売れるかどうか、なかなか微妙なところです。
常識をなぎ倒すような破壊的な面白さはないですし、
書き下ろし長編+連載短編というかつてのファンタジア文庫のヒットパターンとはいえ、
今のファンタジア文庫レーベルに往年のパワーはありません。
でも、「榊一郎作品なら、まずこれを読め」という作品になるかもしれない、そういう期待を持たせてくれます。(2004/9/5)
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