「十ニ国記」の既刊情報&感想
著者 小野不由美 レーベル 講談社X文庫ホワイトハート

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月の影影の海 十二国記 上 タイトル 月の影 影の海 上
初版 1992/6/20
ISBN 4-06-255071-7
感想 なにかと評判が高いので、読み始めてみましたら、凄い! なかなか、ここまで追いつめられた心理を描く事はできないでしょう。 私は既に前田珠子や若木未生を結構読んでいるので、ある程度慣れがありますが、 初めて少女ファンタジーを読んだのがこれ、という人には、かなりショッキングな内容ではないでしょうか。
「日帰りクエスト」のエリは不条理な運命を笑い飛ばしましたが、 「十二国記」の陽子の場合は、自分の実力で真っ向から道を切り拓いて行こうとします。 その過程のなんと痛々しくて切ない事! この痛々しさは前田珠子の「隻腕の神の島」や「破妖の剣」に通じるものがあります。 特にどうしようもなくなって民家に盗みに入る場面は、 女子高生の主人公にそこまでやらせるかというくらい怖いですね。
もしかしたら、この本をもっと沢山の人が読んだら、世の中は少しはましになるのではないか? それくらい思わせる、人間の倫理観と心の根源に訴えてくる作品です。 素晴らしい。ファンタジーはこうでなくちゃ。(2000/5/6)
月の影影の海 十二国記 下 タイトル 月の影 影の海 下
初版 1992/7/20
ISBN 4-06-255072-5
感想 この作品に欠点があるとすれば、それはラストが予測できてしまうことでしょう。 けれどもラストがどうであるかは実は大した問題ではないですよね。 それは作者も分かっているようで、無駄な部分はスパッっと切り捨てています。 陽子が王になると決めた後のどうこうなんて、どうでも良いんですよ。(笑)
とにかく陽子の心理描写、 特に冷徹&疑心暗鬼になってから楽俊の助けを借りて心を開いていくまで、 そして自分の出生の秘密を知ってからの苦悩と葛藤に尽きるでしょう。 というか、それが無ければ他に何も無いし、 作者の描きたかったのもそれしかないと思いますよ、これは。
しかしまぁ、’92年に既に少女ファンタジーはこのレベルに到達していたとは... 「破妖の剣」「オーラバスター」と言い、ただ知名度が低いだけで、 そこに描かれている踏み込んだ心理描写は、 同時期の少年ファンタジーなど問題にならないほどしっかりしていますよね。 私が知る限り、少年ファンタジーがそれに追いつくには ’98年の榊一郎の「ドラゴンズ・ウィル」まで待たなければならなかったのです。(2000/5/7)
風の海迷宮の岸 十二国記 上 タイトル 風の海 迷宮の岸 上
初版 1993/3/20
ISBN 4-06-255114-4
感想 なかなか続きを読む機会が作れなかった十二国記の3冊目。 素晴らしいです。思わず感想書くのを忘れて下巻を読み始めてしまっていました。(笑)
まずは日本語が上手ですよ。 最近少し反省しているのは、軽い読み物に慣れすぎて言葉の綺麗さを忘れていたということです。 今年になって、茅田砂胡と小野不由美を読んでその事を痛感しています。(汗)
それとなんと言っても、恐らく多くの人がなんとなく意識していながら具体的な形にまとめられていないものを ズバリと言い当てているというか...う〜ん、何と言ったら良いのでしょう、 共有できるメッセージがあるのです。いや、ちょっと違うかな。(汗)
ともかく、これを駄作と言える人はほとんど居ないでしょう。 7年前に読んでおけば、私のこれまでのファンタジー観も大きく変わっていたはずです。 今となっては「ブギー」「フルメタ」「捨てプリ」がありますけれど、 当時の少年向けファンタジーには、この「十二国記」に対抗できるような 設定のしっかりしたハートフルな作品はなかったのです。 今まで読まなかったことを後悔していますし、だから続きも早く読むつもりです。(笑)(2000/11/3)
風の海迷宮の岸 十二国記 下 タイトル 風の海 迷宮の岸 下
初版 1993/4/20
ISBN 4-06-255120-9
感想 あああああ!ハッピーエンドで良かったぁ! これでハッピーエンドじゃなかったら、とてつもなく救い様のない話になってましたね。 読み終わってほっとしました。いや、怖かったです。凄い心理描写です。 私自身が泰麒のような人間だから、なおさら考えさせられてしまいます。
それにしても泰麒も景麒も、もうちっと成長せんかい!(笑)
これはとても良い話です。 けれども誤解しては行けないのは(そんな人はいないと思いますが) 現実はそんなに甘くないかも知れないということ。 「破妖の剣」のラスもそうですが、 泰麒もやはり自分の運命を切り開いていると言い切れない弱さがあります。
まぁ、それを描くのがこの作品の一番の目的だったのでしょうから、それで良いのです。 世の中にはこういう人もいる、それを理解してくれている。それがまず大切なのです。 ただし、甘えているだけでも駄目。理解してもらおうとする努力、自分を変えていく努力もなくちゃね。 陽子にはその努力までやらせたでしょ?それが今回欠けてしまっているのが残念です。(2000/11/4)
東の海神西の滄海 十二国記 タイトル 東の海神 西の滄海
初版 1994/6/5
ISBN 4-06-255168-3
感想 こ、怖い! これって六太と更夜、尚隆と六太の物語なのですが、 それよりもなによりも斡由の運命が強烈でした。 理想を説いておきながら、結局は自分への賛美だけを欲して自滅していった斡由。 これって、私そのものだったりして(汗)。 自分でも気づかない人格の奥底を見透かされたようで、愕然としました。
この十二国記は、はっきり言って娯楽としての少女ファンタジーの域を越えています。 もちろん物語として面白いのですが、考えさせられることがあまりに多いのです。 榊一郎の「ドラゴンズ・ウィル」「捨てプリ」も「自分とは何か」という深い問いかけを持っていますが、 十二国記の場合はやや「自分と他人とは何か」というテーマになっているようですね。 この問いかけに対して真剣に答えを求めようとすれば、 おのずから人の道というものが見えてくるように計算されている、 少なくとも作者はそう確信しているのです。
日本語、小説、そしてファンタジーという表現手段を使って何を伝えることができるのか? それをひたすらに追求していく素晴らしさを、小野不由美は見せてくれています。(2000/12/8)
風の万里黎明の空 十二国記 上 タイトル 風の万里 黎明の空 上
初版 1994/8/5
ISBN 4-06-255175-6
感想 多くの人がこの作品を名作だと言い、私も実際に読んでその通りだと思っています。 個人個人で捉え方は違うのでしょうが、この作品によって救われた人は決して少なくないでしょうし、 またそれを見て「ああ、苦しいのは自分だけではないんだ」と思えるだけでも、とても幸せになれます。 自分というものをずたずたに引き裂いて、余分なものを吹き飛ばしてくれます。 そして残ったものの中に幸せがある事を気付かせてくれます。
「辛いことが偉いのか?」清秀の鈴に対する言葉に愕然とします。 自分が今までどんなに浅はかでくだらない人間だったのか。 どんなにつまらない事にこだわってきたのか。否応無しに突きつけられます。
これを読んでしまったら、もう謙虚になるしかありません。 自分は誰なのか?自分にできる事は何なのか?幸せとは何なのか?生きる事とは何なのか? 今までとは一歩違う視点から全てを見つめる事ができるはず、 いやそうしなければ駄目なんだと自分が動き始めるのです。 だって、「貴方は十二国記を読んだのに、何も学ばなかったのですね」 なんて言われたら恥ずかしいではないですか。(笑)(2001/1/12)
風の万里黎明の空 十二国記 下 タイトル 風の万里 黎明の空 下
初版 1994/9/5
ISBN 4-06-255178-0
感想 上巻の方が面白いですが、雰囲気を殺さずにきっちりまとめています。この辺の構成力はさすがです。
「魔性の子」を除けばこれで7冊目、既刊は残り1冊ですが、 いやはや素晴らしい質を保っています。 いつまでも色褪せない、人間が永遠に対峙し続けなければならないテーマを こうも見事に語っている作品は他にそうはないでしょう。 ここ数年続編が出ていなくてもそんな事は全然問題になりません。 良い作品のためなら何年でも待ちますよ。(笑)
私はファンタジーを読むことによってかなり生き方を左右されてきた人間ですが、 この十二国記はその最たるものになるかも知れませんね。 読んでよかったと思いますし、もっと沢山の人に読んでもらいたいと思います。 ひとりひとりの人ができる事、ファンタジーが伝えられる事をここまで深く掘り下げた 小野不由美の功績は計り知れないものがあります。 去年、茅田砂胡や榊一郎、そして小野不由美を読み始めてから、 今までの自分が余りにも視野が狭く、愚かであったことを痛感しています。(2001/1/14)
図南の翼 十二国記 タイトル 図南の翼
初版 1996/2/5
ISBN 4-06-255229-9
感想 今回は探検行。 「風の海 迷宮の岸」の時の昇山と比べると、あれっ?という気がしますが、 仙位を持っているのと持っていないのでは蓬山に行く苦労はこんなにも違うものだと解釈しましょう。 その探検行がまた、なかなかの迫力で驚きました。 今をときめく「フルメタル・パニック!」にひけをとらない、迫真の恐怖と葛藤と興奮です。 特に取り残された人々のところに徒歩で戻り、妖魔に立ち向かう珠晶には拍手喝采! こんなに面白い冒険譚を読んだのは久しぶりです。
これで十二国記は既刊を読み終えましたが、いやはやとにかく素晴らしいです。 ファンタジーを何百冊も読んできましたが、これはその中で最高の作品です。 この先、もっと良い作品を見つけるかも知れませんけれど、 設定もアクションも心理描写もシリーズ構成もここまで完成されたものはなかなか出てこないでしょう。
設定とアクションなら、以前から少年ファンタジーの方が上です。 心理描写は「ドラゴンズ・ウィル」と「ブギーポップ」で追いつきました。 そしてシリーズ構成でも「フルメタ」「捨てプリ」が今、十二国記に追いつこうとしています。 けれども、4、5年掛けてようやく追いつきかけたところなんですよね。 それを小野不由美は5年前に完成させていた、その事に舌を巻くばかりです。(2001/1/28)
黄昏の岸暁の天 十二国記 上 タイトル 黄昏の岸 暁の天 上
初版 2001/5/15
ISBN 4-06-255546-8
感想 この巻の主役は李斎か陽子なのでしょうが、どちらの視点から見ても良いお話ですね。 キャラの心情を自分自身と重ね合わせてはドキリとすることしきりです。 何冊読んでも、この作者の本は私を諭してくれます。 素晴らしい。みんな、小野不由美をもっと読め。こんな国でもきっと希望はどこかに見つかるぞ。(笑)
甘ちゃんの泰麒はきつく言えば自業自得と言うか、 やはり自分で道を切り拓いてこなかったツケが回ってくることになっていたんですね。 欲を言えば泰麒が戴国に戻ってからも書いて欲しかったのですが、それはまたのお楽しみにします。 ここまでで十分ボリュームはありますから。(笑)
麒麟さんを山の様に出してきたのはちょっとファンサービスなんじゃないかなぁとも思いますが、 ファンサービスならそれで良いし(笑)、別に構成が壊されているわけでもないので良しとしましょう。
しかし「魔性の子」を先に読んでおけば良かったかな? まぁ読んでしまったものは仕方ないので、「魔性の子」も近々読んでみることにします。 でも「魔性の子」って10年前の本・・・・10年前からここまで考えていたのでしょうか。 小野不由美、凄いです。(笑)(2001/4/13)
黄昏の岸暁の天 十二国記 下 タイトル 黄昏の岸 暁の天 下
初版 2001/5/15
ISBN 4-06-255550-6
感想 (講談社文庫版で上巻分とまとめて読んだので感想省略)
華胥の幽夢 十二国記 タイトル 華胥の幽夢
初版 2001/9/5
ISBN 4-06-255573-5
感想 やはりこのシリーズは凄い。 これを読んで次の一歩を踏み出した人は決して少なくないのではないでしょうか。 読者であることを誇りに思える名作です。
とにかく、読むたびに自分の安穏さ、愚かさに気付かされます。 そして作者のメッセージが、流行り廃りとは全く関係ない、人間としての永遠のテーマであることが、 この作品が悠久のファンタジーであることと実にうまくマッチしています。 ファンタジーで現実の人間を描写することはできないと考えている人もいるかも知れませんが、 「十二国記」はそれが間違いであることを証明しています。 別の言い方をすれば、人間にはファンタジーでなければ描写できない一面がどこかしらあって、 それを書きたくて小野不由美は「十二国記」を出しているように見えます。 これを読んだ後だと、 異世界の設定を使うだけで、何が言いたいか分からない安っぽいアクションを繰り返すような作品は、 ファンタジーとしては三流だと思えてきます。(2001/7/15)

魔性の子 タイトル 魔性の子
初版 1991/9/25
ISBN 4-10-124021-3
感想 これでようやく泰麒の話が繋がりました。 そうか、そういうことだったのですか。 私の泰麒に対する評価も多少変わったかな。 少なくとも陽子に匹敵する重要なキャラだということは分かりました。
そして高里を守る立場にあった広瀬が、ラストで逆に高里に置いて行かれる時のなんと悲しいこと。 自分の世界へ行くことの出来ない広瀬は、ある意味、全てのファンタジー読者の代弁者ではないかなと思います。 「黄昏の岸 暁の天」でも陽子が十二国記の世界にかなり疑問を持っているように描かれていますけれども、 小野不由美はやはり「ファンタジーとは何か?」を意識して書いていますよね。
ただ剣と魔法の世界を書くのでは駄目なのです。 どうして人はそんなことを考えるのか?それが人にとってどう役に立つのか? というところに繋がらないとただの現実逃避です。 この作者の素晴らしいのは、 ファンタジーじゃなければ書けないことだからファンタジーで書いているところなのですよ。 私が榊一郎と小野不由美をよく並べる理由もそこにあります。 小野不由美の天下はまだしばらく続くでしょうし、榊一郎の天下もそう遠いことではないでしょう。 それはかなり確信に近いものがあります。(2001/4/17)

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